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一級建築士設計製図試験の床面積の算定におけるピロティを屋内的用途に供する部分

1.床面積算定の原則

S61.4.30建設省住指発第115号「床面積の算定方法について」によれば、ピロティに関しては『十分に外気に開放され、かつ、屋内的用途に供しない部分は、床面積に算入しない。』とされています。加えて屋内的用途の判断として、『床面積に算入するかどうかは、当該部分が居住執務作業集会娯楽物品の保管又は格納その他の屋内的用途に供する部分であるかどうかにより判断するものとする。』とあります。

2.設計製図試験における床面積の算定

『この課題の床面積の算定においては、ピロティ、塔屋、バルコニー及び屋外階段は、床面積に算入しないものとする。』と従来より問題文に記載されている内容に、平成29年からは『なお、ピロティ等を屋内的用途に供するもの娯楽スペース設備スペース駐車場等)については、床面積に算入するものとする。』などと書き加えられるようになりました。

ピロティは、原則、床面積に算入しませんが、屋内的用途に供する場合は算入することになり、S61.4.30建設省住指発第115号に即した問題文の条件設定となっています。

受験者からすると、ピロティをつくって面積調整をするといったテクニックを、安易に使えず苦心したり、時には床面積に算入すべきか否かで悩まされるケースも出てくることになったと思います。

3.屋内的用途に供するもの

ピロティ等を屋内的用途に供するもの又は部分として、問題文に平成29年以降、( )書きで明示されているものを以下にまとめてみます。

平成29年:娯楽スペース、設備スペース、駐車場等
平成30年:娯楽スペース、設備スペース等
令和元年:娯楽スペース、テラス、設備スペース、駐車場等
令和2年:駐車場、設備スペース等

平成30年だけは駐車場が屋内的用途になり得る対象から外れています。これについては、「屋外施設」の与条件で『駐車場は~敷地内には設けない』とされていましたので、ピロティ等に駐車場を計画することがないという前提によります。

4.令和元年のテラスの扱い

以下は、令和元年本試験(10月実施)における床面積の算定についての問題文の記載内容になります。

この課題の床面積の算定においては、ピロティ、塔屋、バルコニー、屋外階段、屋上設備スペース、屋上庭園及び屋外テラスは、床面積に算入しないものとする。なお、ピロティ等を屋内的用途に供するもの(娯楽スペース、テラス、設備スペース、駐車場等)については、床面積に算入するものとする。

屋外テラスは、「その他の施設等」として要求しているものを指しているのは明らかですが、( )書きにあるテラスとは、いったい何を指し示しているのか?……悩ましいところです。

その計画が、「その他の施設等」として要求している屋外テラスであるならピロティであろうとなかろうと床面積に算入しない、しかし任意で別途設けたテラスである場合はそれをピロティに計画しているなら床面積に算入する、といったように屋外テラステラスとを別物として扱う解釈もできます。

また、違う捉え方をしてみます。ピロティと屋外テラスは、床面積に算入しないものとして並列されていますので、両者は異なるものとの読み方ができます。よって、ここにある屋外テラスは、そもそもピロティではないものを要求しているとの解釈もできなくはありません。

上の通り、屋外テラスとテラスの記載関係については、解釈に幅があって謎を残します。が、この謎はさて置いても、「一般的にテラスは屋内的用途に供するものに含み、ピロティにテラスを計画していた場合は床面積に算入する」という結論には至れると言えそうです。

5.令和2年のテラスは?

令和2年の本試験では、「地域交流スペース」の特記事項に『テラスを設ける。』とだけ記載しています。これに対し、令和元年の再試験(12月実施)においては、「その他の施設等」として「カフェテラス」を要求し、その上で「要求室」である「カフェ」の特記事項で『屋外のカフェテラスと行き来できるものとする。』と両者の関係を求める形にしています。こうした要求の仕方に違いはあるにせよ、要求室に付属するテラスであるという位置づけに大差はないと考えます。

それでは、令和2年「高齢者介護施設」で求めるテラスをピロティに計画した場合、床面積算定上、屋内的用途として扱うべきか否かについて考えてみます。

『ピロティ等を屋内的用途に供する部分(駐車場、設備スペース等)については、床面積に算入するものとする。』とだけ記載しているのが、令和2年の問題文になります。細かい点に拘るなら、これまで「供するもの」としていたところが、「供する部分」に変わっているのも特徴と言えば特徴です。

「屋内的用途に供する部分」の( )書きの中から、令和元年には含まれていた「娯楽スペース」と「テラス」が外されています。テラスを要求しておきながら、駐車場、設備スペース等の「等」の中に含んでいるのかいないのかもはっきりせず、テラスの扱いをあえて濁している意図は何なのか?と考えてしまいます。

テラスをピロティに計画することを前提におかない出題であるとの意図なのか?……または「屋内的用途に供する部分」の( )書きに含まれていないのだから、ピロティに計画した場合でも屋内的用途とは扱わず単にピロティとして床面積に算入しなくてよいとの意図なのか?……

このように意図することをはっきり示さないのは、「わかるだろ!」というような解釈の押し付けになり、少々強引ではないだろうか、とも思います。

一方、算入するかしないかは、S61.4.30建設省住指発第115号「床面積の算定方法について」に基づいて各自で判断することを委ね求めているなら、出題意図としてわかる気がします。しかしながら、減点を恐れる受験者からしたら、出題意図が読みきれないことを判断させられるのは悩ましいところではないでしょうか。

では、どうすればよいのか?最後に一つの考え方を示しておきます。

令和元年の本試験、再試験とも「屋内的用途に供するもの」として、テラスを明示していますので、ピロティにテラスを設ける場合は屋内的用途として計画すればよいと言えます。当然、その結果ピロティ部分は床面積に算入することになります。

出題者の意図することが読みきれない場合、上のような前提をつくった上で、計画上留意した事項として、平面図のテラスの位置に「屋内的用途として計画し床面積に算入」と補足して明示しておくことも一つです。設計者としての判断を採点者に伝えることをすれば、算入?不算入?に対する迷いも解消できるのではないでしょうか。

採点者にどう受け取られるか不安があるようなら、こういったときこそ図面中に補足し、自分の考えを説明しておくことが有効になると思っています。


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