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一級建築士学科試験|免許申請等に係る都道府県経由事務を廃止する建築士法改正

「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(第11次地方分権一括法)が令和3年8月26日から施行されています。

第11次一括法により建築士法が改められ、一級建築士の免許申請等に係る都道府県経由事務が廃止されました。学科試験においては、この改正内容は令和4年からの適用となります。

1.旧法第10条の3を削除した

建築士法の改正により、下記の規定(都道府県知事の経由)が削除されました。
これによって、一級建築士の免許申請等の他、国土交通大臣への住所等の届出(第5条の2第1項及び第2項)や建築士の死亡等の届出(第8条の2)をする場合においても、都道府県経由事務が廃止されることになっています。

(都道府県知事の経由) *現行法では削除
旧法第10条の3 一級建築士の免許及びその取消し並びに登録の訂正及び抹消、構造設計一級建築士証及び設備設計一級建築士証の交付並びに一級建築士免許証、構造設計一級建築士証及び設備設計一級建築士証の書換え交付、再交付及び返納に関する国土交通大臣への書類の提出並びに第5条の2第1項及び第2項並びに第8条の2の規定による国土交通大臣への届出は、住所地の都道府県知事を経由して行わなければならない。
2 一級建築士の免許申請書の返却並びに一級建築士免許証、構造設計一級建築士証及び設備設計一級建築士証の交付、書換え交付及び再交付に関する国土交通大臣の書類の交付は、住所地の都道府県知事を経由して行うものとする。

試験対策上は、都道府県経由事務が廃止されたことを知っておけばいいのですが、地方分権の一環であることを踏まえ、建築士法改正の背景にあることについて、以下に触れておきます。

2.改正前は受付窓口が異なっていた

法第10条の4により、一級建築士の登録等の事務や名簿を一般の閲覧に供する事務は「国土交通大臣の事務」になりますが、大臣は中央指定登録機関を指定することで、中央指定登録機関に「登録機関の事務」として行わせることができます。この点は、法改正前後で変わりのないところです。

そして現在、大臣が中央指定登録機関として指定した(公社)日本建築士会連合会が「登録機関の事務」を行っています。日本建築士会連合会は、各都道府県に設置されている建築士会で構成されていますので、申請・届出の受付窓口は各都道府県の建築士会になります。

今回改正されるまでは、旧法第10条の3により、住所等の届出や建築士の死亡等の届出など「指定外の事務」については、都道府県を経由して書類を提出することが義務づけられていました。

したがって、これまでは制度上、「登録機関の事務」「指定外の事務」とは、受付窓口が異なっていたことになります。

3.改正後は受付窓口を一本化した

下記の通り、R3.8.26国住指第1329号「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う建築士法の一部改正について(技術的助言)」によれば、「指定外の事務」の受付窓口が各都道府県の建築士会に設置されることになります。

これによって、「指定外の事務」とされていたものについても「登録機関の事務」と同様とし、申請・届出の受付窓口を制度上一本化することにしています。

今般の改正により、住所等の届出、死亡等の届出、免許の取消しの申請及び踪宣告の届出(以下「届出等」とする。)について、住所地の都道府県知事を経由しないこととされるが、申請者の利便等を考慮し、一級建築士登録等事務と同様に各都道府県の建築士会において、届出等の受付を行う窓口を設置する。(R3.8.26国住指第1329号より)

以上は、制度の運用上のことで、試験で出題される範囲から少し離れた話をしています。

4.改正前後で過去問の記述の正誤が逆転する

平成29年〔No.23〕 で、正しいものとして、以下の記述が出題されています。

一級建築士は、一級建築士免許証の交付の日から30日以内に、本籍、住所、氏名、生年月日、性別等を住所地の都道府県知事を経由して国土交通大臣に届け出なければならない。

法第5条の2第1項により、一級建築士は規則第8条第1項で定める事項を国土交通大臣に届け出なければならないとされ、旧法第10条の3第1項により、住所地の都道府県知事を経由することが義務づけられていましたので、改正前は正しい記述となります。

しかし、今回旧法第10条の3が削除され、都道府県経由事務が廃止されていますので、現行法(法第5条の2第1項・規則第8条第1項)に照らすと誤っている記述となり、正誤が逆転します。

現行法に照らして正しいものにするなら、以下のような記述に改めて出題する必要があります。

一級建築士は、一級建築士免許証の交付の日から30日以内に、本籍、住所、氏名、生年月日、性別等を国土交通大臣に届け出なければならない。

こういったことからも、最新版の法令集とそれに対応した問題等で学習していくことが試験対策上重要であると言えます。


*以下にある「webサポート資料室|法規分室」内に、本記事を含む複数の記事をまとめて掲載しています。


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