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映画感想~マスカレードホテル~


■ホテルが舞台のミステリー


そこそこ話題になった映画だし名前は知っていたものの、特に興味もそそられなかったがこのタイミングで観てみることに。思いついた理由はずばりホテルを舞台にした作品だから笑

職業病とかではなく、今年自分が大阪から東京にやって来て仕事に対するモチベーションが高い状態なのでせっかくなら映画もホテルにまつわるものが観たいなっていうモードだったということ。もちろんメインはミステリーなので仕事の勉強になるとは思っていないけど単純に興味本位という感じ。

ちなみに東野圭吾の作品は小説中心で映画ではほとんど観たことがない。その小説にしても天邪鬼な性格ゆえ、有名どころからちょっと外した作品ばかり読んできた。ぱっと思いつくのは「パラレルワールドラブストーリー」とか「どちらかが彼女を殺した」とか「怪しい人々」。まぁ「手紙」とか「新参者」とかも読んだけど「ガリレオシリーズ」は読む気にならなかったなぁ。ドラマで人気絶頂だった世代なので妙な反抗心が芽生えていた笑
とまぁそんなことは置いといて映画の話へ。

■木村拓哉100%の刑事と熱血ホテリエ


粗暴だが優秀な刑事役の木村拓哉はやっぱりいつもの木村拓哉役を演じる木村拓哉だが、悪い意味じゃなくこれはもはや伝統芸というか、古典落語みたいな何が来るのか分かってるけど楽しんで観ちゃうみたいな領域だなと思う。役になりきるんじゃなく木村拓哉というジャンルを作り上げたから彼はカリスマなのであるって誰かが言ってたけどまさしくその通りだと思う。仮に木村拓哉がナヨナヨしたキャラとかやったとしても違和感しかないんだろうなと思ってしまう。まぁそれはそれで観てみたいけど。

ヒロイン枠の熱血ホテリエ役を長澤まさみが演じる。長澤まさみといえば個人的には映画の方のセカチューで初めて見て、ドラマのドラゴン桜で恋に落ちたなー。めっちゃ古いな・・・
同年代の方なので大人になったなぁと謎のしみじみ感とノスタルジーを感じる。

■ホテルで巻き起こる群像劇


話の大筋は木村拓哉演じる刑事の新田が連続殺人犯を追ってホテルに潜入捜査することになり、ホテルの仕事の指導役である長澤まさみ演じるホテリエ山岸と衝突しながらも事件に迫っていくという内容。

ミステリーというか連続殺人犯を捕まえるまでがストーリーラインではあるが犯人にまつわる話は全体の2割程度で、あとの8割はホテル内で起こる出来事の話が占める。山岸に指導される新田がホテルの宿泊客と関わるうちに、これまで仕事柄疑うことばかりだった人との関わり方から、人への信頼や感謝といった関わり方を知るという温かい話。読んだことはないが原作の方のマスカレードホテルもおそらく一話完結型の作品なのだろう。

■ハイパークレーマーと昭和のホテリエ

しかしまぁいかに連続殺人犯を追うためとはいえ、実際に何人もの刑事がホテルの現場に立ってホテルの仕事をするというのはリアリティに欠けるなとは思ってしまった。超短期雇用なのにその為にフロントの仕事とか覚えてるし。じゃあ全員清掃員と業者役でええやんって思うし。

そんなこと言うもの野暮だとは思いつつ、なによりも出てくるホテルの客がどれもこれもやば過ぎる。実際に現れたらホテルのスタッフ総出で辞表出すんちゃうかというレベルのハイパークレーマー達。こういう大型のホテルで働いたことないから分からんがこんな客いるのか?客室のアップグレード目的の為に延々と部屋に文句言い続けるやつとか現実にいるんか?

確かにホテルには稀に変な客が訪れるが、それにしても作中には考え得る限りの悪客を集めたクレーマー天下一武道会みたいなカオス状況が生まれている。スラム街にでもあるんかこのホテルは・・・

そんなモンスター達を相手に誠心誠意対応する真のホテリエが長澤まさみ演じる山岸である。彼女はその昔にホテルから最高のサービスをしてもらった経験からホテリエに憧れて働き始めたというキャラクター。まぁありがちな話ではある。

しかし、彼女は心底お客様に仕えることがホテリエとしての役割であると信じているようで、新田の「ルールを守らない客が悪いでしょ」という至極真っ当な言葉に「ここではお客様がルールなんです」という一昔前のモーレツ社員みたいな思想の返答をする。

一介のホテリエである自分からすると信じられない言葉というかなんというか、そりゃホテリエたるものお客様に喜んでなんぼの仕事ではあると思っているが、それにしてもお客様は神様的なある種カルト的な思考はホテル側も疲弊していいことないよってアドバイスしたくなる。

実際に一組のゲスト毎にめちゃくちゃ振り回されるホテルスタッフが描かれていて非常に非生産的な動きをしまくっている。ここの支配人は無能なのか?ちゃんとマネジメントせぇよ。

■ミステリーとしてのクオリティは・・・

とまぁ口が過ぎてしまったし、あくまで作品はミステリーと群像劇なので的外れな批評であることは重々承知しております。失礼しました。

とはいえ肝心の作品の内容に関しても、正直あんまりピンと来なかったというか、なんというか。前述の通りどうでもいいホテルのディティールに気を取られたからかもしれないが、犯人の狙いがあいまい過ぎるというか結局なにがしたかったのかがよく分からなかった。わざと犯行現場に暗号を残すのはそれぞれの事件を単独犯だと思わせる為というABC殺人事件的なノリだったが、なら最後の犯行に関しては別の場所を暗号に残しておけばよかったじゃないかと思う。なんなら別のホテルでよかったし。刑事が張り込んでいることを承知のうえで犯行に及ぼうとするのは間抜けすぎるし、刑事たちからすればご都合主義なことこのうえない。なのでミステリーの評価としてはイマイチという感じ。

■一ホテルマンにはいい影響


とはいえ色々言ったが自分には長澤まさみ演じる山岸のホテリエ魂には学べる部分があったとも感じている。とかくホテリエというのは夜勤もあるし休みは少ないし薄給だしで、ただでさえ疲弊しがちである。最初はお客様への接客に心血を注いでいたスタッフも気づけば裏で客の悪口が当たり前になっていたりということも珍しくない。そんなホテル業界だからこそ、この山岸のように極端にサービス志向の強いキャラクターを見ることで初心に返るきっかけになるだろうと思う。

このキャラクターを冷笑的に見るのは簡単である。映画の中の話だと一笑に付せばいい。しかし理想と言うのはいつも遥か高みにあるものだ。

ホテル業界は割とクローズドな業界でもあり著名なホテリエというのも少なく、メンターになるような人もなかなか見つからない。いっそのことこういう極端なキャラクターを理想とし一人のメンターとしてみるのもいいかもしれない。今後のホテル業界、すべてのホテリエに幸あれ。

あれ?なんの話してたんだっけ?

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