読書感想文(196)小林多喜二『蟹工船・党生活者』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は初めて小林多喜二の作品を読みました。
なぜこの作品を読もうと思ったかというと、労働に苦しめられているからです。
労働とは何なのか、私達はなぜ働いているのか、なぜ「働かなければならない」のか。
真実を見つけるべく、私は蟹工船の奥地へ向かった。

感想

面白かった、という表現が適切かわかりませんが、とても良かったです。
元々「蟹工船」目当てで読み始めたのですが、どちらかというと「党生活者」の方がいいなと思いました。

「党生活者」は戦時中の共産主義者の話です。当時は弾圧がひどく、実際に作者である小林多喜二は逮捕、虐殺されています。
「間違った」社会に抗う、信念を持った人間が描かれているところに、心を動かされました。
私は不勉強なので、当時の共産主義者が正しかったのかどうかわかりません。
しかし、現代も尚、最高に良い世界とは程遠いと思います。だから、できるだけ良い世界になるように、少しでも自分にできることをやっていきたいと思いました。そうなると、そもそも「良い」の基準を考えなければならず、これは哲学です。そして、その基準が決まれば、どのようにしてそれを実現するか、これはその他多くの学問です。勉強し続け、他人と対話をしつつ、より良い世界にしていきたいと思いました。

私はどうしても明日までにやってしまわなければならない仕事が眠いために出来なく、寝ようと思う、そんなときに中の人たちのことを考え、我慢し、ふん張った。中の人ことを考えたら、眠いこと位は何んでもないことだった。――今中の人はどうしているだろう、殴られているだろう、じゃこの仕事をやってのけよう。そんな風で、我々の日常の色々な生活が中の同志の生活とそのまゝに結びついていた。

P201

「中の人」というのは、獄中で尋問を受けている同志のことです。
ビジネス書で時々他人の為になることをやる、利益は後からついてくる、という話を見かけます。これも同じだと思います。困っている人を助けたい、その一心で自分の苦労を極限まで受け入れられるのです。
私にはこの覚悟が足りません。覚悟というより、使命感が足りません。だから、まず使命感を持つことです。私は何の為に生きるのか。それを考えなければなりません。

須山と違った切抜の好きなSは、私の「二十四時間の政治生活」というのに対して、「一日を二十八時間働いても疲れを知らないタイプ」に自分を鍛えなければ駄目だと云っている。

P252

これはちょっと覚えておきたいところです。一日に二十八時間働いても疲れを知らないタイプ、に私はなりたいです。 

その他、色々と気になる所はあったのですが、二つだけ書き残しておきます。
一つ目は「恋を囁く」の話です。
朝から晩まで働くので、給料を増やして労働時間を減らしてもらわないと恋もできない、という話です。これが女性の臨時工の心を掴むのですが、約90年前の小説とは思えないほど現代に通ずる話だと思いました。
現代、少なくとも日本ではこの問題に困っているのではないでしょうか。
結婚や出産が減っているのも、これに起因しているように思います。
給料を増やして労働時間を減らすと、資本家が損をします。
ただし、この辺りの知識が私は殆どないので、色々と様々な立場で書かれた本を読みたいなと思いました。

二つ目伊藤の存在です。途中、伊藤が主人公の事を好きかのような描写があります。そこに気づくと、伊藤の描写が妙に切なく感じられるようになりました。
次に読み返す時はこの点に注目したいです。

「蟹工船」については、劣悪な労働環境が描かれているのはわかったのですが、方言が多かったこともあり、読みにくく感じました。次に読む時は注釈が充実したもので読みたいなと思いました。

おわりに

今回、「党生活者」を読めたことは今年の読書でもかなり実りの大きいことだなと思います。読んでよかったです。
小林多喜二の他の作品も読みたくなりました。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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