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さらっと西洋建築史4〜ローマ建築を支えた建築手法〜

紀元前1世紀末には地中海湾岸のほぼ全域の覇権を握った古代ローマは、古代ギリシアのオーダーによる美的規範を継承し、その上で、アーチやヴォールトといった工法を発展させ、人々の活動を包み込む巨大な建築物をこの世に誕生させてきました。

教会建築の発展とも重なり、建築技術、工法の発展が目覚しく進んだ時代でもあります。
現在でも活用されている建物も多く、都市の基盤や秩序を支え続けています。

今回はそんなローマ建築の成り立ちについて記載していきます。

構造技術の発展と新しい空間の出現

万有神殿という意をその名とするパンテオン神殿は、この期に築かれた建築物の最高傑作として今でも世界中の人を魅了し続けています。

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パンテオン神殿の天井 写真:wikipedia



パンテオン神殿の中枢には直径43.8mの巨大なアトリウム空間が形成されています。小宇宙を象徴しているとも言われるこの巨大な「虚」としての空間は、古代ローマにおいて発展をみせた構造技術によって初めて実現可能なものとなりました。

中でもコンクリート技術の発展は目まぐるしく、以降の建築づくりの規範ともなっていきます。
この頃開発されたコンクリートはローマコンクリートと言われ、高い強度を実現することができるものでした。
コンクリートの持つ可塑性を持って、この頃多用された大空間を支えるアーチやヴォールトといわれるいわゆるR型の形状が多用されていくことになります。
パンテオンではさらに、円筒型の壁部分に開口部を作り、壁の自重を軽減することに成功していますし、ドーム部は、上方ほど壁圧を薄くし、コンクリートの骨材に軽量の凝灰石や軽石を用いることで自重を減らし、安定した構造を達成しています。

現代でも通じるであろう、目に見張るほどの工夫を持って数多くの歴史的建造物が築かれていったのです。

ローマ式コンクリート:現代のポルトランドセメントはアルカリ性になる化学反応によって結合しているため、二酸化炭素の侵入による中性化や塩害でしだいに強度を失っていく。そのため、日本のコンクリート建造物の寿命は、およそ50年から100年程度と言われている。これに対して、ローマ式コンクリートは、地殻中の堆積岩の生成機構と同じジオポリマー反応によって結合してケイ酸ポリマーを形成するため、強度が数千年間保たれている。[wikipedia]




装飾としてのオーダーの活用

ローマ式コンクリートの壁体は石材やレンガの薄い壁を恒久的な型枠として使用し、その間にコンクリートを流し込むことによって作られていきました。その上に大理石や漆喰によって仕上げが施されていくことになります。

つまり、構造と仕上げは別のものと考えられていたのです。

帝政期ローマではアーチをオーダーで枠取るという意匠法が洗練されていきます。そしてその完成された姿を、ティテュスの凱旋門において確認することができます。

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ティテュスの凱旋門 写真:wikipedia




ローマ人が創出した新しい建築タイプは以後の建築文化の発展に大きな意味を持つものとなっていきます。

ローマもまたギリシアと同様、教会だけでなくその周囲に都市を形成する多数の公共施設が建設されていくことになります。次回はこの高度な建築技術をもって生まれた都市、歴史的建造物を見ていきます。

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