読書感想文(238)米澤穂信『黒牢城』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は昨年の本屋大賞9位の作品です。
今年の本屋大賞ノミネート作品を続けて読んだので、ついでに前から気になっていたこの作品も手に取ってみました。

感想

面白かったです。
そもそもどんなお話なのか全く知らずに読み始めたのですが、すぐに時代小説であることがわかりました。そしてしばらく読み進めて、ミステリー小説でもあることがわかりました。
私はこれまで時代小説を殆ど読んでこなかったのですが、ワクワクしながら読み進めることができました。やはり歴史はロマンがあります。
実在の場所・人物が登場しており、有岡城は地元のすぐ近くであることも知りました。
これまで全く関心が無かったので、興味を広げることができてよかったです。
城跡などを訪れても、正直「へ〜そうなんだ〜」という感想しか持てなかったのですが、こういう小説を沢山読んでいけば、色々と思うところがあるのかもしれません。
今後、時代小説も手を出してみようかな?と思いました。

本書では史実に基づいた様々な事が出てきますが、文学部出身の私は一休禅師の歌が目に止まりました。

分け上る麓の道は多けれど 同じ雲居の月を眺むる

P206

これは後に松尾芭蕉が「月影や四門四宗もただ一つ」と詠んだのと、心を同じくするものと思います。
これは仏教以外にも言えることだと思っているので、芭蕉の句を覚えていたのですが、一休宗純が既に同じ心を詠んでいたのは初めて知りました。

ストーリーに関しては、物語の組み立て方も上手いし、面白くてすごいなと思いました(語彙力……)。
ミステリーの部分は正直全く分からなかったのですが、三つ目は頑張れば解けたなぁと思いました。
しかし武士の心になりきれないので、動機の部分は推測が難しかったように思います。当時の常識がわからないため、トリックのいくつかもなるほどなぁと思うしかありませんでした。
この点、ミステリーを読み慣れている人はどう感じるのでしょうか。

共感できないながらも、以前から武士道には学ぶところがあると思っており、今回は村重の次の一節に心惹かれました。

鑓野穂先に身を晒し、鉄炮の筒先を向けられながら生きるのが武士だ。死ぬのは構わぬ……というより、まことに已むを得ないことと了解してはいるが、それでも、いや、むしろそれ故にこそ、犬死には出来ない。

P371

何の為に生きるのか、という問いは誰しも考えたことがありつつ、いつの間にか答えなんて無いと見切って考えるのを止めてしまいがちではないかと思います。
まさに答えを求めようとするのが現代らしいとも思います。
何となく幸せに生きていけたらいいな、と思う人もいるのだと思いますが、私は多分そうではありません。何かをしたくてたまらなくなります。この点、吉本ばなな『キッチン』にも少しヒントがあるとは思うのですが、まだ自分の中でも上手くまとまっていません。
ただ、今この一節を改めて書いてみると、どうも歯切れが悪いというか、思考に迷いがあるようにも思われました。武士といえども、死に対する考えは迷いが生じるのかもしれません。いや、ここだけを抜き出してそんな表面的な話をしても仕方がないですね。この時の村重の状況もあっての台詞だと思います。

最後に、弱き者は弱き者なりに救われてほしいという考え方は素敵だなと思いました。
強い・弱いというのは様々な尺度があると思いますが、自分と異なる価値観の人の救われ方というのは意識しておかなければ、かえって人を不幸にしてしまうこともあると思います。

おわりに

今回はなんだかいつも以上にまとまりのない感想文になってしまいました。
次回は頑張れたらいいなと思います。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?