読書感想文(159)高野晴代『源氏物語の和歌:コレクション日本歌人選008』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありましたございます。

今回はコレクション日本歌人選という、いくつかの和歌をピックアップして解説しているシリーズの本を読みました。

感想

この本は『源氏物語』の五十四帖からそれぞれ一首ずつ選出し、解説されています。各巻の解説も書かれているので、そういえばそんな感じだったなあと思いました。

私は大学生の頃、春休みにほぼ丸々一ヶ月かけて『源氏物語』を通読しました。
面白かったのですが、あまりにも長すぎて、もう一度読む気がなかなか起こりません。
今回この本を読んで久々に読みたいなぁと思いましたが、すぐに「でもなぁ……」と思ってしまいます。
『源氏物語』を通読した人ってそれほど多くないと思うのですが、ニ回以上読む人はさらに減るのてはないかと思います。

さて、そろそろ感想らしい感想を書こうと思うのですが、どこを書くか迷います。というのも、今回は和歌が54首選ばれているので、気になったところがたくさんあるのです。
まあそんなことを言っても始まらないので、ぼちぼち書いていきます。

行く先をはるかに祈る別れ路に堪えぬは老の涙なりけり

P36

この歌は松風巻で、明石入道が妻と娘と別れる際に詠んだ歌です。それほど技巧的でもないのですが、心情が素直に詠まれていていいなぁと思いました。
これに対して妻である尼君は「諸共に都は出できこの度やひとり野中の道にまどはん」と返します。都から出て明石に来る時は一緒だったのに、今度は一人だから途中で迷ってしまう、という歌です。
また、娘である明石君は「生きてまた相見むことをいつとてか限りも知らぬ世をば頼まむ」と返します。いつまた生きて会えるか分からないけど、お会いできるまで限られた命を精一杯生きています、という意味です。
『源氏物語』は恋愛のイメージが強いですが、この場面は家族の温かさが伝わってきていいなぁと思いました。

末遠き二葉の松に引き別れいつか木高き影を見るべき

P38

今度は明石君が母親として詠んだ歌です。身分的な問題もあり、幼い娘と離れ離れになることになります。しかしいざ別れる場面では、姫君は幼さゆえに母と別れることを理解できず、当然のように母と一緒に迎えの車に乗ろうとします。そんな娘を見て思わずこの歌を詠み、最後まで言い切れぬうちに涙がこぼれてきます。
歌は「二葉の松」に幼い姫君を投影し、「松を引く」という言葉から「引き別れ」を導いています。松は長寿の象徴ですから、「まだまだこれから長い時を生きていく幼い娘と別れるけれど、いつか成長した姿を見られるでしょうか」といった意味になります。
娘である明石の姫君の将来を思っての別れとはいえ、やはり家族との別れは辛いものなのだということがよく伝わってきます。最近は連絡も取りやすく、日本にいれば会いに行くのもそれほど困難ではありませんが、当時はそんなことなかったはずなので、今よりずっと辛い別れだったのでしょう。

その他、手習巻で浮舟の話がありますが、そういえば和泉式部も手習いをしていたなぁと思い出しました。手習いをする場面が他の作品でどんなものがあるのか知らないのですが、浮舟と和泉式部の共通点はもう少し詳しく知りたいなと思いました。
とはいえ、もう専攻しているわけではないので、どこまで勉強するかはわかりませんが……。
大学生の頃から、自分は研究より布教の方に興味があるのだなぁと思っていました。なのでたくさん知識を得て、面白い話をできるだけ多くの人に発信できたらいいなぁと思っています。

おわりに

先日から少しずつ古典関係の本を読み始めました。古典関係は読むのに時間がかかるので敬遠してしまっていたのですが、やっぱり面白いので少しずつでもこうやって触れていきたいと思います。
次は『奥の細道』辺りを読もうかな〜と思っていますが、先に現代の小説を読むような気もします。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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