読書感想文(340)小山田浩子『工場』


はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は友人にオススメしてもらった一冊です。
小山田浩子さんの作品は初めて読みました。
現代の純文学を読むのもかなり久々です。

感想

んー、これは感想が難しいです。
ストーリーが劇的に面白いわけではありません。
何かどこか引っかかるけれど、それが何かわからない、という感じです。

この本には表題作「工場」の他、「ディスカス忌」「いこぼれのむし」の計三作が収録されています。

「工場」は何かメタファーが豊富な気がしつつ、上手く捉えきれませんでした。
三人の人物の視点から語られますが、共通しているのは仕事のやりがいを感じていないこと、仕事の重要度が低いことでしょうか。前者については、やりがいがないことを受け入れる人、自分の能力を活かしきれないことに不満を持つ人など、様々な状況や考え方が出てきます。
後者については、「ブルシットジョブ」という言葉を連想しました。
この「工場」の世界観は、具体的にはよく描かれますが、抽象的な部分、例えば工場は結局何をしているのかとか、社外が今どういう状況なのかとか、そういうことはあまり描かれません。
工場の固有種とされる三種の動物「灰色ヌートリア」「洗濯機トカゲ」「工場ウ」は、それぞれ何かの比喩に思えるのですが、そこまで深読みできませんでした。

二つ目の「ディスカス忌」は読みやすく、自分も金魚のエサを食べたりしたことあったなぁと思いました。
でも、なぜ友人の浦部が死んでしまったのか、わかりません。そして、この物語が何なのか、ということもわかりません。
浦部が金持ちで、働く必要も無かったというのは、現代の労働観と合わせて考えるべきなのでしょうか。

三つ目の「いこぼれのむし」は、最も良いなと思いました。
が、これもやっぱりよくわかりません。
同じ会社内の色んな人の視点で描かれます。
他の作品も含めて、この本全体を通して、労働・労働者について描かれているとは思うのですが、そこから読み取れることや、自分の考えが出てきません。どうしたものか。
この「いこぼれのむし」は登場人物達の内心が、主に人間関係についてそれぞれよく描かれています。
が、実際、どれくらいの人がこれだけはっきりと色んなことを考えながら生きているのでしょうか?
私は対人評価などを結構無意識にしてしまう方なのですが、多くの人はこんなに筋道立てて考えているのでしょうか?
職場で他人に仕事を振る立場に着く人などは、それぞれの人の特徴を言語化して把握しているのかもしれませんが、今の自分にはピンときません。
ただ、それぞれの人が何を考えているのかなと意識しながら、人と接することで見えてくるものがあるのかもしれないなとは思いました。

最後に、自分の労働環境について考えてみます。
作品内で誰に一番近いかと考えると、「工場」に出てくる、リストラされて恋人のコネで工場の派遣社員をやっている男かな、と思いました。
私はリストラされたわけではありませんが、今派遣社員に近い形で働いています。仕事内容にやりがいは感じていますが、仕事をしながら「こんなことをやっている場合ではない」という気持ちも結構強く持っています。
んー、でもこの作品は何か答えを提示しているわけではないので、ここからどう進めばいいのかわかりません。
もっとよく読めば、何か考えるヒントは得られそうなのですが……。
ただ、そういえばこの作品では、あまり将来を考えていなかったような気がします。リストラ男も、正社員に戻ろうと思いつつ、具体的に何をするとか、生き方について考えてはいなかった気がします。
とすると、この辺りは着眼点としてあまり適切でないのかもしれません。

おわりに

うーん、どう読めばよかったのか、正直あまりわからなかったので、モヤモヤした気分です。
この作品が今後自分の人生にどう影響するのか、楽しみにしようと思います。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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