読書感想文(158)小林真大『詩のトリセツ』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回読んだ本はずっと気になっていた『詩のトリセツ』です。
以前何かのシンポジウムで著者が紹介しており、存在を知りました。

感想

現代詩というと、本をよく読む人にさえも敬遠されがちな印象があります。
かくいう私も現代詩って何なのかよくわからないと思っていました。
ただ、同じくよくわからないと思っていた現代アートについては、大学で少し学んだおかげでほんの少し理解できるように、或いは理解しようとするようになりました。
なので、現代詩も同じく、ある程度学べば楽しむ糸口を見つけられるのではないかと思い、この本を手に取りました。
実際、この本を読み終えた今、この本を参照しながらであれば、詩の分析をある程度できるような気がします。
そしてそういったことを繰り返すうちに、自然と鑑賞ができるようになり、気負いなく楽しむことができるようになっていくのではないかと思います。

印象に残ったものはいくつもあるのですが、そのうち特に印象に残ったものや覚えておきたいものをnoteに残しておこうと思います。

まず鑑賞法で一番印象に残ったのは、音の話です。
以前俵万智さんの本をいくつか読んだのですが、その中でも触れられていたことで、自分の短歌観に影響を与えていたことです。
俵万智さんの「サラダ記念日」は「七月」「サラダ」とS音が重ねられていることで爽やかさというか、軽やかさが表現されています。
このようなことが他の音も含めてまとめられていました。
まず母音は次の通り。

音の聞こえ具合
(集)a > e,o > u,i(拡)

音の高低
(鈍)u < e < a < o < i

P31

次に子音の場合。

p:張りつめた音で、軽く、小さい
b:表面が張っているが、重く、大きい
t:緊張していない。叩く音、軽い、小さい
d:緊張していないが、重く、大きい
k:硬い、深い、軽い、小さい
g:硬い、重い、大きい
s:なめらか、軽い、小さい
z:なめらか、重い、大きい
h:空気が流れる、息のイメージ
m:曖昧なイメージ

P34

これを知っているだけでも、少し詩の捉え方が変わるのではないかと思いました。ただ、あくまでも詩自身を読むことが大切で、この基準を前提として、そこに重きを置いて鑑賞するのは少し違うのかな、とも思いました。

また、詩がよくわからない理由として、普通の文章と違って論理的に進まないことが挙げられていました。そして詩はイメージを重ねていくように進んでいくようです。
このことを意識するだけでも、頭の中の「?」が幾分か減るように思います。

具体例として詩がいくつか挙げられていましたが、一番印象に残ったのは吉原幸子『無題(ナンセンス)』です。
解説の前から「なんとなくいいな」と感じましたが、批評実践を読んで尚更良いなと思いました。自己の存在・不在というテーマは、和泉式部の歌にもいくらか見られたように思います。もしかすると、私はそういった主題に惹かれるのかもしれません。
あとは中原中也や萩原朔太郎の詩もいいなと思ったので、他にも読んでみたくなりました。

おわりに

現代詩というよくわからなかったものが少しわかったような気がするので、読んでよかったです。
ただ、わかるようになったことが嬉しいのは、「わかる」ことに囚われているということでもあるなぁと思いました。
わからなくても、良いと思える素直な心も持っていたいです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


この記事が参加している募集

#読書感想文

190,092件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?