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一級建築士設計製図試験において延焼ラインを図示すべき場合を読解

1.問題用紙と標準解答例からの抽出

以下、問題用紙の「留意事項」・「要求図面の特記事項」・「防火設備等の凡例」と「令和元年本試験標準解答例②」に記載されている「延焼ラインと防火設備」に関する内容を、それぞれ抽出してみます。

「留意事項」の記載内容

建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分には、所定の防火設備を適切に計画する。

「要求図面の特記事項」の記載内容

各平面図には、次のものを図示又は記入する。
建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び当該部分に設ける防火設備

「防火設備等の凡例」の記載内容

建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分が存在する場合においては、隣地境界線又は道路中心線から延焼のおそれのある部分までの距離(m)を記し、延焼ラインを破線で図示すること
また、建築物の外壁の開口部で、延焼のおそれのある部分の開口部に要求される所定の防火設備の種別を記入すること

「令和元年本試験標準解答例②」の記載内容

*この欄は、設計条件のうち「延焼のおそれのある部分」等の一つの考え方を示したものであり、今後の学習の参考として下さい。
本課題においては、東側の隣地境界線から、1階においては3m以下、2階及び3階にあっては5m以下の距離にある建築物の部分が該当し、外壁の開口部に所定の防火設備を設置する必要がある。この計画においては、1階は敷地境界線から3m以内に建築物の部分がないため、延焼ラインの図示を省略している。

2.二通りに解釈できる?

「留意事項」と「要求図面の特記事項」の記載内容によれば、「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分」には、「所定の防火設備」を適切に計画し、「延焼のおそれのある部分の位置」(以下「延焼ライン」とする)と「当該部分に設ける防火設備」を図示又は記入することが求められています。

「要求図面の特記事項」の記載内容のみを読めば、「延焼ライン」を図示し、「当該部分に設ける防火設備」を記入する必要があると読めます。延焼ラインの図示、防火設備の記入がそれぞれ独立して要求されていると解釈することもできるということです。

これとは別に「留意事項」で主として求めていることは、「所定の防火設備を適切に計画する」ことであり、付帯条件として「外壁の開口部で延焼のおそれのある部分」に限った要求であることになります。「外壁の開口部」「所定の防火設備」を設置する義務が生じた場合には、これに伴い「延焼ラインも図示して「延焼のおそれのある部分」であることを示す必要があると解釈することもできるということです。

さて、「延焼ラインは、敷地内にあるもの全てを図示する必要があるのか?「外壁の開口部」にかかるものだけを図示すればいいのか?その断定を、「留意事項」と「要求図面の特記事項」の記載内容のみからするのは少々無理がありそうです。

3.一歩踏み込んでくれている記載内容

令和2年の問題用紙に記載されている「防火設備等の凡例」では、『建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分が存在する場合においては、(中略)延焼ラインを破線で図示する』と記載されています。昨年まで『ある場合』とされていたものが、『存在する場合』と改められていることは付け加えておきます。

「ある~ある」といった日本語の重複をスマートに言い換えただけであるようにも思いますが、延焼ラインを図示するのは、建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分が存在する場合だけでよいと解釈することができます。

この解釈を裏づけるものとして、「令和元年本試験標準解答例②」に「今後の学習の参考」のために記載されている以下の内容があげられます。

標準解答例には、『この計画においては、1階は敷地境界線から3m以内に建築物の部分がないため、延焼ラインの図示を省略している。』と示されています。延焼のおそれのある部分に建築物の部分がない、つまり建築物の部分にかからない延焼ラインは省略してよいことを、今後の学習の参考のために示していると言えます。

4.以上を踏まえての読解

「延焼のおそれのある部分」についての考え方として、「建築物の部分にかからない延焼ラインは省略してよい」ということになると思われます。今後の学習の参考のために標準解答例に記載した以上、問題用紙の「留意事項」・「要求図面の特記事項」の記載内容を今後変更しない限り、敷地内にある全ての延焼ラインを図示すべきであるといった解釈変更を突然して、採点することはないと考えます。

以上を前提に問題用紙の「要求図面の特記事項」で図示又は記入を求めている『建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び当該部分に設ける防火設備』について、改めて読解してみると以下のようになると考えます。

(建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分には、)
建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)
及び
当該部分に設ける防火設備
を図示又は記入する。


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