読書感想文(304)安部公房『砂の女』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は安部公房の作品です。
安部公房の作品は高校生の頃に授業で「鞄」だけ読んだことがあります。
殆ど覚えていないのですが、重くなったり軽くなったりして、何かを暗示していたような気がします。
ともかく難解なイメージがあったのですが、今回積ん読になっていたこの本を読むことにしました。

感想

とても面白かったです。
本の印象としては筒井康隆『旅のラゴス』とカフカ『変身』に近い感じがしました。なぜなのかわかりませんが、後者に関しては不条理が共通しているからかもしれません。

ある男がある部落で騙されて、砂の穴に住むことを強制されるという、非現実的な設定ですが、そこから何とか抜け出そうとする男がリアルに描かれます。
暗示があるように思われる所も多々ありましたが、ストーリーとしては全く難しく無く、スラスラと読み進めることができました。
「生きるとは何か」「自由とは何か」を考えさせられるような気がしますが、この作品の先に答えを見つけようとすると、絶望しかないような気もします。
深く考えるために何度も何度も繰り返して読みたいと思う一方、その絶望が無意識に刷り込まれるのが少し怖くもあります。

砂の不毛は、ふつう考えられているように、単なる乾燥のせいなどではなく、その絶えざる流動によって、いかなる生物をも、一切うけつけようとしない点にあるらしいのだ。年中しがみついていることばかりを強要しつづける、この現実のうっとうしさとくらべて、なんという違いだろう。

P17

安部公房は難解な比喩のイメージがあるのですが、タイトルにもなっている砂も重要なメタファーだと思われます。
読み初めの頃は気になって上のような部分をメモしたのですが、途中からは夢中になって読んでいたため、あまりメモができませんでした。
ただ、読み終えた今は、膨大な砂にただ恐ろしさを感じます。

そういえば、表紙に書かれている鴉も、何かを暗示しているような気もします。
次に読む時は注意深く読んでみたいと思います。

労働を越える道は、労働を通じて以外にはありません。労働自体に価値があるのではなく、労働によって、労働をのりこえる……その自己否定のエネルギーこそ、真の労働の価値なのです。

P177

労働の意義については、多くの人(特に若い人)が考えるのではないかと思います。
この部分の意味は正直はっきりとわからないのですが、何となく記録に残しておいた方がいいような気がして残しました。

おわりに

今回、期待以上に面白かったので、安部公房の他の作品も読んでみたくなりました。
今のところ気になっているのは『箱男』と『壁』です。
機会があったら読んでみたいと思います。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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