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チームバチスタの栄光 キャラクターの捉え方の変化が物語になる

以前逆転裁判で「言わないことを言うことが推理小説」だと言ったが、これもその話の続きのようなものかもしれない。今回はおすすめされた「チームバチスタの栄光」を読んでみた。

この小説で面白いのは、前半と後半で、メインで物語に働きかけるキャラクターが違うことだ。二人は真逆の性質を持ち、それゆえ真逆の情報を集めることができる。具体的には、「人を受容することで得られる情報」と「人の感情を刺激することで得られる情報」である。

このお話は、「捜査のために、手術チームに話を聞くフェーズ」と「そのチームが手術をするフェーズ」が交互に出てくる。
お話は「話を聞くフェーズ」を中心に進んでいく。手術のシーンは緊張感があり興味深いが、話すフェーズは退屈な印象を持たれかねない。しかし、これがとても面白く読める。それは「人の感情を刺激したり、沈静化することで情報を引き出す」ということ自体が面白いからだ。そしてそれによって、主人公サイドの「容疑者たちに対する見方」がどんどん変化していくのが面白いのである。例えば、主人公のチームメンバーへの印象は、第二の聞き手が現れたことでほとんど逆転してしまう。

人は「事件の真実」に興味を持つということは当たり前だが、「キャラクターの二面性」「意外性」に一番興味を惹かれる。そしてさらに、それがどのような状況の時に顕著に表れるのか、ということが物語になるのだ、と感じた。

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