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香水主観レビュー

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その日の気分を高めてくれる香水。ニッチな香水を中心に主観レビューしていきます。
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記事一覧

Maison Matineの反抗。ボイジャーコレクション編

メゾン・マティン(Maison Matine)は、2019年にマリー・ケルーとアーチュー・ポンロアによってパリで創設されたニッチフレグランスメゾン。従来の工業的なものづくりから脱却し、新時代にふさわしい独自のフレグランス創造を追求することを目的として設立されたそうです。 ブランド名「MATINE」は「反抗と朝」をかけ合わせた造語だそうです。挑戦的でありながら、際立ち過ぎない個性があり、不意に笑みがこぼれるような新しさを感じる香りはとても魅力的ですね。ユニークな商品名と、現代

英国のエレガンス JO MALONE。レイアリング推しの本家

今回はJO MALONE(ジョー・マローン)。ブランド名のご本人であるジョーさん(女性)によって1994年に設立されたイギリスのフレグランスブランドです。ジョーさんが自宅のキッチンで手作りのフレグランス製品を作り始め、それが評判を呼んだのが起源とされています。 ジョー・マローンの最たる特徴は、レイアリング(重ねづけ)というコンセプト。単独でも他の香りと組み合わせても楽しめることを前提として調香されており、自分だけの組み合わせを探求できることを訴求しています。スタッフからレイ

Laboratorio Olfattivo。マーケを捨てた香水界の異端児

「波長が合う」というのは、しっくりくるとか、自然でいられるとか、心地よいってことだと思ってます。 今回は「香りをアートする嗅覚の実験室」と称されるLABORATORIO OLFATTIVO(ラボラトリオ・オルファティーボ)。いくつか試香して、まさに波長が合いそうなブランドだと感じ、手始めにニードユーを購入したことは以前に書きました。 このブランドをもっと深く知るために、今回はマスターズコレクションを買ってみたので、いつものように主観レビューしていきます。 TUBEROS

Kerzonの反骨精神。香水をもっと身近な存在に

ケルゾン(Kerzon)は、2013年に冒険と旅行を愛する二人の兄弟、ピエール-アレクシス・デラプラスとエティエンヌ・デラプラスによって設立されたブランドです。 NOSE SHOPのスタッフによると、もともと石鹸からスタートしているそうですね。本国では、家庭用香り製品やボディケア製品のブランドとしても知られており、 天然由来の成分を使用していること 環境に優しいこと 調香からパッケージまですべてフランス国内で手作りされていること などから、人気を博しているようです。

Aesopの香水は終わったのか。全10作、悲哀のレビュー

ぼちぼちイソップに触れないわけにはいきません。なぜなら、私が香水の沼にはまる原点だったからです。いつだったか忘れましたが、プレゼントを買いにイソップに立ち寄ったときに、初めてフレグランスを売っていることを知りました。 イソップのフレグランスづくりは失敗の歴史だったそうです。植物学や藻類学を学んだ調香師バーナベ・フィリオンと出会ったことで、フレグランス作りの技術が抜本的に生まれ変わり、いまに至っているとのこと。その生誕ストーリーと謎めいたバーナベ・フィリオンの人物像に深く引き

NOSE SHOPオンライン限定! ふんわりムスクな香水

ムスクといえば、「さりげない」というよりも、これ見よがしに官能さを主張するものが多いという固定観念を持っていました。しかし、NOSE SHOPの「ふんわり」というワードに引き寄せられ、自分の決めつけが誤りなのかどうか確認するために、ミニ香水セットを購入してみました。 なお、このセットはNOSE SHOPがセレクトしたムスク系の香水9種類の中から3点を選べるものですが、購入時点でほとんどが売り切れており、残っていた3種類のレビューとなります。いずれもオードパルファム(EDP)

Maison Louis Marie。情景再現度バツグンの香水

私はストーリーに魅せられると周りが見えなくなるタイプです。音楽はその最たる例で、生い立ちや作り手のインタビューを読んでしまうと、曲やアルバムが彼らの歩んできた人生の通過点のように感じられ、共感の沼に深く落ちていきます。 今日はそんなストーリーに引き込まれる香水ブランド、メゾン・ルイ・マリーです。NOSE SHOPの紹介文を引用します。 このヘリテージとストーリーに惹かれ、ディスカバリーセットを購入しました。いずれも強くは香らず、自分のパーソナルスペースにほんのりと香る感じ

REPLICAへの偏見。ミニ香水セットで誤解を解く

「情動ヒューリスティック」。椎名林檎の曲名ではありません。感情的な状態に基づいて無意識に意思決定をしてしまう傾向のことです。速やかな意思決定が行える一方で、誤った判断を生み出すことがあります。 例えば、たまたま飲んだコーヒーが美味しくなかったとしても、全てのコーヒーにあてはまることではありませんよね。私がレプリカに対して持っていた偏見も、たまたま居合わせたスタッフの印象によるもので、まさに情動ヒューリスティックに基づいていました。 この誤った感情的判断をすっきりさせたくて

FUEGUIA 完結編。香水好きの終着駅?

香りが視覚と聴覚を呼び覚まし、ストーリーを映像化するフレグランス。ジュリアン・ベデルの創り出す世界は、香りのノートを平面的な順序ではなく、楽器が奏でるハーモニーのように立体的に構築されている。まるで映画のサウンドトラックのような感覚を味わえるフレグランスです。 試したサンプルは合計20本。これでフエギア探索は本当に終わり。自分に合う香りにたどり着くには時間が必要という結論です。もう一度この世界に浸りたくなったら、ショップに出向こうと思います。 過去のノート 香水好きの終着

FUEGUIA スタッフ編。香水好きの終着駅?

フエギア探索にキリをつけたと思ったのもつかの間。スタッフから3本のサンプルを託されました。自分とはまったく異なるタイプのものを選んでいるのが興味深いです。 ここまで13本。なんかキリが悪い数字だなとモヤモヤしながらウィッシュリストと睨めっこする今日この頃です。 過去のノート 香水好きの終着駅? フエギア #1(沼り編) Fueguierイチジクの木陰でシエスタに入ると、真昼のそよ風が吹き抜ける。そんなストーリー。ビターオレンジの葉や枝から抽出されたオイルが、早熟な果実の

FUEGUIA 沼り編。香水好きの終着駅?

香水好きが行きつくと形容されるフエギア(FUEGUIA 1833)は、2010年にブエノスアイレスでジュリアン・ベデルにより創業されたニッチ香水のブランドです。仕事中に手首の香りをかぎ、目をつむりながらしばし固まるという毎日を過ごしていて、周囲から不審の目を向けられる状態になりました。キリをつけたいと思います。 Pampa Húmeda真夏の雨上がりに吹き抜ける爽やかな風を感じる香り。ビターオレンジのほろ苦さ、狩りたての草木を思わせる鮮やかな清涼感に、ほのかなコショウのスパ