読書感想文(246)町田そのこ『宙ごはん』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は本屋大賞ノミネート作品、これで7冊目です。
町田そのこさんの作品は初めて読みました。

感想

「普通」ではない家族のお話で、正直に言うと「またか……」という気持ちがありました。
でもこの物語は優しくて、心が痛みつつも最後には少し心が和むお話でした。
作者はきっと優しい人なんだろうな、と思いました。
一方で、やっぱり綺麗過ぎるんじゃないか、とも思いました。過去を水に流すといっても、ここまで綺麗に流せるものなのかな、と。「人って変わるもんだよね」と言って、その人の現在の姿だけを見るのも、また短絡的なように思えました。罪の償いは将来を捧げることによって行なわれる面も、現実的にはあるように思います。でも、こういう綺麗な展開も現実に有り得るんだ、ということを描いているのかもしれません。その役割が、遠宮くんの存在だと思います。

家族(特に子供)が同じ罪を背負うべきではない、というのは同意します。この点、物語の終盤で主人公の宙の内心が「でも、どうしてできるの、と思う。いくらやっちゃんがひとを助けるひとだったとしても、そのやっちゃんを殺めたひとの、家族だ。」(P333)と描かれることに強く違和感を持ちました。これはカノさんの考えを際立たせる為なのだと思うのですが、宙がそんなことを思うのかな?自分自身もカノさんの過去で被害を受けたことがあるのに?と思いました。

この作品の中で最も心に留めたいと思ったのは、「瞬間的に救われる答えなどない」(P307)ということです。
最近は時代の流れが目まぐるしいこともあってか、早く結果を求める傾向があるように思います。求めるからこそ実現できることもあると思いますが、経験や時間は買えないということは心に留めて置きたいです。

また、「家族としての責任」と、望む親の像は分けて考えるという家族観には納得しました。「こんな親だったらいいのに」と勝手に期待するから失望してしまいます。勿論、「こんな子どもだったらいいのに」も同様です。家族としての責任は果たす、その後はそれぞれの人間である、という考え方はとても腑に落ちました。せっかく一緒にいる時間長いなら、仲が良い方がいいよなとは思います。
この辺り、個人の尊重と利他的な考え方をどのように両立するか、もっと深く考えたいと思いました。

この作品は五話構成になっていますが、間に沢山の物語があるように思われました。例えば、第五話で宙が読書好きだと初めて知ったのですが、ここまでそんな描写は無かったような気がします(見逃しているだけかもしれませんが)。
そういった所から、各話が飛び飛びになっている印象を持ちました。
なので、欲を言えば一冊にまとめず、間の物語も読みたかったなと思います。

最後に、タイトルにもある通り、「ごはん」が物語の中で大きな役割を持ちます。
「こんな時でもお腹は空くんだ」というのは、どの小説のフレーズだったでしょうか?吉本ばなな『キッチン』だったか、凪良ゆう『流浪の月』だったか……。
ともかく、心を満たす手段として、料理はとても大きな力を持っていると思います。
この本を読んで、料理ができるようになれば、誰かを少しでも多く幸せにできるんだろうなと改めて思いました。
少しずつ、料理を頑張っていきたいです。

おわりに

町田そのこさんの本は初めて読みましたが、優しい物語だなと思いました。
『52ヘルツのクジラたち』も気になるので、いつか読みたいと思いました。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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