読書感想文(108)金子みすゞ『金子みすゞ童謡全集③ 空の母さま・上』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は金子みすゞ全集の第3巻です。
短い童謡が沢山入っているので、少しずつ読み進めました。

感想

今回も素敵な詩がたくさんありました。
いくつか紹介したいと思います。

土と草

母さん知らぬ
草の子を、
なん千万の
草の子を、
土はひとりで
育てます。
草があおあお
茂ったら
土はかくれて
しまうのに。

P118

これは他の所でも見たことがあるので、恐らく有名な詩だと思います。
説明不要かもしれませんが、一応自分の言葉で解釈してみます。
この詩は、誰かの為に頑張ってもむしろ自分は隠れてしまうのに、と唄っています。そこには「どうしてそんなことをするの?」という素朴な疑問と「かわいそうだな」という単純な哀れみと「頑張っているんだな」という健気な応援が感じられます。そんな子供らしい視点がありながら、大人が読むと「やっぱりそういうものだよなぁ」と自然に思うでしょう。
「草の子」と表現しているように、親が子どもを育てるのもこういうところがある気がします。
また、ふと学校もそうかもしれないなと思いました。
「母さん知らぬ草の子」を「何千万」とまではいきませんが、たくさんの子どもを育てる場所です。土は先生もそうですが、やはり保護者や地域もそうではないでしょうか。
草の子達は土から養分をもらいつつ、でもお日さまに向かってすくすくと伸びていきます。
大きくなったら土は見えなくなるけれど、土があったから大きくなれたのだし、これからも土は必要なものです。
それでも大きくなったら、別の所でも生きていけるのは、寂しいような気もしますが、ますます元気に育ってくれたら嬉しいのではないでしょうか。

思ったより長くなってしまいましたが、他にも特に良いなと思ったものを紹介します。

暦と時計

暦があるから
暦を忘れて
暦をながめちゃ、
四月だというよ。

暦がなくても
暦を知ってて
りこうな花は
四月にさくよ。

時計があるから
時間をわすれて
時計をながめちゃ、
四時だというよ。

時計はなくても
時間を知ってて
利口な鶏は
四時には啼くよ。

P138

星とたんぽぽ

青いお空の底ふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまで沈んでる、
昼のお星は眼にみえぬ。
  見えぬけれどもあるんだよ、
  見えぬものでもあるんだよ。
散ってすがれたたんぽぽの、
瓦のすきに、だァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根は眼にみえぬ。
  見えぬけれどもあるんだよ、
  見えぬものでもあるんだよ。

P164

次からつぎへ

月夜に影踏みしていると、「もうおやすみ」と呼びにくる。
 (もっとあそぶといいのになあ。)
けれどかえってねていると、
いろんな夢がみられるよ。

そしていい夢みていると、
「さあ学校」とおこされる。
 (学校がなければいいのになあ。)
けれど学校へ出てみると、
おつれがあるから、おもしろい。

みなで城取りしていると、
お鐘が教場へおしこめる。
 (お鐘がなければいいのになあ。)
けれどお話きいてると、
それはやっぱりおもしろい。

ほかの子供もそうかしら、
私のように、そうかしら。

P178

どれも素敵な感性だなと思います。
金子みすゞの詩はリズムも良いので、いつも音読しています。
リズムが良いものを音読すると、より心に残りやすくなります。
「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」というフレーズは特に留めておきたいなと思いました。

おわりに

このシリーズは全六巻なので、あと半分です。大体月に一巻のペースで読めているので、三月頃に読み終わるかなぁと思います。

さて、今回実は今年149冊目の本でした。
つまり、次回は記念すべき150冊目となります。
私は2021年の目標として「本を100冊読む、できれば150冊」という目標を立てました。ギリギリになりましたが、なんとか達成できそうです。
本を読んだ冊数そのものは意味を為しませんが、150冊読んだという事実は自分にそれなりの影響を与えているのだろうなと自信を持って思えます。
まあ、まだ150冊読んでないんですけどね!笑

ということで、年の終わりっぽい話は次回もしくは次々回に回します。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。


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