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WRA#2-3 「池内主審の高い走力」 J1第32節名古屋-横浜FC(池内明彦主審)30分-45分

目次に重要度を星で示しています。お忙しい方は星の多い物のみ読んでみてください。

この試合はTwitterのアンケートで分析試合を決定しました。ご協力いただいたみなさんありがとうございました!(試合開始前にアンケートをしたときはまさかこんな話題性のある試合になるとは思っていませんでした…)

明治安田生命J1リーグ 第32節
名古屋グランパス 0-0 横浜FC
審判団 主審 池内 明彦 副審1 山内 宏志 副審2 村井 良輔 第4の審判員 植田 文平

警告 横浜FC 手塚 康平(90'+3)
退場 名古屋  ガブリエル シャビエル(82')

シュート数    名古屋  13-9 横浜FC
コーナーキック数 名古屋  3-5   横浜FC
フリーキック数  名古屋  15-8 横浜FC
(J. League Data Siteより作成 https://data.j-league.or.jp/SFMS02/?match_card_id=24171)

ここまでの展開

前半15分までは際どいタッチジャッジをはじめとする審判団にとって難しいシーンが多くあった。その後の15分にはイエローカードかどうか際どいシーンがあった。レフェリー的にはあまり落ち着いた感じがなかったが、試合はあまり両チームチャンスをつくることができていない中で、前半最後の15分試合が動きやすいといえるが、どのような展開がなされるか注目である。

★ 30:34 タッチジャッジ(ゴールキック)

左サイドから横浜FC23斉藤光毅選手がペナルティーエリア内に侵入しようとしたところ名古屋15稲垣祥選手の股を抜いていった。股を抜いた際に斉藤光毅選手は稲垣選手の足に当たったとしてマイボールを主張したが、判定はゴールキック。この判定は妥当だと思われる。

★ 31:57 ファウル 横浜FC15 齋藤 功佑⇒名古屋15 稲垣 祥

横浜FC陣内右サイドで密集した中でボールを持った名古屋15稲垣祥選手に後ろからチャレンジした横浜FC15齋藤功佑選手が後ろからつまずかせてしまい、不用意なトリッピングで反則。判定は妥当。

ちなみに、33:06からの横浜FCの攻撃に対しての池内主審のポジショニングは繰り返し言っている「縦」が先に来る動き方であった。

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36:40ごろに何かが起こり、「プレーオン」と池内主審が声掛けしているよう聞こえるが、リプレイで全く何も見えなかった。

★ 38:16 アドバンテージ  名古屋11 阿部 浩之⇒横浜FC30 手塚 康平

名古屋がペナルティーエリア付近まで攻めている中で、パスを受けた名古屋11阿部浩之選手のトラップ際を狙っていた横浜FC30手塚康平選手がボールを奪う。その際接触があり、トリッピングで反則を取ったと思われる。その後、奪ったボールが横浜FC23斉藤光毅選手につながったためアドバンテージ。素早い攻撃につながったので、アドバンテージ自体は妥当。

ただ、この接触自体に反則があったかは議論が分かれると考える。手塚選手が後ろからボールをとるために阿部選手に向かって走っていき、その結果起こった接触なので、反則ではなくても良かったように思える。私は、試合中普通のファウルをとらない軽微な接触でもつながったからアドバンテージをかけてしまう「なんちゃってアドバンテージ」をしてしまうことがあるので、しっかり反則の見極めはしたうえで、アドバンテージをかけると意識したいと思ったシーンだった。

★★ 39:12 障害物への対応

この日のパロマ瑞穂スタジアムは、強風が吹いており、39:00ごろからピッチ脇に紙袋のようなものが数個散乱していることが見えた。池内主審は横浜FCのゴールキックになったタイミングで試合を停止し、副審2の村井良輔さんやスタッフ・ボールボーイと協力して、ピッチ脇の物を排除する作業をした。

仮にプレーを妨害するとドロップボールになるシーンなので、早いタイミングで対応できたことは基本的ながら、非常に大切である。そして、作業をしてくれたスタッフに対して、丁寧にお願いをし、終わった後サムアップする姿勢はすばらしかったと思う。コーナーキックの際にボトルがピッチわきすぐにあったシーンでもプレーを停止し、横浜FC44六反勇治選手にお願いして、ボトルを排除するなどしっかりとピッチ内の安全を確保しようとし、不確定要素をなくすことは学ばなければならない姿勢だと感じた。

★ 41:20 ファウル 横浜FC3 マギーニョ⇒名古屋27 相馬 勇紀

自陣でボールをインターセプトした名古屋3丸山祐市選手のパスを受けた27相馬勇紀選手に対してチャレンジした横浜FC3マギーニョ選手が後ろから軽くける形になり、不用意なキッキングで反則。至極妥当な判定。

★★★ 池内主審の高い走力とカウンターへの対応

この時間帯両チームボールが落ち着かず、ピッチを行き来する展開となったが、池内主審は非常に高い走力を見せ、近い位置での判定を続けていた。選手はDFやFWなど役割が分かれているが、主審はカウンターのとき近くで判定するために時には100m近い距離をスプリントする必要もある。誤審にばかり目が行ってしまうが、このような地道な積み重ねや努力といった部分にも目を当ててみてほしい。

★ 44:12 アドバンテージ 名古屋2 米本 拓司⇒横浜FC15 齋藤 功佑

横浜FC陣内深めの位置でパスを受けた後にターンしようとした横浜FC15齋藤功佑選手を名古屋2米本拓司選手が不用意に蹴ってしまい、齋藤功佑選手が軽くバランスを崩すがパスが味方につながったため、アドバンテージ。妥当なアドバンテージ。

その後、攻撃に加わるために前線に向かっている齋藤功佑選手に対し、池内主審は軽く大丈夫か確認をするコミュニケーション。よいマネジメントだったと思い、勉強になった。

45分終了 アディショナルタイムの表示は2分

★★【抗議の種類】 45:23 タッチジャッジ (ゴールキック)

右サイドからの横浜FCのコーナーキックが逆サイドまで抜けたところを横浜FC14志知孝明選手がシュート。シュートは浮いてしまい、だれも触っていないためゴールキックが妥当。シュートした当人の志知選手は何も言っていないのになぜか周りの選手は抗議していた。

私は、抗議には大きく分けて2種類あると考えている。ひとつは、「レフェリーを試すもの」。もうひとつは、「本当に間違えていて抗議してくるもの」である。やはり、その2種類の真剣度は違い、レフェリーもその違いを分かっている。このような本人が何も言わないときは、本人の見えていないところで抗議すべきことが起こった以外、前者のことが多いと感じる。

抗議を受けて判定を変えることはできないレフェリーにとって、後者の場合ミスをしたことが、すぐにわかる。その後引きずるようなことはあってはならないが、申し訳なさはすぐにわいてくる。それでも判定を突き通さなければいけない場合もあれば、周りの審判のおかげで正しい判定に修正できる場合もある。そして、その後の態度としても、重要な判定の場合は、選手を突き放して、厳しい態度を見せるべきシーンもあれば、正直に謝ることができるシーンもある。私は、本来間違いに対しては、謝るべきだとは思うが、謝っては試合が収まらなくなることもある。そのような狭間で、いつも葛藤しているのが審判なのであると理解してもらえると嬉しい。

あと、余談だが抗議していた横浜FC3マギーニョ選手が「caralho」といっているのが聞こえる。意味は英語のfワードと同じであるが、主審に対して面と向かって言った場合相当まずいことになる。ただ、日本語の「クソ」と同じような意味で、自分のミスにも使ったりするし、面と向かってではなければ「なんで!」みたいな意味にも解釈できる。主審が分からない言語だからといってこのようなことばを仮に面と向かって言っていたとすると、感心できない。

【前半の振り返り】

池内明彦主審について

前半最後の15分に関しては、試合が落ち着き、コントロールされた状態で試合が進んでいた。様々なシーンがあったが、池内主審のストロングポイントとして縦へのスピードがあると感じる。そのストロングポイントを生かしたポジショニングが「縦⇒横」のポジショニングであると感じる。ポジショニングは一長一短であることは、前回も繰り返し述べてきた。前半に関しては縦へのスピードが生かされるシーンもあった。

一方、判定面では白か黒かはっきりとしないグレーゾーンの判定が多くあり、難しいシーンが多くあった。その部分で少し不満を持っている選手もいると見受けられるので、しっかりとコントロールすることが後半大切になってくる。

他の審判団について

副審1 山内宏志さん

オフサイド判定に関しては難しいシーンもなく、タッチジャッジに関しても池内明彦主審とコミュニケーションを取って、判定を行っていた。前半冒頭のシーンに関しては、山内さんからラストタッチを見極めるのは困難である。

副審2 村井良輔さん

何より素晴らしいと感じたのが、村井さんのシグナルのきれいさであった。指す際のキレや腕の伸びがとても美しく、見栄えがとても重要な副審の鏡のようなスタイルだった。オフサイド判定もオフサイドポジションへのウェイトアンドシーはお手本のようなものが1回あり、難しいシーンはなかった。タッチジャッジに関しても、きわどいものをしっかりと丁寧に判定し、ミスがなかった。

第4の審判員 植田文平さん 

第4の審判員にとって重要な無風状態で、すべき任務を的確にこなしていた。

後半への見通し

前半難しい判定が多かったので、後半も丁寧なジャッジをすることが求められる。また、少しストレスを抱えている選手もいるようなので、その選手がファウルを受けたときの対応は気を付けたい。

この試合を分析したシリーズ

#2-0 速報編(話題となったシーンの分析)

#2-1 0-15分

#2-2 15-30分

過去のWRAシリーズ(マガジンでまとめてます)

この試合のハイライト




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