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一級建築士学科試験で学ぶ改正建築基準法による「防火床」という新たな選択

<見出し画像>出典:平成30年改正建築基準法・同施行令等の解説(国土交通省住宅局建築指導課 市街地建築課)

1.法第26条の改正と広がる設計の幅

建築基準法
(防火壁
第26条 延べ面積が1,000㎡を超える建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によつて有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内としなければならない。ただし、~この限りではない。

 従来、大規模建築物を対象に火災が急速度で建築物全体に及ばないようにするため、原則、1,000㎡以内ごとに「防火壁」の設置を義務付けていました。
 上記条文の通り、今回の法改正によって、「防火床」という選択肢を設けて、上下階を1,000㎡以内ごとに区画することでも、よいこととなりました。これによって、1階を鉄筋コンクリート造、2階を木造とする等の計画が可能となっています。また、防火壁が不要となることで、1フロアを広く計画することも可能になります。

2.防火壁・防火床の構造に求める性能

建築基準法施行令
(木造等の建築物の防火壁及び防火床)
第113条 防火壁及び防火床は、次に定める構造としなければならない。
一 耐火構造とすること。
二 通常の火災による当該防火壁又は防火床以外の建築物の部分の倒壊によつて生ずる応力が伝えられた場合に倒壊しないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
三 通常の火災時において、当該防火壁又は防火床で区画された部分(当該防火壁又は防火床の部分を除く。)から屋外に出た火炎による当該防火壁又は防火床で区画された他の部分(当該防火壁又は防火床の部分を除く。)への延焼を有効に防止できるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
四 防火壁に設ける開口部の幅及び高さ又は防火床に設ける開口部の幅及び長さは、それぞれ2.5m以下とし、かつ、これに特定防火設備で前条第18項第一号に規定する構造であるものを設けること。
2 前条第19項の規定は給水管、配電管その他の管が防火壁又は防火床を貫通する場合に、同条第20項の規定は換気、暖房又は冷房の設備の風道が防火壁又は防火床を貫通する場合について準用する。
3 ~

①自立性能
・火災による他の部分の倒壊によって倒壊しない
②延焼防止性能
・非損傷性、遮熱性、遮炎性を確保する
・屋外を経由して隣接区画や上階区画へ延焼しない
・開口部(区画貫通部を含む)には遮炎性を確保する

 令第113条では、上の通り、自立性能延焼防止性能防火壁防火床に求めています。

3.法改正による出題への影響

延べ面積が1,000㎡を超える木造の事務所は、原則として、防火上有効な構造の防火壁によって床面積の合計1,000㎡以内ごとに有効に区画しなければならない。

 上記は、平成9年の本試験問題の記述で、正しいものになります。旧法第26条においても、ただし書きによる適用除外がありましたので、例外もあることを踏まえ、問題の記述に「原則として」が必要になります。
 新法第26条に照らすと、防火床によって区画することも選択できるようになりましたので、「防火壁によって~区画しなければならない。」といった断言はできなくなっています。
 では、上の記述は誤りかと言えば、そうとも言えません。なぜなら、ここでも「原則として」が効いてきますので、防火床という選択もできるけど、原則、「防火壁によって~区画しなければならない。」と言えるからです。
 ただし、新法第26条に基づいて出題するなら、以下のようになるかと思います。「原則として」を残しているのは、旧法と同じく、ただし書きによる例外があることによります。

延べ面積が1,000㎡を超える木造の事務所は、原則として、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によって床面積の合計1,000㎡以内ごとに有効に区画しなければならない。 


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