読書感想文(94)金子みすゞ『金子みすゞ童謡全集② 美しい町・下』
はじめに
こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。
今回は金子みすゞの詩集です。
少し前から、毎晩寝る前に金子みすゞの詩を音読しています。
心がやわらかい気持ちになるので、オススメです。
この全集は全6巻あり、これは2巻目です。
感想
この巻は金子みすゞの詩の中でもトップクラスで有名な「大漁」から始まります。
朝焼け小焼け大漁だ
大羽鰮の大漁だ
浜は祭りのようだけど
海の中では何万の
鰮の弔いするだろう
金子みすゞの詩は、普段顧みられない立場を忘れない、優しい視点のものが多いように感じます。
この詩はまさにその一例です。
人間が喜んでいる一方で自然が悲しんでいると捉えることもできますし、もっと抽象化して、一つの事象を喜ぶ者もいれば悲しむ者もいると捉えることもできます。
自分と異なる立場の視点を常に忘れないというのはなかなか難しいものですが、できる限り気を配りたいと思います。
あと二つ、印象に残った詩を紹介します。
おねんねお舟
島から来た舟、おつかれか、
入り江の波はやさしいに、
ゆったり、ゆったり、おねんねよ。
おさかな積んで、はるばると、
ひろい荒海こえて来た、
小さい舟よ、おねんねよ。
島の人たちもどるときゃ、
重いお米を買ってくる、
青い菜っぱを買ってくる。
島から来た舟、それまでは、
やさしい波にゆすられて、
ゆったり、ゆったり、おねんねよ。
この詩は港にやってきた小さな舟を見ているのでしょうが、ここまで思いやれる視点というのはなかなか出会うことがありません。
情景としては、ただ小さな舟が波に揺られているだけです。
それを見て、これまでの苦労と、これからの苦労に思いを馳せ、つかの間の休息を見つめて舟を労います。
「ゆったり、ゆったり、おねんねよ」というフレーズは、音読してみると一層やさしさが感じられます。
海とかもめ
海は青いとおもってた、
かもめは白いと思ってた。
だのに、今見る、この海も、
かもめの翅も、ねずみ色。
みな知ってるとおもってた、
だけどもそれはうそでした。
空は青いと知ってます、
雪は白いと知ってます。
みんな見てます、知ってます、
けれどもそれもうそかしら。
子どもっぽい素朴な視点でいいなと思いました。
昔は色んなことが不思議で、辻褄が合わなくて、色々と考えたはずなのに、いつの間にか色んなことを考えるのをやめて大人になっていってしまいます。
「けれどもそれもうそかしら」と思う心を私も持っていたいです。
海の青とかもめの白がうそだとわかった後に、空の青と雪の白を疑うところも、素朴でいいなと思います。そうやって
連想して色んなことに興味を持ってゆく、そんな童心を忘れずにいたいです。
おわりに
この他にも素敵な詩がたくさんありました。
残り4巻もゆっくりと少しずつ読み進めていこうと思います。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。
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