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模型づくりについて

設計事務所では基本、建築模型を作り建物を検討します。僕の事務所でも模型作りの作業は大切にやり続けています。
現代では模型を作らなくてもデジタルな3D上で建物の形態を把握することが可能となっているのかもしれません。容易に想像できると思いますが模型作りはアナログな作業でなおかつ時間がかかります。

ただ、なぜ模型なのか?

実態の把握

設計者の業務の究極の目的は作り手に伝わるしっかりとした図面を作成することです。自分たちの構想を他者に伝えるための図面を作成するのです。それは施工会社に対してだけではなく施主に対しても同じです。
ただ、設計者本人が図面だけの検討でその建物の全てまで把握できているかは別物です。光の入り方や視線の抜け、立体の組み合わせのバランス、スケール感、建築には様々なファクターが付き纏い、そのファクターを整理していくことは設計者にとって大切な仕事です。
模型を作ることで図面上では空想の延長線上でしかなかった構想を三次元で可視化することができます。
もちろんプロですから図面状でも訓練によって多少想像はできているかもしれませんが、本当のところ空間が全て見えているわけではありません。
見えている方が少ないのかもしれません。
恐らく多くの建築設計者も同じだと思います。だからこそ、模型という道具を使うことで今考えているその建物をクリアに理解できるのです。

スタディーの過程とリアルな表現力

学生時代憧れていた妹島和世さんの書籍「妹島和世読本-1998-」。そこに描かれた事務所のスナップ写真の中に写り込む、大量のスケッチやスタディ模型に影響を受けた学生、建築家は多いのではないでしょうか。
大量の模型の作成の中で検討を尽くし、思考をブラッシュアップしていく過程は刺激的であり、大量の模型を通し、建築が様々な検討の積み重ねの中で築き上げられていくことを物語っています。
建築界のトップランナーである建築家も模型を信じ、それに向き合い続けているのです。

また、長谷川豪氏の書籍「考えること、建築すること、生きること」にはこうも書かれています。

昨日まですごい良いと思っていた模型が、ガラクタのように見える時がある。その逆もある。とにかくそうやって模型という他社に寄り添いながら繰り返し問いを立て直すということそのものが、とても人間的で想像的な行為なのではないか。そう思って今日も模型でスタディーをしている。

模型を作ることでその日その日、その瞬間の想いや気持ち、モヤモヤを頭の中から外に出し、視覚に訴えて考え直すことができます。
いわば作られた模型が様々な問いを生み出してくれるのです。

また、模型を作るとなると多少の時間もかかるものです。
いわば作成中の時間はぶれることなくその建築物に対峙できる貴重な時間でもあります。時には小さなズレや、もしかしたらカッターで間違えて切ってしまったラインからも何か新しいヒントが生まれる可能性も生まれてくるかもしれません。

そのような模型を作ることから生まれる時間と思考の連鎖の末に生み出された建築模型は、一瞬のひらめきだけの構想では生まれない強いリアリティーを持つものです。

模型

妹島和世+西沢立衛読本-2005 よりツォルフェラインスクールの建築模型

コミュニケーションの醸成

建築模型を手に取り、見たことのある方は分かると思いますが、模型はあるだけでなんだかワクワクできてしまいます。
また、実体として立体として目に見え把握できるため、建築のコミュニケーション手段としてはとても有効です。

実際お施主さんからも図面では分からなかったことが、立体的になるとよく分かるという感想をいただきます。

模型は完成作品ではありません。あくまでも検討材料なのです。

プリントに描かれた一枚の絵では伝わらない情報量がいっぺんに、設計者も施主も、施工会社も、そしてそれを飛び越えて、社会に対しても訴えることができるツール。

それが模型であり、だからきっと、みんな、時間がかかってでも原始的なアナログな作業であることもわかっていながらも、その先に見えるリアリティーを求めて、必死に模型を眺め作り続けているのだと思います。

archlife

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西和人/Archlife

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建築家|Archlife主宰|株式会社西和人一級建築士事務所|金沢科学技術大学校非常勤講師|日本建築士会連合会青年委員会|Hp:https://archlife.jp|Insta:https://www.instagram.com/kazutonishi_architects/