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令和の時代の家づくり

マクロデータで見る、家づくりの現在

そろそろ家が欲しいけど、どうやって?、費用は?
家を自分ごととして考え始めると、様々な疑問が浮かびます。
実際に住宅を取得した人たちは、
どのように家づくりの夢と計画を実現したのでしょうか。
マクロデータから、令和の時代の家づくりをのぞいてみましょう。

個人で新たに家を所有する方法は、
①注文住宅を建てる
②新築分譲住宅(戸建、マンションetc)を買う
③中古分譲住宅(戸建、マンションetc)を買う
のいずれか。

着工件数や既存住宅流通量を見ると、
「家を建てる」人(グラフ1 青色)より、新築や中古物件で「家を買う」人(グラフ1 緑・灰・黄色)が多数派です。
「新築」か「中古」かでは、長らく新築住宅の割合が多い時代が続きましたが、2014(平成26)年の消費増税以降は、中古物件(グラフ1 黄色)を選択する世帯が多数派に転じました。

グラフ1 住宅取得の内訳 2014年以降は中古物件の割合が増加

世帯主の平均像

国土交通省 住宅市場動向調査から

国土交通省「令和4年 住宅市場動向調査」から、属性などを見てみましょう。
*グラフは同調査報告書に基づき作成

世帯主の平均年齢は、新築の注文住宅と分譲戸建が40歳前後、分譲マンション・中古住宅・中古マンションは45歳前後。
新築で戸建住宅を取得する層が、他の層より少し若い結果となっています。

取得住宅別の平均年齢は、注文住宅41.1歳、新築分譲戸建住宅39.5歳、新築分譲マンション44.8歳、中古住宅45.8歳、中古マンション46.3歳。
住宅購入の主流はやはり、40代前半から半ばにかけての世帯です。

2022(R04) 取得住宅別 世帯主の年齢 

世帯年収を比較すると、興味深いデータが現れます(グラフ2)。
日本全体の平均は546万円(厚生労働省2022年国民基礎調査による)、中央値は423万円(中央値が現実に近いと言われる)。
住宅取得層である「高齢者世帯以外の世帯」の平均は665万円、「児童のいる世帯」の平均は785万円。

この住宅市場動向調査では、注文住宅を取得した世帯の平均世帯収入は801万円、分譲マンションなら960万円なので、どの世代平均より高いことがわかります(*全国ではなく三大都市圏)。
分譲マンション取得世帯の高年収が目を引きますが、どの選択も、住宅取得する世帯にはしっかりした経済的裏付けがあることがわかります。

グラフ2 2022(R04) 取得住宅別 世帯年収

どんな人がどんな家を選択するか

建てる党、買う党

住宅取得の選択肢は家を買う、もしくは家を建てる。
「建てる党」と「買う党」がある、と仮定しましょう。
「買う党」には「新築派」と「中古派」があり、それぞれに「戸建シンパ
」と「マンションシンパ」があります。
各派、各シンパには、どんな志向があるでしょうか。

買う党、建てる党、新築派、中古派


「買う党/新築派」「戸建シンパ」「マンションシンパ」

「なぜその住宅を取得しましたか?(複数回答)」
取得住宅の種類別にその理由を見ると、志向の違いが見えて来ます(グラフ3)。
まず「買う党」から見てみましょう。

戸建の分譲住宅を購入した世帯「買う党/新築派/戸建シンパ」の、購入の決め手は「一戸建てだから」「新築住宅だから」がダントツのトップ。
分譲マンションを購入した「買う党/新築派/マンションシンパ」は「立地条件」へのこだわりが強く、ついで「新築住宅だから」「マンションだから」。
いずれも新築志向が強く、かつ分譲戸建には分譲戸建への、マンションにはマンションへの、強いこだわりが見えます。

「買う党/新築購入派」には「新築マイホーム」という明確な夢があり、それぞれの理由で「戸建てシンパ」と「マンションシンパ」に分かれるようです。

グラフ3 取得住宅別 住宅選択の理由
取得住宅別 住宅選択の理由


住宅選択に迷いなし


「住宅取得にあたってどんな住宅を比較検討したか」の質問でも、取得した住宅種類への明確な志向が伺えます。
注文住宅を取得した世帯の7割が注文住宅を検討し、分譲マンションを取得した世帯は8割以上が分譲マンションを比較検討しています。
中古戸建てや中古マンションの取得世帯も同様です。
住宅取得する世帯が、はっきりと方向性を持って選択する過程が伺えます。

グラフ4 比較検討した住宅(複数回答)
取得する住宅形態への強いロイヤルティがある


「買う党/中古派」は堅実な、生活しっかりタイプ


「買う党/中古派」の「戸建シンパ」と「マンションシンパ」は、「価格が適正だから」の指示の強さが目を引きます。
「中古派/戸建シンパ」は、世帯年収も平均年齢も「新築派/戸建シンパ」より高めで、「立地環境」(グラフ3)も同じ程度に重視しています。

世帯年収(グラフ2)と年収倍率(グラフ5)で、志向がはっきりしました。
世帯年収では必ずしも「新築派」が高収入というわけではないのですが、購入価格に対する年収倍率を見ると「中古派」の倍率の低さが目を引きます。
「中古派」のメンバーは、マイホームの夢と言うより、家計を圧迫しない予算や条件を重視する、堅実な生活志向のようです。



三大都市圏 取得住宅別 住宅資金の年収倍率

グラフ5 取得住宅別 価格と年収倍率

マクロデータで読み取れるのはごく大雑把な傾向に過ぎませんが、住宅という大きい買い物に際して、「建てる党」「買う党」、「新築派」「中古派」それぞれの志向の違いが見えてきます。

つづく

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。



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