読書感想文(59)星新一『ボッコちゃん』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

実は今回、今年ちょうど100冊目になります。
100冊本を読むというのは今年の目標の一つだったので、達成できて嬉しいです。第2目標の150冊も達成できそうなので、この調子で読書を続けていきたいと思います。
読書って楽しいんですけど、気を抜くと読まずに何日も経ってしまうんですよね……笑。

さて、そんな記念すべき100冊目に選んだのは星新一『ボッコちゃん』(新潮文庫)です。
有名かつ小学生の頃によく読んだ思い出深い作品ということで、これほど適した作品はないだろうと思います。
小学生の頃は文庫ではない別のシリーズで読んだ記憶があります。今回読みながら、小学生じゃこんなに漢字読めないよなと思いました。

と、「はじめに」 が長くなりそうなので早めに「感想」に移ります。

感想

やっぱり面白かったです。
星新一のショートショートは大人も子どもも楽しめる良い作品だなと思います。

私は小学生の頃に星新一のショートショートをたくさん読みました。
そしてその影響をたくさん受けていることを実感します。
自分で認めている自分の数少ない長所の一つが発想力なのですが、恐らく星新一のショートショートで多様な発想に幼い頃から触れられたことがとても大きいです。

ショートショートの面白さの一つが視点の転換だと思います。
便利になった世の中の負の側面にフォーカスしたり、悪いことをしようとした人が結果的に役に立ったり……。
多様なものの見方というのは私が小学生の頃から意識していることですが、その力を養ってくれたのだろうなぁと思います。

実は今回星新一のショートショートを読もうと思ったきっかけの一つが、最近多様なものの見方ができていない気がすると思ったことです。
大学生になってから徐々に自分が面白くなくなっているような気がしていて、その原因の一つが読書不足ではないかと思い、読書をするようになりました。
面白くないという点をもう少し具体的にいうと、発想力の衰退、もっといえば当意即妙な受け答えが減ったという感じです。頭の柔らかさといっても良いかもしれません。
何か一つのこと(例えば私の場合は大学で専攻していた文学)を集中してやっていると、その影響を強く受けて思考がそれに適応していきます。それはそれで良いこともあるのですが、別の考え方に切り替えられないのは困ると思っています。
小説というのは他人の考えに触れることができるので、それを自分なりに考えることが多様なものの見方を育てるのです。
そう思って小説を読み始めたのですが、しばらくしてすぐに「これはそのうち星新一のショートショートも読み返さないといけないな」と思っていました。というか、書店の本棚で見かけた時に「あれ、なんでうちの本棚に星新一のショートショートが一冊もないんやろ」と思いました。小学生の頃は学校の図書室で借りていたので。

と、まあ思い出話はこのくらいにして、本の内容の話を書こうと思います。
50篇あるので全部について書くことはできませんが、いくつか印象に残ったものについて書きます。

まず本のタイトルにもなっている「ボッコちゃん」です。
これは小学生の時にも読んだ記憶があります。「もっとも、少しつんとしていた。だが、つんとしていることは、美人の条件なのだった。」というフレーズはよく覚えていました。
しかし、オチを全く覚えていませんでした。「こんなオチだったっけ??思ったより怖いな!?」と思いました。
もしかすると小学生の頃はきちんと理解できていなかったのかもしれません。面白いなぁと思って夢中になって読んではいたんですけど笑。

「ゆきとどいた生活」は、読み始めてすぐに「これはもしかしてこういうオチなのでは……」と思いました。そして全くその通りでした。
この先どうなるのか当てようとするのは、シャーロック・ホームズシリーズを読む時によくやっていたので、その思考が少し身についたのかもしれません。

しかし「雄大な計画」では予想と異なるオチでした。推理小説ではないので確実に当てられるものではないのでしょうが、少し悔しかったです笑。
でも逆に、星新一とは異なる独自の発想ができたと思っておきます。

現在の星新一を少しでも理解しようとするなら、彼がその巨大な頭脳の中に記憶し納めている対立概念のアイデア、視点のアイデア、プロットのアイデア、ギャグのアイデア、ナンセンスのアイデアなどの、それぞれ数十、数百に及ぶパターンのせめて十分の一なりと知っていなければならない。
(中略)
よく言われる酒席における星新一の軽妙な馬鹿話も、これら厖大な量の知識の不断のせめぎ合いから起る噴出物であって、少なくともぼくにはそれらのものが単に口をついて出ただけの洒落や地口やことば遊びではないといいきれるだけの自負がある。仮にそれが洒落、地口、ことば遊びであったにしろ、それは他人に真似ることのできない新しいパターンの組み合せによる感覚である。

これは「解説」の引用です。いかに星新一がすごいのかということが伝わってきます。
これを読むと「すみません全然星新一のことを理解できていないんだということがよくわかりました」と思ってしまいます。しかし星新一のことは理解できなくても、ショートショートはとても面白いし楽しむことができます。
「他人に真似ることのできない新しいパターン」に触れることができるのだから、そりゃ面白いでしょう。
この「解説」が言っているのは、それが「他人に真似ることのできない新しいパターン」であることを理解するのが難しいということだと思います。

今はただ面白いなぁと思っているだけですが、これから色んな知識や考え方を身につけていけば、どんどん星新一の偉大さがわかってくるのかもしれません。
そう思うと、これからも楽しみです。
将来子どもができたら是非読んでほしいなとも思いますが、新潮文庫版だと漢字が難しいかなとも思います。
読み聞かせをするか、別のシリーズを買うかですね。それはまたその時に考えようと思います。

おわりに

久しぶりに読んでみるとやっぱり面白かったです。
反面、1冊読み切るのにかなり時間がかかりました。これは短編ゆえに続きを早く読みたいという気持ちが起こりにくかったためだと思います。
ショートショートは他の本と同時並行で読んで、1日2〜3話ずつ読むようにしても良いかもしれません。

というわけで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

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