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一級建築士設計製図試験の出題者の思わせぶりな文意を考察してみる

 平成30年と令和元年の問題で、出題者の文意がいまひとつ掴みにくい条件の中から、屋上に設ける「設備スペース」を取り上げて、考察してみたいと思います。
 階数はともに3階建てになり、「3階の屋上に設ける」と特記すればいいところを、両年とも明示せず、3階の屋上にあるような思わせぶりな表現に留めています。その結果、要求図面の特記事項の文意をわかりにくくしているように思えます。

1.平成30年のケース

<条件①>要求室の特記事項
 電気設備スペース:屋上に設け、面積は約40㎡とする
<条件②>各平面図に図示又は記入するもの
 設備計画に応じた設備スペース
<条件③>3階平面図に図示又は記入するもの
 屋上の電気設備スペースの位置(点線で表示)

 <条件①>の段階では、屋上の設置レベルの指定はありませんので、1階の屋上(2階の床レベル)2階の屋上(3階の床レベル)3階の屋上の3つのケースが考えられると読み取れます。
 <条件②>の段階でも、電気設備スペースに限った条件ではありませんが、<条件①>を踏まえるなら各平面図への要求になりますので、計画に応じて設置した床レベルの平面図に図示すればいいのだろうと解釈できます。平成27年の標準解答例①では、2階の屋上(3階の床レベル)に計画した設備スペースを、3階平面図に点線で図示しています。
 <条件①><条件②>を読めば、1階の屋上又は2階の屋上に電気設備スペースを設ける場合は、それぞれ設置した床レベルの平面図に図示すればいいと解釈でき、これは平成27年のように従来通りの要求となります。
 平成30年のケースでは、<条件③>が別途設けられましたので、3階の屋上(最上階の屋上)に電気設備スペースを計画した場合は、3階平面図に、上階にあるものとして点線で表示することを求めていると読めます。ここで引っ掛かってくる点は、<条件③>が3階の屋上に電気設備スペースを設ける前提の要求と読み取れてしまうことです。だったら、<条件①>にある「屋上に」「3階の屋上に」とし、要求室の特記事項ではっきりさせておくべきではなかったかと思うところがあります。あくまで電気設備スペースを設置する床レベルを限定させたくないという意図があるのであれば、<条件③>を「屋上の電気設備スペースの位置(ある場合のみ点線で表示)」とするなどの工夫が必要ではなかったかと考えます。

2.令和元年のケース

<条件①>要求室の特記事項
 屋上設備スペース:機器のメンテナンスに配慮し、階段及び人荷用エレベーターを屋上に通じるように設ける
 面積は約120㎡とする
<条件②>各平面図に図示又は記入するもの
 屋上設備スペースの位置(設置した下階に、適切に平面図に点線で表示)
 
 <条件①>を読みますと、屋上に通じるメンテナンス用の階段・エレベーターをあえて求めていますので、3階の屋上(最上階の屋上)に屋上設備スペースを設置する前提の条件であるように解釈できます。また、面積が約120㎡となっていますので、設置する床レベルを分けることも許容していると読むことができますが、同一平面内での分散配置を許容して「計」としているとも読めます。
 <条件②>についても、「設置した下階に、適切に平面図に点線で表示」とありますので、ここでも、3階の屋上に設置することを出題者は前提にしているものと思われます。なぜなら、1階の屋上(2階の床レベル)や2階の屋上(3階の床レベル)に設置するなら、下階に表示するのではなく、平成27年の標準解答例①の例のように2階平面図や3階平面図に表示する方が適当だと思うからです。「設置した下階に表示」とする以上、やはり3階の屋上(最上階の屋上)であることを、ほのめかす思わせぶりな表現をしていると思ってしまいます。
 ここで一つ疑問が生じます。<条件①><条件②>とも3階の屋上に設置することを前提にしているなら、<条件②>各平面図への図示又は記入事項ではなく、3階平面図への図示又は記入事項として、なぜ要求しなかったのかということです。そもそも3階の屋上に屋上設備スペースを計画するなら、これを平面図に表示しようとすれば、その下階となる3階平面図にしか表示できないわけです。各平面図に図示又は記入されるものは、設置階が受験者の計画に委ねられるもの、又は全ての階に求められているものになっているはずです。これに対し、3階平面図に図示又は記入されるものは、3階のみに求められているもののはずです。

3.思わせぶり感をなくした令和元年条件の修正案

 平成30年、令和元年の標準解答例とも、それぞれ電気設備スペース、屋上設備スペースを3階の屋上に計画しています。
 問題からも薄々読み取れるように、出題者は3階の屋上への設置を念頭に置いて条件を書いていたのだろうと思います。
 思わせぶり感をなくした条件設定とした方がよかったのではないかと思うことを、以下の通り提案してみます。 

<条件①の修正案>要求室の特記事項
 屋上設備スペース:3階の屋上に計画し、機器のメンテナンスに配慮し、階段及び人荷用エレベーターを屋上に通じるように設ける
<条件②の修正案>3階平面図に図示又は記入すること
 屋上設備スペースの位置(上階に設置したものを、点線で表示

4.出題者の試行錯誤の末

 令和元年の<条件②の修正案>では、「上階に設置したものを、」はなくてもいいと思いますので、結果として、平成30年の<条件③>と同じ内容になります。 
 1.に書きました通り、平成30年の問題において、電気設備スペースの特記事項を「3階の屋上に設け、面積は約40㎡とする」としているだけで、<条件①><条件②><条件③>は相互に矛盾なく完結できていたのではないかと思います。
 問題作成時に、新たに設ける条件を書くとき、矛盾なく完結させようと、出題者は試行錯誤し工夫していると想像します。しかしながら、いざ試験を実施してみると、それを読み取る受験者に伝わりにくいところが、どうしても出てきてしまうのだろうと思います。

5.不条理 

 もともと相互に矛盾なく完結していた条件設定に、設置階の指定を外したりと試行錯誤の過程で部分的に手を加えていくと、全体としての完結さが若干崩れるところがあると思っています。
 出題者が要求したいことをただ書くのではなく、受験者がそれをどう解釈するかを想定し、工夫しながら書くことが重要だと思っていますが、ここに完璧を求めるのは、なかなか難しいところもあるように感じています。
 そして、受験者は、出題者が想定していなかった条件の解釈に悩まされる可能性があり、こういった解釈に悩まされることに時間を割かれることは、一級建築士の試験で問われることではないと思いますので、ここには不条理が残ります。


 令和元年再試験対策として実施した「模擬試験2」では設置する床レベルの指定はせず、各平面図への図示又は記入事項として、以下のように特記しました。当塾「pre設計製図通信講座」で問題を無料公開していますので、下記ホームページからアクセスし、参考にしてみて下さい。
 『設備計画に応じた設備スペース(3階の屋上に設けた場合は、その位置を3階平面図に点線で表示)』


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企業内一級建築士資格取得研修の23年間の実績。前提となる基礎知識を積み上げながら、⾃分がわかりたいところまで辿り着くことが理解。減点要素となり得る問題点のうち、回避すべきものと許容できるものを取捨選択していくことが判断。co-師(学びあう共育者)というスタンスで発信します。