読書感想文(126)有川ひろ『アンマーとぼくら』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は前回と同じく有川ひろさんの作品です。今更ですが、そういえばペンネームの表記を変えられたんですよね。私は「有川浩」表記の方が馴染み深いのですが、本に合わせようと思います。

有川ひろさんの作品は結構読んでいますが、この本は初めて読みました。

今回は少しマイナスの感想も含まれます。あまり否定的な発信は良くないと思っているのですが、思ったことを正直に残しておきたいので、この作品が好きだという方はお気をつけください。

感想

有川ひろさんらしい、なんていうと偉そうかもしれませんが、温かいお話でした。
植物の話が色々と出てくるという点では『植物図鑑』、沖縄という土地の魅力が伝わる点では『県庁おもてなし課』、家族のお話という点では『フリーター、家を買う。』があったなぁと色々思いながら読み進めました。

小説において人の死が描かれる時、私は少し警戒してしまいます。というのも、フィクションの中の人物であれ、やはり死というのは悲しいものなので、できるだけ人を死なせないでほしいと思うからです。
しかし小説というのは何かを描くものですから、死が描かれることも当然あります。そういう時は、せめて死が描かれなければならないものであってほしい、と思います。軽々しく人の死を扱う作品は、正直少し嫌な気持ちになります。
余談ですが、似たようなことがアニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』でありました。車椅子に乗る少女が坂を滑ってしまうのですが、そのシーンが映画では二度も描かれます。一度でさえゾットするのに、二度もです。そして二度目は主人子に受け止められてホッとしてハッピーエンド的な扱いになるのですが、正直恐ろしくて観ていられませんでした。一度目はその為の伏線(ギミック)だったのだと思うと、尚嫌な気持ちになりました。そのシーンは好きになれなかったのですが、映画全体としては結構好きでした。

話を戻して……。
では今回死が描かれなければならなかったのはなぜなのか、と考えてみると、やはり家族の事を最も考えるのは死んでしまった時だからかなぁと思いました。
私は家族とあまり仲が良くないのですが、いつか後悔する時が来るのかもしれないなぁということは常々考えています。

話が変わります。
途中、「過去を変える」 という話が途中で出てきます。私はすぐに平野啓一郎『マチネの終わりに』を思い出しましたが、それと今回は少し違います。
この作品では恐らく過去は実際に変わったのだろうと思われます。そして、変えたかった過去を変えてハッピーエンド、といったところでしょうか。
私はこの展開に、正直ついていけませんでした。沖縄の神秘が奇跡を起こした、というのは、沖縄の神秘を称えるのに良いかもしれません。しかし人の行いについては、いくら悔やんでいたとしても、変えてはいけないのではないか、と私は思ってしまいました。その行為そのものの意味合いを変えること、変わってしまうことはあるかもしれません。でも、言ってしまったことを言わなかったことにはできません。その時点で相手が傷ついたという事実も……。
その辺り、作者がどのような思いでこの作品を書いたのかが気になりました。
仮にこれが本当にただの夢であれば、それほどまでに「おかあさん」を想う主人公の気持ちを感じることもできたのですが……。勿論そういった強い気持ちがあったから奇跡が起こったのかもしれませんが……。

また、文章については、主人公視点で主人公の解釈等がよく描かれていたのが印象的でした。この点は行間を読める部分がわざわざ書いているという意味では少し冗長のように感じましたが、あくまでも主人公なりの解釈であるという意味では面白いなと思いました。
主人公はこんなふうに考えているけど、もしかしたら全然違うかもしれません笑。

ストーリーの全体については、んー、正直あまり全体としてのまとまりを感じられませんでした。なんとなく全体の構成が捉えづらいというか……。ミステリ風を匂わせつつ、結局何か謎があるわけでもなく……。
随所でいいなと思うところはたくさんありました。後半は特に何度も泣きそうになりました。ただそれもなんとなく唐突な感じがしたのと、「家族」や「死」といった感じやすいテーマゆえ、といったように感じてしまいました。
それほど好きになれなかったというのが正直な感想です。
今回は初読だったので、また読み返したら違う感じがするかもしれません。今度沖縄に行く機会があれば、その時に思い出して読み返すかもしれないなぁと思いました。

おわりに

ざっと読み返してみて、これでいいのかなぁという気もしましたが、まあ正直な感想かなと思ったのでこのまま投稿しようと思います。
正直、有川浩さんの他の作品がかなり好きだった分、何かを期待し過ぎていたのかもしれません。或いは、有川浩さんの作品を一番楽しんでいたのは中高生の頃なので、私の価値観や感性が変わってしまったのかもしれません。或いは逆に、作者の価値観や感性が変わったのかもしれません。
『図書館戦争』シリーズや自衛隊三部作など、今年は色んな作品を読み返したいなと思っています。その中で感じたこと、考えたことをまた、noteに綴っていきたいです。

ということで、長くなってしまいましたがそろそろ終わります。
最後まで読んでくださってありがとうございました。


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