読書感想文(153)穂村弘『求愛瞳孔反射』
はじめに
こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。
最近同じ著者の『にょっ記』を読んで、昔この本を読んだのを思い出して読んでみました。
初めて読んだ時は友人がツイートしていて、タイトルに惹かれて買ったのを覚えています。
感想
正直に言うと、ほとんどよくわかりませんでした!笑
読み始めてすぐ、そういえば前に読んだ時もよくわからなかったなぁと思い出しました。
多分3年以上前なので、今なら多少理解できるかなぁと思っていたのですが、やっぱりわかりませんでした笑。
今、小林真大『詩のトリセツ』を読みたいなと思っているのですが、これを読めば理解できるようになるのかなぁと思ったりします。
今の自分に合わないからといって避けていてはいつまでも成長が無いのでとりあえず読み進めようと思っていると、急にちょっといいなと思うものがありました。
長いですが引用してみます。
渚へ
きみはもう二十分近くブーツと戦っている
ぼくは龍角散のどアメの龍角散くささに驚きながらきみを待っている
ぼくたちはこれから海を見にゆくところ
泳ぐ?
泳がないよ、一月だから
そう言って
ふらふらときみは立ちあがる
その情熱と握力で
とうとうブーツに勝ったんだね
ええ
かすかに息を切らしてきみは言う
人間がブーツに負けるものか
汗ばんだその表情を
ぼくは美しいと思う
そうともいつだってきみがブーツを履くんだ
ブーツが君を履くんじゃない
★
やわらかい砂を踏んで
今
ぼくたちは海をみている
なんという水の量だろう
海以外にはこんなにたくさんの水は考えられない
海はこの星の
お風呂のようだ
冬の海の
鈍いひかり
海よ
だが、ぼくたちは泳がない
ぼくたちは夏しか泳がないのだ
一月はいつでも冬で
とっても寒いのだ
ぼくがあげた龍角散のどアメの龍角散くささに怒って
きみがのどアメを海に投げる
海はなんにも言わずに
のどアメを飲み込んだ
冬の海の
鈍いひかり
おこりんぼの
美しい恋人よ
ぼくはもう少しだけここで海をみているから
先に家へ帰るがいい
二十分ほど
玄関にのたうちながら
きみのブーツと戦うために
ぼくはもう少しだけ
ここにいるから
ぼくの靴は
すぐ脱げるから
★
きみが去った渚に
ぼくはひとりで海をみている
冬の海の
夕暮れのひかり
海よ
いつか僕達がいなくなっても
海よ
ふたりの頭文字を忘れないで
海よ
でもそのまえに
海よ
アルファベットを覚えなくちゃね
この詩がどうして良いと思ったのか上手く説明できません。
もしかしたらやっと情景が思い浮かぶものが出てきたから、ギャップでそう感じただけかもしれません。
でもせっなくなので記録しておこうと思います。
他にいいなと思ったものは「ホームレス・バター」「つるのからまった」「もんじゃやき」などです。
ただ、どれも情景が想像できて、なんとなくいいなと思っただけなので、深くは読めていません。
この詩情を、いつか理解できたらいいなと思います。
と、ここで終わっていたのですが、パラパラと捲っていてもう一つ、いいなと思ったものがありました。一番初めの詩です。
あした世界が終わる日に
あした世界が終わる日に
一緒に過ごす人がいない
あした世界が終わる日が
夏ならいちごのかき氷
舌をまっかに染めながら
輝く雲を見ていたい
あした世界が終わる日に
一緒に過ごす人がいない
あした世界が終わる日が
冬ならメリーゴーラウンド
つやつや光る馬たちの
首を抱えて廻りたい
あした世界が終わる日に
一緒に過ごす人がいない
あした世界が終わる日が
今日なら蝶のアロハシャツ
汗ばむような陽炎の
駅であなたと出逢いたい
あとがきによると、この詩集は編集者によって基本的に時系列に並べられているそうです。つまり、一番最初にあるこの詩は一番初め、それもどうやら出逢う前です。
この詩は、夏或いは冬(すなわち、明日はまだ世界が続く)なら、「あなたと出逢いたい」 わけではないということでしょうか。それでもあした世界が終わるなら、最後はあなたと出遭って一緒にいたいということでしょうか。
世の中色んな楽しみはあるけれど、一番最後はあなたと一緒にいたい、と考えると結構ロマンチックですよね。
あとこれもあとがきに書かれていましたが、これは一人の具体的な女性を意識して書かれているそうです。それもまたロマンチックだなぁと思います。
タイトルから良いですもんね。
おわりに
穂村弘さんは歌人としても有名だと思いますが、短歌は読んだことがないのでまた読んでみたいです。
また、『にょにょにょっ記』は積読になっているので、これは近いうちに読むんじゃないかなぁと思います。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。
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