読書感想文(287)佐々木閑『大乗仏教』(NHK「100分 de 名著」ブックス)

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回はまた仏教の本です。
今年は仏教の本を3冊以上読むことを目標にしていましたが、この本で7冊目になります。
このペースだと、今年10冊以上は読むような気がします。

感想

今回もとても良かったです。
以前読んだ同著者の二冊がとても良かったので期待していたのですが、本当に良かったです。
私はまだ初学者の域ですが、これから仏教を学びたいという人には佐々木閑氏の100分de名著シリーズを勧めたいと思います。

今回は、釈迦の仏教から大乗仏教への流れが解説されるとともに、大乗仏教の各宗派の特徴が述べられています。
以前、釈迦の仏教、般若心経、法華経については最近学んだばかりなので、良い復習になりました。
加えて、華厳経や密教、禅宗についても述べられており、こちらは大変勉強になりました。
元々何となく知っていることもちらほらありますが、佐々木閑氏はまとめて分類するのが非常に上手く、それぞれの宗派の特徴、共通点、相違点がとても明確でわかりやすいです。
他の仏教関連書籍は難しくて何を言っているのかわからない、ということがよくありますが、この本ではそれが全くと言っていいほどありません。本当にわかりやすいです。

以下、覚えておきたいことを箇条書きします。

・アショーカ王の時代に破僧の定義変更、違った解釈をしても全体会議に参加すれば破僧としない
・般若経は禅宗や密教で大切にされるが、浄土真宗や日蓮宗、法華宗ではほとんど唱えられない
・釈迦の仏教において、自我を捨てた善行は業にならない(?)
・般若経では「法身(=お経がブッダ)」
・般若心経はお経の中に自己複製プログラムを搭載(写経が功徳)
・融通念仏宗は「一人の念仏が一切の人の念仏と融通し合って、より大きな功徳を発揮する」と考える、レバレッジやメトカーフの法則に近い?
・天台宗は六世紀に中国の智顗が作った、天台山で最澄や栄西が学ぶ
・平田篤胤や和辻哲郎は法華経を批判
・法華経自身は「真実は愚かな人に邪説のようにうつり迫害される」とするので、周りの非難を気にしない(常不軽菩薩の話)→怪しいビジネスっぽい
・富永仲基、加上の説、大乗非仏説
・華厳経は主に十地品(悟りに至るためのプロセス)と入法界品(善財童子、53人の善知識)
・華厳経の世界観では、様々なブッダは盧遮那仏に収束される。インターネット全体が盧遮那仏で、個々のブッダがそれぞれの物のような感じ。つまり盧遮那仏は個として存在しなかまらもすべてのネットワークを覆い尽くす巨大な存在(一即多多即一)→仏教の世界観は数学に近いかも?矛盾の無いように世界観を構築していくイメージ
・日本に仏教が入ってきた時は奈良仏教・南都六宗。鎮護国家の為なので、律が欠落(?)
・密教の大日如来=盧遮那仏
・密教の特徴の一つに「曼荼羅」、大日如来を中心に、外側へと向かう慈悲と救済の構造、また外から中心に向かう悟りのプロセスが表される「大悲胎蔵正曼荼羅」と、『金剛頂経』の世界を図化した「金剛界曼荼羅」
・密教における修行の最終目的は「即身成仏(=生きたまま仏の境地に至る)」、そのために「三密加持の行=身密(印を手で結ぶ)・口密(真言をとなえる)・意密(宇宙の真理を心に思い描く)」
・涅槃経は釈迦の時代と大乗仏教の時代の二種類あるが、涅槃図で動物が集まるのは大乗仏教の方
・禅宗は経典をそれほど重視しない、禅は生活スタイル
・禅において自分の中の仏性に気づくとは「主観と客観、自己と世界が分かれる以前の存在そのものに立ち戻る」
・曹洞宗は壁に向かって只管打坐・修証一等、臨済宗は壁を背にして坐禅・公安(禅問答)
・禅問答で大切なのは答えが正しいかどうかではなく、その答えがどんな心の動きの中で導き出されたか。自分の心の中を探りながら煩悩を取り払っていく(この点、釈迦の仏教に近い)
・律宗は戒律の研究と実践
・鈴木大拙の著者は「日本固有の仏教をベースに書かれたものである」
・仏教の本質は、人をいかに生きる苦しみから救うか

今回、複数の宗派を色々と見ていると、やはり浄土教はあまり自分には合わないなと思いました。
そして、社会にとっても、これが広まるのはあまり良くないのではないか?と正直思いました。しかし、日本で最も広まっているのは浄土真宗だそうです。
一方で、これから日本がどうしようもなく行き詰まった時、人々にとって浄土教が救いとなる時が来るのかもしれません。
来世に期待するというのは現世に対する絶望から生じるのではないかと思うので、そうならないのが良いと私は思いました。

逆にいいなと思ったのは法華経ですが、法華経の最大の特徴とも言える「方便」には少し抵抗があります。
特に方便の悪用が蔓延る現代社会においては、どうしても方便のこの弱点を克服しなければならないのではないかと思ってしまいます。
浄土教とは別の形で、法華経をこの点において超越する教えがあればいいなと思うのですが、今のところそういったものはないのでしょうか……?
もし小中学生の頃にこの思想に出会っていたら、自分で新しく悟りを開いていたのかもしれませんが、今は正直考えるのに十分な時間が取れそうにありません。

また、岡潔が度々言及する道元禅師の曹洞宗や、光明主義についても、いつか学びたいと思っています。

おわりに

今回は結構長くなってしまいましたが、その分学びが多かったということでしょう。
まだまだわからないことも多いですが、少しずつ着実に仏教に対する理解が深まっている実感があります。
今後も勉強を続けていきたいです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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