読書感想文(135)筒井康隆『旅のラゴス』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回読んだこの本は、中学のクラスメイトのオススメで、めちゃめちゃ前に教えてもらいました。
オススメされたから買ってみたという感じなので、内容は全く知らないまま読み始めました。

感想

面白かったです。
最初はなんというか、ドライな(?)感じの文体であったり、環境が現代で無かったりしたため馴染みづらく感じましたが、すぐに慣れました。

読み始めてすぐに驚いたのが、この作品がSFだったことです。
旅って苦労があるイメージで異能力ってなんとなく合わないような気がしますし、少し前時代的な環境とも合わないような気がして、不思議な感じでした。

主人公は初めから南を目指していることがわかりますが、なぜ南を目指しているのかは100ページくらい読まないと明かされません。
てっきり最後までわからないまま旅の過程を読んでいくものなのだと思っていたら、そこでやっと「そうそう、それ!」となりました笑。それも一気に明かされたので、これまでの未知はなんだったのだろうと不思議な気持ちになりました笑。もしかすると、もう一度読み返したら面白い発見があるかもしれません。

この本を読んで一番強く思ったのは、「旅に終わりはない」という(ありきたりな)感想です。
これを特に感じたのは主人公が故郷を通過点と考えるところ(P239)ですが、そういえば当初の目的地であった南の地も、結局は旅の通過点となりました。
ここから人生と旅を重ねて考えるには私はまだ若すぎるように思いますが、なんとなく心に引っかかりました。
松尾芭蕉の句や『奥の細道』を読めば少しはわかるのかもしれません。あとは自分も旅をしてみること。
今の所思いついたのは、例えば家庭を持つことも通過点なのだろうか、ということです。そういえば作中でも、結婚という話は何度か出ていました。主人公がそれほど興味を示さなかったのは、旅人だから、なのでしょうか。

「銀鉱」の章も印象的で、映画『ショーシャンクの空に』を思い出しました。
この章に限らず、旅の困難は様々なところにあるのですが、それがそれほど重大に感じられないのは、主人公の内面がドライというか、シニカルで、少し上から全体を俯瞰するような視点だからでしょうか。馬が崖に突っ込もうとした時以外は焦ったイメージもなく、「困ったな、さて、どうしようか……」といった雰囲気だったように思います。
はっきりと覚えているわけではないのでもしかすると違うかもしれませんが、また次読む時に気にしてみようと思います。

壁抜け芸人の話や絵描きの話も印象的ではありましたが、物語全体の位置付けがいまいちわかりません。読み終えた今でも、この話は一体なんだったのだろうと思います。もしかすると、旅なんてそんなもん、ということなのかもしれませんが、これも次読む時に意識したいです。

おわりに

筒井康隆さんの作品は今回初めて読みました。
今の所、『時をかける少女』と『残像に口紅を』を読んでみたいと思っています。

ということで、読んでくださった方、ありがとうございました。


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