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SHIROへの批判と環境意識。本当の価値に迫る

日本の伝統と現代性が融合した香りの世界へ。今回は、日本発のコスメティック・フレグランスブランド「SHIRO」の香水を紹介します。

SHIROは1989年に東京で誕生し、自然由来の原料にこだわった製品と洗練されたデザインで知られています。スキンケアからメイクアップ、そしてフレグランスまで幅広い製品を展開していますが、その根底にあるのは日本の伝統的な原料や植物由来成分への深い愛着、そして環境への配慮です。

お米、抹茶、酒かすといった和の素材を現代的に解釈し、ミニマリスティックなパッケージに込めた彼らの製品は、日本国内はもちろん、海外でも高い評価を得ています。SHIROは環境保護にも積極的に取り組んでおり、持続可能な資源の利用やエコフレンドリーなパッケージデザインを採用することで、地球への負荷を最小限に抑えようとしています。

働く人と見学する人の目線の高さが同じ。工場の光景に感銘を受けました
出典:Forbes JAPAN

今回、5種類のフレグランスが試せるオードパルファンセットを購入しました。香りの持続時間は体感で3~4時間程度。オードパルファン(EDP)ですが、柔らかい香りが多いため少し短く感じられるかもしれません。

それでは、このSHIROが紡ぎ出す香りの世界を、一つずつ見ていきましょう。

SAVON

柑橘の甘美な誘いに導かれ、未知なる世界へと足を踏み入れる。レモンとオレンジの清々しさが、朝露に濡れた庭園を思わせる。そこへ、ブラックカラントとライチの調べが重なり、禁断の果実を口にしたかのような錯覚に陥る。

香りは静かに変容を遂げ、ジャスミンとスズランが存在感を主張し始める。月下の密会を思わせるその香りの中に、何か刺すような鋭さが潜んでいる。それは石鹸の誠実さと、華やかな香水の魅惑が、この一滴の中で奇妙に共存しているかのよう。最後に残るのは、ムスクとアンバーの余韻。その存在感は控えめで、香りの背後に忍び寄る影のごとく。

「石けん」という名を冠しながら、その実態は複雑で奥深い。日本人の繊細な感性を表現しているのか、それとも普遍的な魅力なのか。この香りを纏う者の鼻が、その答えを見出すことだろう。

調香師:不明
香りの強さ:★★☆☆☆
香りの持続時間:★★☆☆☆

https://shiro-shiro.jp/category/245/12702.html

WHITE LILY

花園の入り口に佇むと、ベルガモットの爽やかな風が頬をなでる。その清々しい香りに誘われ、一歩を踏み出せば、甘酸っぱいカシスの香りが漂う秘密の小道が現れる。大人の女性の微笑みのように、甘美でありながらも謎めいた雰囲気が漂う。

道を進むにつれ、ユリとジャスミンの香りが静かに立ち昇る。その純白の花々は、月光に照らされた舞踏会の主役のごとく、優雅に香りを放つ。清らかさの中にも、どこか官能的な色気が潜んでいる。 最後に残るのは、ムスクの残像。それは、この香りの物語のエピローグだ。花々の華やかさが去った後も、心に残り続ける思い出のように存在感を示す。

この「ホワイトリリー」は、繊細な女性の心を香りで表現したかのよう。しかし、その正体は簡単には掴めない。白いドレスに身を包んだ謎めいた女性が、舞踏会の喧騒から抜け出し、月明かりの庭園で独り佇む情景を想起させる。その姿は、この香りの本質を物語っているのかもしれない。

調香師:不明
香りの強さ:★★★☆☆
香りの持続時間:★★☆☆☆

https://shiro-shiro.jp/category/250/12722.html

WHITE TEA

グレープフルーツとレモンの爽やかな風が吹き抜ける。その清々しい香りは、朝もやに包まれた庭園を散歩する感覚を呼び起こす。

静かに立ち昇るグリーンティーの香りは、朝露に濡れた茶葉を摘むかのよう。清々しくも深みのある香りが広がる。ジャスミンの甘美さは抑えられ、代わりにほのかなローズの香りが顔を覗かせる。この絶妙なバランスが、香りに奥行きを与えている。

最後に残るのは、かすかなムスクとウッディの残り香。そこにアンバーの微かな焦げ香が混ざり、茶葉を煎じた後の香ばしさを想起させる。

この「ホワイトティー」は、香りの変化が明確だ。朝の爽やかさから始まり、日中の落ち着き、そして夜の静けさへと移ろう様は、まるで一日の時間の流れを表現しているかのよう。グリーンノートが全体の甘みを抑え、茶葉の香りが常に存在感を放っている。喧騒を忘れさせる静かな茶室のような存在感。それでいて、香りの奥底には、何か新しい発見への誘いが潜んでいるようだ。

調香師:不明
香りの強さ:★★★☆☆
香りの持続時間:★★★☆☆

https://shiro-shiro.jp/category/283/12906.html

EARL GREY

ベルガモットの香りが、優雅な幕開けを告げる。それは、まるで英国貴族の邸宅で午後のティータイムが始まるかのよう。しかし、この香りは単なる紅茶の再現にとどまらない。

やがて、紅茶の香りが立ち昇るが、それは予想外の余韻を帯びている。まるでチャイを思わせる、甘くて微笑ましい香り。ローズの香りが控えめに顔を覗かせ、この余韻に更なる深みを与える。フルーティーな調べが、この香りの世界に意外性をもたらす。紅茶に浮かぶレモンスライスのように、全体の印象をきりっと引き締めるかのごとく。

最後に残るのは、ムスクとアンバーの名残。それは、紅茶を楽しんだ後の穏やかな満足感を想起させる。

この「アールグレイ」は、後ろ髪を引かれるような印象深さがある。しかし、その魅力は押し付けがましくない。むしろ、ゆったりとした時間の流れを感じさせる。リラックスできるかどうかは、この香りの奥深さに対する個人の感性によるだろう。

この香りは、まるで気の置けない友人との楽しいティータイムのよう。心地よい会話に花を咲かせながら、ゆっくりと紅茶を啜る。そんな贅沢な時間を、香りで表現しているかのようだ。

調香師:不明
香りの強さ:★★★☆☆
香りの持続時間:★★★☆☆

https://shiro-shiro.jp/category/526/12415.html

KINMOKUSEI

キンモクセイの香りが立ち昇る瞬間、多くの人は懐かしさと共に戸惑いを覚えるだろう。ありふれた芳香剤を思い浮かべてしまうのだ。しかしこの香りは、そんな先入観を軽やかに裏切る。

最初に、ベルガモットとキンモクセイが思いがけない出会いを果たす。まるで和洋折衷の庭園のように、異なる文化の香りが交わる不思議な空間。この予想外の調和は、人々のキンモクセイに対する既成概念を巧みに覆す。

しかし、この独特な印象はほんの束の間。やがて、キンモクセイの香りが静かに変容を遂げる。それは秋の夕暮れ時、街路樹から漂う微かな甘美さのよう。強烈な印象は薄れ、代わりに懐かしさと優しさが漂う。

最後に、ムスクの登場。キンモクセイの香りと絶妙に溶け合い、想像もしていなかったミルキーな印象を醸し出す。

この「キンモクセイ」は、人々の固定観念を巧みに刺激し、新たな香りの旅へ誘う。それは、日常の中に潜む、思いがけない驚きと安らぎを見出す旅。強烈な第一印象から始まった旅が、懐かしい思い出の中で静かに終わる。私たちの「におい」に対する先入観を、優しく、そして確実に揺さぶる香りだ。

調香師:不明
香りの強さ:★★☆☆☆
香りの持続時間:★★★☆☆

https://shiro-shiro.jp/category/528/12576.html

まとめ

知り合いのアロマテラピストから興味深い話を聞きました。香水には体臭を隠すために使われてきた歴史があるそうです。

中世から近世にかけて、特にフランスのパリなどでは下水道が未整備で、都市部での生活は非常に不衛生でした。そのため、人々は体臭を隠すために香水を使うことが一般的だったとのことです。調香師にフランス人が多いのも、こうした歴史的背景が影響しているようです。

ただし、香水の歴史はさらに古く、香りを楽しむためや宗教儀式、病気の予防など、さまざまな目的でも使われていました。体臭を隠すという理由は一つの要因に過ぎず、香水にはより複雑で豊かな歴史や文化的背景があることを付記します。

現代の日本の香りとして、SHIROは私の予想を裏切らない香りでした。個性と明確なノートの変化が楽しめる西洋の香水とは趣きが異なり、日本人の清潔を重んじる習慣、体臭が発生しにくい生物学的特徴が考慮された、まさに日本人に合ったさりげない香りなのです。全体的にジェンダーレスな印象ですが、WHITE LILYだけは唯一、女性により似合う香りのように感じました。

SHIROのフレグランスは、どれも良い香りです。しかし、変化と驚きを期待する自分にはおとなしすぎたというのが率直な感想です。

SHIROへの批判について

SHIROは高価格帯のブランドでありながら、店頭で商品を袋に包まないなど、環境に配慮した取り組みを行っています。しかし、この「先進的な」SDGsへの取り組みが、一部の消費者から批判を受けているようです。

これらの批判は、「高価な商品には特別なサービスや丁寧な包装があってしかるべき」という固定観念に基づいていると考えられます。しかし、地球の資源は有限です。私たち消費者もこの固定観念を見直す必要があるのではないでしょうか。

SHIROのような先進的なブランドの取り組みは、消費者の意識を変える契機となる可能性があります。長期的には、このような取り組みが消費者と企業の間に新たな価値観を形成し、持続可能な未来への重要な一歩となるでしょう。

SHIROの環境配慮への姿勢は評価に値します。批判に直面しながらも、このような信念を貫くことは容易ではありません。変わるべきは私たち消費者の意識です。SHIROには、今後も自社の理念に基づいた取り組みを継続してほしいと思います。

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