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都市のオープンデータ、マトリックスの仮想都市、グランツーリスモの話(コンワダさん31週目)

 こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。今週も社内で話題になった事例(コンワダさん)らいくつかを紹介します。バックナンバーはこちら

事例1:新建築「参加型まちづくりに向けたオープンデータの整備」

新建築オンライン記事:「参加型まちづくりに向けたオープンデータの整備」日本の都市空間に関わるデジタル地図データを中心に 瀬戸寿一

――― この記事の要点
【スマートシティ、まちづくり】

 都市に関するデジタルデータは、スマートシティでの活用の他、まちづくりや都市計画で経験則のみに頼らない新たな手段として欠かせない。
欧米の動向と日本での始動】
 欧米では2010年代中盤頃から、都市空間にかかわる地図や基盤的データが積極的に公開され始めた。日本では2020年度に国土交通省が勉強会を開催し、「ProjectPLATEAU」が本格始動。
都市空間の基盤データのオープン化】
 これまで都市空間の骨格をなす基盤的な地図データは行政や都市マネジメントで使われてきた。民間ではGoogleMapなどのWEB地図の普及により利用障壁が下がった一方で、ライセンスや制約の問題がある。
 オープンデータで実用性の高いものだと、公共データとしては国土地理院の作成する地理院地図。民間では「マッパー」と呼ばれる有志よって作られる「OpenStreetMap(OSM)」が有力だ。OSMはFacebook、Instagramなどの民間サービスの他、国際連合やNGOなどの人道支援、災害対応でも積極的に活用されている。
都市空間を移動する動的なデータ】
 コロナ禍で注目を集めた人流に関するデータは、広告、不動産などの民間分野や、公共交通や都市インフラなどの公共、自治体分野で重要なデータ。特に公共交通分野では、国際的なフォーマットをもとにバス情報の標準化が行われ、現在日本全国434事業者によってオープンデータ化が進められている。
3Dデータのオープン化と、データ駆動型まちづくりへ】
 こうしたオープンデータの多くは地図と同様に2Dでの展開が中心だったが、この5年余りで測量・計測技術の進展、ビッグデータの普及、3Dデータの普及により、前述のProjectPLATEAUなど、3Dオープンデータ化が急速に進んでいる。まちづくり、都市計画、建築などの実務以外にも、VR・AR技術を通じた実世界とデジタル空間を融合させたエンターテインメントへの応用も期待。
【まとめ】
「オープンデータ化された3D都市モデルは、データの作成者・利用者の立場を問わず活用し、その新しい用途さえも民主的に提案できる点が大きな特徴である。」(原文ママ)

――― アーキロイドのひとこと
 この連載「コンワダさん」では、デジタルマップ、都市・地図基盤データ、オープンマップ、Webマップ、デジタルツインといったキーワードの事例を幾度も取り上げてきました。世の潮流であり、自分たちの興味の対象であり、当社の活動上重要な分野であるからです。
 当社アーキロイドは、Web上で誰もが住宅設計をできるサービス「archiroid.com」の開発、運営を行っています。住宅などの建築物は個別で成立するわけではなく、その土地の周辺の環境に対して大小あれど互いに影響し合います。そのために建築基準法では、建物個別のきまり(単体規定)と、その周辺に考慮したきまり(集団規定)が存在します。デジタル空間での設計の精度を高め、よりリアルな検討にしていく上ではこうしたオープンな基盤データの存在はとても重要なのです。
 この記事は近年の都市空間のデジタルオープンデータに関する動向とその有用性、必要性を総括する大変わかりやすい記事でした。まちづくり、不動産開発、都市計画、建築に関わる人は是非一読の価値ある記事です。記事内での紹介事例も10以上ありますので、また個別の事例については次週以降のコンワダさんで取り上げるかもしれません。

事例2:UE5のCitySampleがすごい

――― この事例について
 EPIC GAMESのゲームエンジン「UNREAL ENGINE 5」(以下UE5)向けのアセットとして「City Sample」が、4月5日にリリースされた。先だって公開されたThe Matrix Awakensの背景として登場した仮想都市がまるごと収録されたアセット。都市全体ではなく建物だけ、車両だけなどアセット別のダウンロードも可能。

――― アーキロイドのひとこと
 都市つながりで仮想都市の3Dモデルが無料配布されたというニュースです。UEって何?という方、みんな大好きフォートナイトの基盤システムだと言えばなんとなくわかるでしょうか。分からなくてもOKです。上のTweetにあるようなリアルな3DCGアセットが無料なのです。
 リアルな都市で展開されるゲームや映像を作りたい時、その背景を作るのはとてつもないコストがかかります。なので普通は大きなデベロッパーでないとできません。このように都市のデータが配布されれば小規模事業者や個人のデベロッパーでも作成できる可能性が生まれます。事例1に絡めて言えば「基盤データ」化したと言えるでしょう。事例1のようなリアルな都市空間のデータもそうですし、この事例の仮想都市のデータもそうですが、配布や共有に物理的コストのかからないものであればオープンにする、インフラとして共有していくのは素晴らしい流れです。こうした動きは、正確で高度な情報の共有、多岐にわたるデータの利活用、高いレベルでのクリエイティビティの発揮など、全ての人に等しくその機会が与えられるわけで、一企業の限界を超えた価値を生み出す可能性が高いわけです。利益を追求する民間企業が、自社が心血を注いで作成したモノをフリーで開くというのはとてつもない英断ですね。Twitterにも感謝のTweetが溢れていました。

事例3:「グランツーリスモ7」にキレたユーザーがスクリプトのパワーで「完全自動稼ぎ」を実現

――― この事例について
 3月24日にPlayStation向けにリリースされたドライビング&カーライフシミュレーター「グランツーリスモ7」に関する事例。ゲーム内で乗りたい車は購入しなくてはいけない。人気の車はどれも高額で、購入するには膨大な時間をかけて何度もレースをこなすか、課金してゲーム内通貨を購入する必要がある。今回の課金要素を強いるようなゲームシステムにファンからも冷ややかな反応が出ているようだ。
 そんな中、とあるユーザーがPS4やPS5をPCからプレイするリモートプレイに自作のスクリプトを組み合わせたのが上の動画。コースと車に最適化されたスクリプトが、アクセル、ブレーキ、ライン取りなどをすべて自動で操作し、爆速でフィニッシュ。プレイヤーは一切操作せずにレースからクレジットを稼ぐことができます。なお人気のフェラーリF50を購入するには6時間以上回す必要があるそうです。

――― アーキロイドのひとこと
 事例2からのゲームつながりの事例です。ゲームをプレイするためにスクリプトを作るとはクールですね。AIの研究もゲームに端を発するものが多くあるので、実は正面からのアプローチの1つなのかもしれません。にしても、人はどんな壁を与えられても試行錯誤して乗り越えるものですね。
 余談ですが、公道のF1マシンと呼ばれたフェラーリ・F50は、フェラーリの50周年を記念して限定349台が作られた車です。世界で最も成功したカーデザイナー、ピニンファリーナの作品で、30年近く前の車です。その実車価格は当然中古ながら4億5000万円に迫る勢いで、ゲーム内とは言え6時間でその運転を少しでも体感できるのはお得なのかもしれません。更に余談ですがF50の後継車種で、フェラーリ55周年を記念して作られたフェラーリ・エンツォフェラーリは、ピニンファリーナ社のデザイナーであった日本人の奥山清行氏の設計です。

まとめ

 今週も最後までご覧いただき、ありがとうございました。現実の都市のオープンデータ→ゲーム内の仮想都市のデータ配布→ゲームをスクリプトでプレイ、と流れを重視した回になりました。まぁたまたま。
 最後に「スキ♡」を押してくださると今後の励みになります!それでは皆様よい週末をお過ごしください。


「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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