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一級建築士設計製図試験の設計与条件は、ネガティブリストなのか?ポジティブリストなのか?

ネガティブリスト
原則的に規制のない中で、規制するものを列挙した表。
ポジティブリスト

原則的に禁止されている中で、禁止されていないものを列挙した表。
(広辞苑より)

建築基準法に当てはめると、法第48条(用途地域等)による法別表第二の建築することができる建築物が掲げられている第一種低層住居専用地域から第一種中高層住居専用地域までと田園住居地域がポジティブリスト建築してはならない建築物が掲げられているその他の地域がネガティブリストということになります。掲げられていない用途なら何でも建築できてしまうネガティブリストより、掲げられている用途しか建築できないポジティブリストの方が制限は厳しいことになります。

設計製図試験の設計与条件について、便宜上、以下のような捉え方をしてみます。
<ネガティブリストとしての捉え方>
 原則的に制限のない中で、制限されることを特記
<ポジティブリストとしての捉え方>
 原則的に制限される中で、制限されていないことを特記

ネガティブリストとしての捉え方をすれば、特記されていないことは制限を受けない、すなわち自由に判断していいということになります。

ポジティブリストとしての捉え方になりますが、試験問題に、制限されていないことを特記することは意味をなしません。そこで、制限されていないことを受験者自らが過少に特記することで、結果自分で制限を増やしてしまうことを、便宜上、ポジティブリストとすることにします。

上の通り、ネガティブリストよりポジティブリストの方が、設計する上での制限が厳しく、自由度も少ないことになります。

以下、令和元年本試験(10月実施)と再試験(12月実施)に共通する留意事項を取り上げて考察してみます。

4.留意事項
(1)公園への眺望に配慮する。

「眺望」ということから、「ある要求室等」から公園が眺められるようにすることが求められていると解釈することは難しいことではないと思います。

<ネガティブリストとしての解釈>
「ある要求室等」については、特記がありませんので、公園が眺められれば、どこからでもいいということになります。ただし、どこからでもいいと言っても、「公園を眺めながら、○○する。」という表現が、しっくりくる要求室等である必要はあると言えます。
以下、しっくりくるものと、こないものとがあると思います。
繰り返しになりますが、留意事項に特記はありませんので、しっくりくるもの中から配置できるものだけを、無理をせず配置すればいいということになります。
・公園を眺めながら、カフェでコーヒーを飲む。
・公園を眺めながら、ホワイエで寛ぐ。
・公園を眺めながら、アトリエで革細工をする。
・公園を眺めながら、事務室で仕事をする。
・公園を眺めながら、屋外テラス(カフェテラス)で寛ぐ。

カフェと屋外テラス(カフェテラス)については、公園への眺望が留意事項とは別に要求されていますので、これらの要求を満たすだけでも、留意事項を満足していると言えます。しっくりくるホワイエもと欲をかきたくなるところですが、無理をしてまでやる必要のないことだと思います。

<ポジティブリストとしての解釈>
「ある要求室等」については留意事項に特記がありませんが、これを受験者自らが眺望の制限を受けない要求室を事務室や会議室等のごく限られたものだけと判断し、結果、その他複数の要求室等の全てから公園が眺められないといけないと、勝手に制限を広げた解釈をしてしまうのが、ポジティブリストとしての設計与条件の捉え方だということになります。

ポジティブリストとしての解釈をすれば、その必要もないのに複雑な計画を自らで選択していることになります。

設計製図試験の設計与条件は、ネガティブリストであるとの意識をもって、改めて問題文を読み直してみると、思い込みから解放された違った解釈が見えてくるのではないでしょうか。

以下の記事も参考にしてみて下さい。


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