読書感想文(51)伊藤亜聖『デジタル化する新興国』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回読んだ本は、去年話題になっていた本です。
半年ほど前に購入したのをふと思い出して読んでみました。
買ったのは当時東南アジアに少し興味があったからだと思います。

感想

全体的な感想としては、少し難しかったです。文章自体は丁寧に書かれているので恐らく読みやすいはずなのですが、自分の知識不足のせいで読むのに時間がかかりました。恐らく理解度もあまり深くなく、経済に詳しい人が読めばもっと色んなことを読み取れるのだろうなぁと思いました。

この本は章立てがかなりきちんとされており、その点ではとてもわかりやすかったです。

序章 想像を超える新興国
第1章  デジタル化と新興国の現在
第2章  課題解決の地殻変動
第3章  飛び越え型発展の論理
第4章  新興国リスクの虚実
第5章  デジタル権威主義とポスト・トゥ
   ルース
第6章  共創パートナーとしての日本へ

第5章まで現状の把握と分析を行った上で、第6章で筆者の主張が述べられています。
その主張はざっくり言うと「学びつつ学ばれつつ、一緒に頑張っていきましょう」という感じです。
日本は一応先進国として書かれていますが、途中で先進国の定義も変わっていくかもしれないといった言及がありました。明言はしていなかったと思いますが、要はデジタル化が遅れていく日本は新興国と一緒に頑張っていかなければいけないということだと思います。その中で、日本のこれまでの取り組みの中で諸国に提供できるものもあるといったことも書かれていました。ただ、その具体例として挙げられていたのが明治維新以来の開発、所得引き上げだったので、これがいわゆる過去の栄光を引きずっているというやつなのかなぁと思いました。

さて、この本で面白いと感じたところがいくつかありました。
まずデジタル経済の改装概念図を通信ネットワークの階層に当てはめて考えていたところです(p131)。そうすることで、それぞれの国の役割が分かれていることがよくわかりました。アプリケーション層、つまりユーザーに最も近いところは新興国にも優位性がある一方、その前提となる物理層(ネットワークや端末)、ミドルウェア層は先進国に優位であるとのことでした。
また、本筋とはズレますが、昔は電話回線をインターネットに接続することが一般的であったが、今は光ファイバー網、無線通信、衛星通信などがメインになっているということが書かれていました。プロトコルという概念自体はなんとなく知っていましたし、それぞれの通信も聞いたことはあるものの、違いはよくわかっていません。単なる好奇心ですが、そういった分野についても勉強したいなと思いました。好奇心とはいえ、こういったデジタル化をテーマとする本を理解する助けにはなるように思います。

また、デジタル経済が新たに生み出す職種、「デジタル雇用」については3つの類型が提示されていました。その3つとは、IT人材、デジタル・クリエイター人材、ラスト・ワンマイル人材です。それぞれ具体的にはプログラマー、インフルエンサー、ウーバーイーツ配達員、といったところです。
これは橘玲『働き方2.0vs4.0』で似たような話題がありました。ラスト・ワンマイル人材のようなギグワーカーは一番なりやすいものの、その分安く買い叩かれます。なので橘玲さんはIT人材とデジタル・クリエイター人材(評判資本、コミュニケーション能力や管理運営能力を用いる)の2つを提示していました。ただし、IT人材についてはグローバル化を考えるとこれまた厳しい競争になるような気もします。

もう一つ、大したことではありませんが気になったところを書いておきます。

重要な指摘は、東南アジア諸国のなかでも、国際的な経済・貿易体制へと深く統合されている国は、中国以外の経済大国とよ関係を維持することで、中国からの影響力を限定づけ、回避する(ヘッジする)一方で、国際貿易との結合が深くな国々、例えばカンボジア、ラオス、ミャンマーといった国々では中国の影響力は相対的に強まる、というものだ。

この指摘自体、なるほどと思ったのですが、気になったのは前者のとこらです。
この周りの色んな国と関係を維持することで影響力を限定するというのが、東南アジアの歴史であったマンダラ的な国(?)の在り方に似ているなと思いました。かなり前に読んだ白石隆『海の帝国』に詳しく書かれていたと思います。
そういった構造に類似点が見られるのは、歴史的な影響もあるのかなぁなどと思いました。

おわりに

今回の本はなかなか難しかったですが、色々なところと繋がりそうだなと思いました。経済や東南アジアの勉強をもっとした後で、また読み返してみたいと思います。
また、感想で触れ忘れていましたが、副題にある通り監視社会についての言及も多くありました。これもまだまだホットな話題のように思いますので、こちらも色々と勉強したいです。
例に挙げられていたジョージ・オーウェル『1984年』は近いうちに読んでみようと思っています。

というわけで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

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