読書感想文(92)司馬遼太郎『燃えよ剣 下』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は、『燃えよ剣』の完結編です。

感想

上巻の後半から少しずつ終わりを感じさせるような雰囲気、そして近藤勇との関係が変わっていくような雰囲気がありました。

今作で最も印象に残ったのは、土方歳三の信念を貫く姿でした。
官軍か賊軍かなどは関係ない。勝つか負けるかなど論外。ただ忠義を尽くし戦うのみ。
今の世の中、時代の流れに乗ろうとする風潮が大いにあります。それ自体は個人が好きにすれば良いと思うのですが、自分の確固たる信念を貫くというのは、最近触れることのない気概だと思いました。
私は過去恋愛論において、「例え世界中の全てを敵に回しても、愛する人の味方である」という哲学を考えたことがあります。しかし勿論全世界が敵に回ることなんて現実にはありませんから、あくまでも理論上の哲学に過ぎませんでした。
しかし、恋愛ではないものの、ここにあった、というのがこの作品で最も強く感じたことです。世の中が倒幕に染まっていく中、例え全国が敵になっても、或いは甲鉄艦のことを考えれば外国も敵に回っていたとしても、それでも忠義を尽くす男たること。これを生涯全うした土方歳三には敬服せざるを得ません。
新選組は人殺し集団というイメージが強く、確かにその点においては現代に生きる私も賛同しかねます。
しかしそのような具体的なことを一旦置いておき、世の中に流されずに忠義を尽くしたところに私は深く尊敬の念を抱きます。

他に印象に残ったのは、斎藤一の再登場でした。
新選組がどんどん縮小し、どんどん形勢が悪くなるところで斎藤一が帰ってきたところでは感動しました。
最後に土方歳三が斎藤一をお雪と一緒に逃したのは、らしくもないと思ったのですが、実はこれはフィクションだったようです。実際は函館にも行っていないし、お雪も実在しないとのこと。これは読み終わった後に知ったのですが、驚きました笑。歴史小説は読み慣れないので、こういったところに気をつけたいです。ちなみに今作でかなり目立っていた七里研ノ助も架空の人物だそうです。

お雪については、以下の場面がいいなと思いました。

お雪も歳三もすっかり板につき、ちょっとしたことでも、同じときに、
「…………」
と、微笑しあえるようになった。同時に笑えるというのは、二つの感覚が相寄ってついに似通ってしまわなければ、そうはいかないであろう。

これ、すごくわかるなぁと思いました。
自分の恋愛観に何か引っかかったので、残しておこうと思います笑。

おわりに

上下巻とあり、少し長い小説でしたが、面白かったです。
明後日、映画を観に行く予定なので、どこがどんな風に描かれるのか楽しみです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

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