見出し画像

WRA8-1 #atarimaenicup決勝 法政大学-東海大学(川俣秀主審)

Jリーグ内定者も数多く出場し、大学サッカー日本一を決める大会#atarimaenicup決勝 法政大学(関東1部)対東海大学(神奈川県1部)の試合を分析します。主審はJ2主審の川俣秀さん、副審1はJ2副審塚田健太さん、副審2もJ2副審金次雄之介さん、第4の審判員はJ3主審長峯滉希さんでした。(カテゴリーは2020年度の物です。)

公式記録

画像をクリックするとJFAのサイトにジャンプします

画像1

両チームの特徴

法政大学はビルドアップをゴールキーパーも含めて行う、ポジショナルプレーを志向するチームでした。一方東海大学はFWからそのビルドアップを非常に一生懸命チェイスし、攻撃を受けた際は割り切ってクリアをするチームでした。

審判目線だと、法政大学が支配する時間が長いゲームで、法制のボール保持時は非常にポジションを取りやすい反面、プレッシングを東海大学がかけた際には「ボール奪取の可能性」に気を付けなければならないという印象です。

その両チームの状況を念頭にポジショニングを見たいと思います。

川俣主審のポジショニング

スライド1

前半はほとんど法政のボール保持だったので、その際の川俣主審のポジショニングに着目したいと思います。

この画像は7:21の段階で画面に映っていた選手・川俣主審を図示したものです。

東海大学はFWのハイプレスが特徴ですが、プレスとしては2種類あると思います。①ボールを奪うためのプレス・②ボールホルダーを制限して、守りやすくするプレスの2つです。

このシーンではFW1人でのプレッシャーで、②ボールホルダーを制限して、守りやすくするプレスをしていたといえます。そして、法政の選手が奪われる雰囲気はありませんでした。

そのことから川俣主審は東海が作る2つのブロックラインの中間にポジションをとっています。ポジショニング類型論でも紹介したポゼッションサッカーへの対処法の基本的な部分です。

このポジションをとることで、法政の選手たちが最終的に狙う地点であるゴール付近の判定を余力をもって判定することができます。このシーンの5秒後には前線にボールが入り、その判定を川俣主審は余裕をもって監視できています。

基本的な部分ですが、しっかり学んでいきたい部分です。

また、川俣主審は余力を持ってはいることが多かったため、バイタルエリアでゆったりとした前向きの姿勢でいることが多かったです。この姿勢を取っておくことで、展開が変わった時に修正はフロントステップで行えるので、非常に楽で、判定のエラーの確率を落とすことができます。

大事なところは心拍数を落とすのが大切です。

気になったシーン

1:35 ハンドかどうか

法政9平山駿選手(J2北九州内定)がサイドに浮き球でパスしようとしたボールが、東海15堤太陽選手の手に当たりました。

距離は1m無いくらいだったので、この時ハンドになるかどうかで考慮すべき問題は「手や腕を用いて体を不自然に大きく見せようとしているか」です。

体側にしっかりつけられているわけではなく、空間としては10㎝~20㎝程度腕や手が身体から離れています。これを大きく見せようとするための動きとみるかは正直審判によるかと思います。

ハンドを取らなかった川俣主審の判断は十分に尊重できます。ただ、私だったら取る様な気もします。そういうグレーな判定にあふれているのがサッカーです。

9:22からの2連続ノーファウル判定

9:22では、東海陣内PA外左から法政の選手がドリブルをしようとしたところ、東海の2人にぶつかるような形で倒れました。このシーンに関しては、ボールコントロールが大きすぎたところにぶつかって倒れに行ったようにみえるため、ノーファウル判定は妥当に思えます。

そのボールを拾った東海DFがクリアしたボールが東海FW23鈴木朝日選手と法政DF13城和隼颯選手(J2群馬内定)両者がチャレンジしやすいポイントに落ち、手がかかったように見える倒れ方をしました。しかし、川俣主審は笛を吹かなかったです。

後者のシーンに関しては、取るレフェリーもいるかと思いますが、私も採らない判定をすると思います。なぜなら、接触が微小だからです。押さえるような動きがあった訳でもないですし、不用意に押す強度でもなかったのでノーファウル判定は十分に妥当です。

また、副審2の金次雄之介さんが目の前でしっかり見ていましたし、川俣主審も50mほどを素早く移動して良い位置で監視していました。それも含めて尊重すべきです。

解説の松木安太郎さんは騒いでいましたが、解説なのだからなぜ反則になるのかという部分まで説明してもらいたいものです。

12:57 PK or ノーファウル

東海FW23鈴木朝日選手と法政DF13城和隼颯選手の接触です。後方からのロングボールがすらされたボールを胸トラップしようとした鈴木選手に後方から城和選手が接触し倒れました。

このシーン観点は「不用意以上のレベル」にあるかどうかです。反則とする場合チャージもしくはプッシュになるかと思いますが、この接触自体が軽微で取るに足らないフットボールコンタクトだと考えるレフェリーは取らないですし、不用意だと考えるレフェリーは取るというシーンです。

もう少し城和選手は配慮した方がいいとは思いますが、私もノーファウルにすると思います。川俣主審も15mほどの最適な距離かつ角度もいい角度で判定をしており、素晴らしい対応力だと思います。

もちろん取る人がいてもいいとは思いますが、私はこの判定を尊重すべきだと思います。先ほどのノーファウルとも整合性が取れていますし、この程度の接触では取らないという基準付けの見える判定でした。

もう一人の解説の名波浩さんも「怪しい」ではなく、なにがどうしてファウルなのかノーファウルなのか解説してほしいものです。もちろん競技規則に則ってくださるのが一番判定を議論する上では正しいとは思いますが、そうでなくても選手・監督時代の経験に則って、客観的にお話しいただけることを願います。

24:39 ハンドでPK or ノーハン

法政23関口正大選手(J2甲府内定)のクロスが 東海3面矢行斗選手(J2栃木内定)の手に当たるシーンです。

このシーン、当たった手の位置は胴体の範囲内にあり、胴体にくっついていました。このことから不自然に体を大きくしていることは全くないですし、ボールが非常に近くから当たったことからもノーハンドが妥当です。

関口選手はハンドをアピールしますが、おそらく川俣主審もコミュニケーションを取って、手に当たったのは見えているけどハンドの反則ではないことを伝えたのだと思います。そのことで落ち着いて次のプレーに移っていきました。このマネジメントは選手がサッカーに集中する上で、非常に大切なものだったと思い、学びたい部分です。

また、CKになった際に法政の選手がゴールエリア内に固まっていたので、ブロックに対する注意を入れていました。適切なタイミングでのマネジメントだったと思います。

45+0:07 コーナーキックやらせるべきか否か

アディショナルタイムの表示が1分で、アディショナルタイム1:07にボールが外に出ましたが、そのコーナーキックを川俣主審は認めず、前半終了のホイッスルを吹きました。

これは競技規則に一切書かれていないことですし、続けるか続けないかは主審のサッカー観や「競技規則の精神」の理解の問題です。

その上で、私はコーナーキックをさせるべきだったと思います。なぜなら、まだ目安の1分台に入ってから7秒しかたっていなかったし、ゴールに近いシチュエーションこそサッカーの魅力だと思うからです。

まず前提として、アディショナルタイムを第4の審判員が1分と表示したとき、アディショナルタイムは最低「1:00~1:59」の間だと示しています。

1分台に入ったらすぐ吹くのだと思っている方もいますが、それは違います。そして、仮にアディショナルタイム中にプレーを停止すべき事柄が起こった場合には、笛を吹くまでに1:59を超える可能性もあります。(その計算を間違えると2018清水対神戸の試合みたいになってしまいます。)

アディショナルタイムを表示より短くするのは禁じられていますが、長くすることは認められています。

実際1:07以上アディショナルタイムとして追加可能な時間はありましたので、いわゆるラストプレーとしてコーナーキックを1度認めるべきだったと思います。

競技規則の上の話はいったん置いといて、個人的にサッカーはゴールこそ魅力だと感じています。そのゴールを巡る攻防こそ魅力ですので、その魅力の一つであり、東海大の武器でもあったセットプレーを認めるべきだと個人的に考えます。

これに関して答えは一切ありません。是非皆さまの意見をお聞かせください!

まとめ

非常に際どい難しいシーンが多くある前半でしたが、非常に良いポジションから正しい判定を重ねていて非常に勉強になりました。

ポジショニングに関しても、基本に忠実にポゼッションサッカーには先取りを行い、ロングボールには角度を修正することを念頭に置いたダイアゴナルランを素早く行い、最適に近いポジションから監視していました。

非常に勉強にになる前半だったと感じます。

本日もお読みいただき、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。




もしよろしけれサポートいただけると幸いです いただいたサポートは、自身の審判活動の用具購入に使わせていただきます。