読書感想文(152)宿野かほる『ルビンの壺が割れた』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

この本はよく本屋さんで平積みされていたので、結構前から知っていました。
先日オススメしてもらったことをきっかけに読んでみました。

また、この本の感想はネタバレを避けることができないと思うので、気になる方はご注意下さい。というより、短い上に読みやすいので是非まず読んでみてください。なかなか衝撃的です。

感想

さて、どこから書き始めたものか……と困っています。
巻末付記に書かれていた通り、読み終えて呆然としてしまっています。
最後のページの最後の一文は、本当にインパクトがありました。全然関係ないですが、『鬼滅の刃』の胡蝶しのぶさんを思い出しました。

結末を知った上でもう一度読み返そうかとも思ったのですが、もう夜遅いので諦めてパラパラと捲り直しました。
伏線は初読の時からいくつか気づいていたというか、色んな部分に違和感を持っていたのですが、読み終えてから納得しました。

演劇部という所から騙し合いのようなものは想定していたのですが、メッセージのやりとりの形を取った書簡体小説なので余計に真意がわかりづらく、というより解釈の幅が広く、色んな人と話し合ってみたい作品です。
例えば最後に女性の方が新聞記者に話したと告白しますが、途中で態度が急に柔らかくなるのは相手から話を引き出すためなのだろうか、などなど。
男性側の言い訳をするような、というか自分に都合の良い解釈をしたような物言いも、結末を知った今ではなるほどなぁと思います。

また、女性は自分がソープで働いていたことを男性が知っていて、その上で何も言わずに付き合っていたことを気味悪がっています。しかしこれも男性の立場になると、自分も後ろめたいことをしているからこそ相手に対する許容範囲が広いのかもしれない、などと思いました。自分にも他人にも甘いのです。

男性の罪については、最近『流浪の月』や『15歳のテロリスト』を読んだこともあって、どのように捉えればいいのかわかりません。
単純に「きもい」で片付けてしまって良いのでしょうか。
男性の罪はいつから行われていたのか、はっきりとは書かれていなかったように思うのですが、場合によっては優子さんの事の影響が大きかったのかもしれないなと思いました。というのも、大人に対する恐怖から子供に想いを寄せるという話を思い出したからです。だからといって犯罪が肯定されるわけではないのですが、まだまだ解釈の余地があるように感じました。

それにしても、書簡体小説はやっぱり想像する部分が多い分、解釈の余地が生まれるのですね。
以前読んだ森見登美彦『恋文の技術』でそのように思ったことを思い出しました。

おわりに

また何度か読み返してみたいなと思いました。
男性にばかり目が向きがちですが、女性側に着目しても面白そうだなと思います。次はどんな風に読むのか楽しみです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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