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日本初、Thousand Colours。気品と狂気のCypress Mask

日本の伝統的な香りの文化から生まれ、時代とともに進化を遂げてきたThousand Colours(サウザンドカラーズ)。

このブランドの起源は、1575年創業の老舗線香メーカー日本香堂です。同社は線香「星雲」のヒットで知られています。日本香堂が2018年に日本初の香水ブランドTOBALIを立ち上げ、2021年にはTOBALIのDNAを引き継ぐ形で現在のThousand Coloursが誕生しました。このブランドは、伝統的な和の香りを現代的にアレンジし、日常に彩りを添える多様な香りの製品を展開しています。

ブランド名「Thousand Colours」は「千の色」という意味で、無限の創造性と表現の自由を象徴しているそうです。すべての作品は、クリエイティブディレクター米津智之氏により生み出されています。

私は恥ずかしながら、TOBALIもThousand Coloursも知りませんでした。ヒノキの香水を探していたときに見つけたのが、Thousand ColoursのCypress Mask(サイプレス マスク)でした。

Cypress Maskは、滑稽で猥雑な物真似劇だった能を芸術の域まで高めた猿楽師、世阿弥に捧げられた香りだそうです。Cypressはヒノキ、Maskは仮面を意味し、この製品名はヒノキで作られる能面を指していると思われます。製品名の先頭についている「M1402」は、世阿弥が「風姿花伝」を記した年だそうです。詳しくは以下のサイトをご参照ください。

今回は、「気品と狂気」と称されるCypress Maskのレビューをしたいと思います。試せるお店が見当たらなかったため、香水量り売りショップからミニボトルを購入して試してみました。

M1402 CYPRESS MASK

公式オンラインショップより転載

能舞台に漂う香りは、時として観客の心を揺さぶる力を持つ。その神秘的な空間を香りで表現した一本の香水に出会った。

ヒノキの気品ある香りが、まず鼻腔をくすぐる。それは能舞台そのものの香りだ。しかし、その清廉な印象は長くは続かない。突如として、サフランの狂気じみた甘さが襲いかかる。能面の下に隠された役者の激情を想起させる、鋭い対比である。

時が経つにつれ、墨汁の鋭い香りが立ち昇る。それは能の物語を記した古い巻物から立ち上る匂いのようだ。パピルスの紙の香りが、その印象をさらに深める。まるで、古の物語が蘇るかのように。

最後に、幾世代にもわたり受け継がれてきた能面から漂う、かすかな木の香りが顔を出す。それは、長年にわたって能を演じ続けてきた役者たちの、魂の結晶を表しているかのようだ。

表面上の静寂と、その下に潜む激しい感情の対比。この香りは、そんな能の本質を見事に捉えている。しかし、その余韻は意外にも短く、一瞬の幻想を見たかのような虚しさを残す。

調香師:不明
香りの強さ:★★★★☆
香りの持続時間:★★★☆☆

まとめ

間違いなく興味深い香りです。ヒノキや墨汁の香りが鮮烈に感じられますが、私の肌では長続きせず、クリーミーなミルラの香りが強く残ります。この点だけが残念でした。

ボトルのデザインについても気になる点がありました。「千の色」というブランドコンセプトには合っていると思いますが、今回のCypress Maskのようにややポップな色使いもあり、日本発のブランドであることが伝わりにくいです。意図的なのかもしれませんが、伝統的な和の色を使用していればもっと良かったと感じました。

Thousand Coloursのすべての香りには、ベースノートとして「Hidden Japonism 834(合成ウード)」が使用されているそうです。この香りの背景には深い歴史があります。TOBALIデビュー時の記事(Cypress Maskの記事ではありません)に要約されていたため、そちらから抜粋しました。

日本には1100年以上前から香りを芸術として楽しむ文化が存在し、皇族や貴族たちは自身の財を投げ打って、最高の香りを競い合ってきた。400年以上の歴史をもつ「日本香堂社」とともにTOBALIが“現代に蘇らせた香り”を核としてアップデート。今回のコレクションは、1100年の香りの芸術の歴史を紐解き、香りの核となる「Hidden Japonism 834」を作り出し“色気と知性” “強さと情愛” “気品と狂気”など、相対する2面性を持つ香りを表現する。

https://clane-design.com/claneweb/detail?id=806272

興味を持たれた方は、ぜひ試してみてください!

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