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建築家という仕事について

建築家の仕事ってわかりますか?

「建物を設計するのが仕事でしょ!」

いう声が聞こえてきそうですが、もちろんその通りではあるのですが、建築家の職能はとても広く、一概にそれだけではないこともあります。

その辺りを少し伝えていけたらなと思っています。

1.建築家という職業について

一般的には建築における建物の設計や工事の監理などを行う専門家のことを建築家と呼ぶことが多いのではないでしょうか。建物を建てる予定の施主に対し、要望をまとめ、具体的な設計図に落とし込み実際の形ある建物を提供するのが本業になってきます。

建築を構想するにはそれを担保するための一定以上の知識とスキルがなければ成り立ちません。法律はもちろんのこと、安全性や環境性能、意匠性、建物規模にかかわらず様々な知識や技術が必要となってきます。

建築行為には大きなお金も動きます。予算を視野に入れながらも、その金額に見合った建物を提供する責任もあります。

人の生命を守る医師、権利をまもる弁護士と同様に建築士という資格を運用するには重い重責が伴います。

その重積を背負いながらも責任感と強い忍耐力、推進力を持って新たな建築の可能性をクライアントと一緒に追求していくことが建築家の役割なのかもしれません。

哲学者のプラトンは以下のような言葉を残しています。

創造の才に恵まれたすべての詩人、芸術家たちは知恵や魂のもろもろの他の徳性の父ではなかったろうか。そして、その知恵にも多くの形があるが、最も美しい、最も高い知恵は都市と家庭を組織する仕事に携わる者である。慎重さと正義を合わせ持つ者それを人は名付けて建築家と言う。

イタリアルネサンス期に活躍した芸術家、ミケランジェロもサン・ピエトロ大聖堂ドーム等の数々の建築を残しています。

大地に根差した、人を内包する芸術の追求をして、初めて建築行為と言えたのかもしれませんし、その文脈はまだまだ受け継がれている気もします。

その中で、時代の移り変わりとともに建築家像もまた大きく移り変わろうとしていることを近年感じることがあります。

2.建築家の職能の広がりについて

上記のように建築家になるためには様々なスキルや知識が必要となってきますが、ここで大切なことは、何もそのスキルは建築を設計するという行為だけに縛られなくても良いということです。

ある建物を構想する力があるということは、様々に都市や地域ビジョンを考えることができるということにもつながります。

建築を考えることは人の振る舞いを考えることでもあります。人間学や行動心理学、社会学、様々な専門性に介在していくことも容易に考えていくことができます。

人の行動する場を構築していくことだけでも建築行為なのかもしれません。

建築はある種自然界と人間との間に屋根や壁を使って人間を守るフィルターを作る行為であるとも言えます。そうなってくると、最小の建築は人が纏う衣類であるのかもしれません。

現にファッションデザイナーと建築家の親和性は高いものがあります。

設計行為とは、複雑に絡まった思いや希望、現実とのしがらみを丁寧に解いて関係づけ整理していく行為であるとも言えます。多くの人もコントロールしていかなければなりません。

その能力を有するのであれば物事をコンサルティングする能力も高いはずです。

また昨今では、様々な地域で自然災害が後を立ちません、自然の猛威に対して人は脆く、そして建築も多くの被害を受けることがあります。被災地の復興には建築家のもつ建物に関する専門性は大いに必要になっています。

それは建築を芸術として建てる行為とは別に、その知識を生かして、人を生かす専門家として活動していく行為に他なりません。

リノベーションという考え方も普及してきています。新たな建物を建てるだけではない、今あるものに建築家の持つスキルをいかして価値を与え人や建築に活力を与える原動力を生むことができます。

建築を建てるためには論理的に考えて構築していく能力も不可欠になってきます。その思考力は分野を問わず、社会に大きなアドバンテージとして働きかけることもできるはずです。


などなど、いろいろ書いてきましたが、例えばご近所の方の建物の不備の相談を受け、対応していく、いわば地域の建築に関するお医者さんという立場もまた重要な建築家の職能の一つなのです。


建築家になったからには、逆にその言葉に縛られることなく自由に、自分の活躍できる道を見つけて可能性を広げていきたいものです。

Archlife

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