読書感想文(383)町田そのこ『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
はじめに
こんにちは、笛の人です。
読んで下さってありがとうございます。
三月の一冊目は、数年前本屋大賞を受賞された町田そのこさんのデビュー作です。
読んだきっかけは、二月に本屋さんでチョコレートっぽい小説を探していて、恩田陸さんの『チョコレートコスモス』と迷ってこちらを読みました。
二月中に読み終えるつもりでしたが、読み始めるのが遅かったので三月になってしまいました。
感想
面白かったです。
印象としては、描写が凝っているなぁと思いました。
収録されている5つの短編のうち、1つ目の「カメルーンの青い魚」はR-18文学賞大賞を受賞した作品なのですが、一部性的な描写が含まれます。そこで、性行為をこんなに情感豊かに描けるものなのだなぁと驚きました。
これは行為中の主人公の内心です。
リアリティのある描写ですが、心情自体がリアルかと言われると疑問です。
行為中に何を考えているか、なんて他人と話す機会が無いので、他の人が何を考えているのかわかりませんが、こんなに詩的なことを考えている人もいるのでしょうか。
こういう小説を多く読んでいる人は、こういうことを考えたりもするのかもしれません。
一番良いなと思ったのは、表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」です。
チョコレートグラミーという魚の名前だということは読んでから知りました。
中学生男女のうぶな感じも良いのですが、晴子のことも啓太のことも応援したくなりました。
小説に描かれる中学生って、子供っぽさよりも子供なりによく考えていることが描かれることが多い気がします(辻村深月さんの作品とか)が、今回も頭の良い中学生でした笑。
でも確かに、自分自身の中学生時代も思い返しても、意外と自分なりに色々と考えているんですよね。もっとアホでしたけど。子供本人にとっては筋が通っているつもりでも、大人から見るとアホだから、大人は子供を子供扱いしてしまいがちです。でも自分が子供の頃はそれが嫌でした。だから自分も、子供に対して一人の人間として接したいです。という心を、忘れそうになってきている今日この頃、大人になっていくってこういうことなのかな、だったら嫌だなと思ったり。
「溺れるスイミー」については、どう読んだものかなあと思いました。
主人公が本来の自分を抑え込んでいるのを、どう考えるか。
初めは、「出ていくこと自体が悪いわけじゃないのになあ」と思い、常識を刷り込むお母さんに反感を持ちました。でも、それは無責任な他人だから言えることで、もし自分の子供に放蕩癖があったら、やっぱり心配だろうなあと思います。
でも、やっぱり主人公は何かに囚われてしまっているような、そこから解放された方が幸福なような気がします。結局のところ、生きる道はその本人に委ねられるべきだと思うし、それを無意識の層で縛っているお母さんにはやっぱり賛成できません。
でも、主人公が自由になることは母を傷つけることになるというのも事実であって、主人公はそこに慈悲を持っているとも言えます。
ん-、今自分に最も足りないと思われる慈悲の心が主人公にあったから、下す決断が違うのでしょうか。
おわりに
とても良かったです。
『52ヘルツのクジラたち』も近いうちに読んでみたいなと思っています。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。
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