はじめに
こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。
今回は超有名な作品です。
夏目漱石の作品は高校生の頃に『こころ』を読んだきりです。
『坊っちゃん』も読んだことがありません。
そんな私が今回『草枕』を読もうと思ったのは、まず『春宵十話』の著者である岡潔が夏目漱石の良さを書いていたこと(そしてその指摘がグサリと刺さりました)、最近知り合った人が大学の卒論を夏目漱石で書いていたこと、そしてその人から『草枕』の舞台とされる熊本に旅行した話を聞いたこと、松尾芭蕉『おくのほそ道』を最近読んで「旅」について思いを馳せたこと、最近読んだ島崎藤村「小諸なる古城のほとり」に「草枕しばし慰む」と出てきたことなどです。
このように色々な縁が重なったら、いつも読むようにしています。
感想
今年のベスト・オブ・ザ・イヤーと言っていいほど気に入りました。
有名な冒頭から印象的でしたが、その後も文章の様々なところで共感し、或いは考えさせられ、また表現の多彩さに圧倒されました。
私は普段、立ち止まって考えながら読むことをあまり好まず、ひっかかった部分のページのみをメモしておき、後で見返して考えるようにしています。
しかし今回はあまりにも心に響いたので、すぐに精読モードに切り替えました。
そのため、読むのにかなり時間がかかってしまったのですが、その分しっかりと自分なりに読むことができたので満足しています。
ただ、noteに感想を残すにあたって全てを書くことができないほどの量になってしまいました。
そのためいつもとは形式を変え、noteもまとめのような形から始めたいと思います。
まずこの作品の良かった点について書きます。
一つ目は教養に溢れていることです。絵画や詩が多数引用されており、次の学びに繋がっているように感じました。中には昔覚えたものの忘れてしまっていた詩などもあり、様々な芸術の良さを感じながら読み進めることができました。
二つ目は主人公の考え方に非常に共感できるところが多かったことです。これについては、恐らく大学に入ってから和歌や国文学、そして少しではありますが絵画や哲学なども幅広く勉強していたから、自分なりに理解できたのだと思います。恐らく高校生の頃に読んでいたら、これほど感銘を受けなかったであろうと思います。
三つ目は芸術鑑賞にあたって大変参考になる価値観がたくさん書かれていたことです。例えばギリシャの彫刻は端粛の二字に期する、すなわち動かんとして未だ動かざる姿が良いとされるという話などは、彫刻について全く知識がない私にとって今後の鑑賞に大きく影響を与えただろうと思います。
四つ目は表現が多彩で細かったことです。情景描写が非常に丁寧でした。今思えば、画家である主人公ゆえの絵画的な視点で描かれていたのかもしれません。
次に、最も印象に残ったところを引用します。
この部分、かなり力強いなと感じました。漱石の文学をほとんど読んでいない私が言うのも変ですが、漱石ってこんな感じだっけ?と思いました。坂口安吾を思い出したのですが、そういえば私の漱石観は坂口安吾の漱石観に影響を受けているように思います。すなわち、男女の関係を描く時に肉欲が描かれない。そういう綺麗なイメージがあったので、この力強い文章が印象的だったのだと思います。
加えて、巻末解説で引用された書簡では次のように書かれていました。
これを読んだ時、自分が先に坂口安吾を想起したのは間違っていなかった、と思いました。
近代文学は命がけで書かれた作品が多くあるからこそ、今でも親しまれているのだろうと思います。それくらい、熱量を感じました。
おわりに
少し短いですが、全部書くと長くなり過ぎるのでこの辺りで終わっておきます。
今回で夏目漱石の作品をもっと色々と読んでみたくなりました。やはり有名な作家はそれだけの価値があるのだなと思いました。岡潔の考えが少しわかったのも良かったです。
今回は最後に、自分用のメモを付けておこうと思います。
数字はページです。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。
おまけ(メモ)