読書感想文(89)J.K.ローリング作、松岡佑子訳『吟遊詩人ビードルの物語』(原語の古代ルーン語からの翻訳︰ハーマイオニー・グレンジャー)

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回はハリーポッター関連書籍です。
シリーズ最終章の「死の秘宝」でダンブルドアからハーマイオニーに贈られた物語であるため、知っている方も多いのではないでしょうか?

ビードルの物語は童話であるため、とても短くて読みやすいです。
ハーマイオニーによる前書きやダンブルドアのメモがあるので、そういった遊び心も楽しい本でした。

感想

この本に収められている作品は次の5つです。

・魔法使いとポンポン跳ぶポット
・豊かな幸運の泉
・毛だらけ心臓の魔法戦士
・バビティうさちゃんとペチャクチャ切り株
・三人兄弟の物語

このうち「三人の兄弟の物語」が本編に関係あるものです。

一番印象に残ったのは「毛だらけ心臓の魔法戦士」です。
次の引用はダンブルドアのメモに当たる部分です。

この物語は、魔法の中でも最も強い誘惑であり、かつ認知度のきわめて低い「損傷不可能性」の探求という誘惑に触れている。
そのような探求は、もちろんばかげた夢物語である。生きている者ならば、魔法使いにせよそうでないにせよ、肉体的、精神的、感情的な意味での何らかの損傷を被らない者はいない。傷つくことは息をすることと同じように人間的なことである。

これについては、又吉直樹さんの動画で知った、太宰治と三島由紀夫の幸福論を思い出しました。

苦しいのは当然であると受け入れる考え方もあれば、苦しいからなんとかしたいという考え方もあります。
どちらが優れているというものではなく、自分に合った考え方で良いと思います。
大切なのは、自分と異なる考え方の人もいるということを理解しておくことだと思います。

こういった考え方の他に、損傷を「肉体的」「精神的」「感情的」の三つに分類しているのも興味深いです。
「精神的」と「感情的」の区別が難しいなと思いますが、英語だと「mental」と「emotional」でしょうか。
この三つの要素は互いに影響し合うものだと思います。例を挙げると、「ケガをする」→「悲しい」「ストレス」であったり、「失恋」→「精神的苦痛」「体調不良」であったり。
この物語の主人公は「感情的」な部分の損傷不可能性を探求しましたが、その結果として召使いの悪口によって「精神的」な部分を損傷し、果ては「肉体的」な部分を損傷しました。
このように三つの要素に分ける考え方はなにかに使えそうだなと思いました。

また、この物語から「心臓に毛が生えている」という言い方は「冷たい」「感情がない」という意味で使われるそうです。
マグルの世界では「堂々としている」「厚かましい」といった意味で使われるので、こういった違いも面白いなと思いました。
このような言葉遊びは本編でも色々とあったような気がしますが、覚えていません。

最後に、「魔法使いとポンポン跳ぶポット」について。
この物語は魔法使いが改心してめでたしめでたしという風に書かれています。
しかし私には魔法使いが自分の為に仕方なく人々を助けているようにしか思えませんでした。
結局のところ、人助けというのは自分にも利益がなければ難しいのでしょうか。
偽善とは少し違うと思いますが、なんとなくモヤモヤしてしまいます。
しかし福祉などもそういうものなのかもしれません。

おわりに

今週末に兵庫県立美術館の「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展に行く予定です。
今回は「バビティうさちゃんとペチャクチャ切り株」が魔女狩りに関連する話だったので、何か繋がりがあれば面白いなと思いますがどうでしょうか。
ハリー・ポッター関連書籍はあと2冊あるので、特別展に行くまでに読むつもりです。
その2冊はホグワーツ校指定教科書なので楽しみです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

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