読書感想文(96)さくらももこ『もものかんづめ』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は久しぶりにさくらももこさんのエッセイです。
前に読んだのはいつだったかな……と思って記録を遡ってみると、なんと去年の8月でした。
つい最近読んだつもりだったので驚きました。
時の流れの速さを感じます。

感想

今回も楽しく読みました。
さくらももこさんのエッセイはとにかく面白いんですよね。

漫画のネタには毎回悩まされるものなので、命がけではあったものの、盲腸になってみて、良かったなァ……と近頃では盲腸の評価も高まっている。
こうしてみると、私の人生ムダだらけだと思っていたが、ムダな事こそネタに使えて大切なものだと、恥かしながら我が人生に光明あり、の気配を感じている。

ムダな事こそネタになる、というのはその通りだなと思いました。
私がさくらももこさんのエッセイを初めて読んだのは去年ですが、それ以前から何かとネタを求めているところがありました。
他人に迷惑をかけない範囲でネタを作り続けていきたいという気持ちは今もあります。
子供の頃のイタい記憶を「黒歴史」と言い、隠したがる人も多いように感じますが、私はむしろこれからも「黒歴史」 たるものを創っていきたいと思っています。
まあふと冷静になって、「芸人になるつもりなのか?」と思ったりもしますが、そこを気にしてはいけません。
芸人の人はもっと真剣にネタを考えているし、芸人は面白いのだからそれに近づくのは良いことではないか、というよくわからない理屈が今の所通っています。

いろいろと工夫されている湯舟は、やはりそれなりに人気があるのだが、何の変哲もない湯舟はまるで人気がなく、ひとりもはいっていなかった。
私は安らぎを求めていたので、ゆったりはいれる方がいくばくかの工夫よりも快適だと判断し、迷わず何の変哲もない湯舟に足を入れた。そのとたん、全身の血が逆流した。
――熱い――
それは恐るべき熱さであった。こんな湯の中に、うっかり子供がふざけて『ザッブーン』などと言って飛び込んだら即死である。

今回一番笑ったのがこの場面でした。
めちゃくちゃ熱い銭湯の体験を思い出しつつ共感していたところに、子供が熱湯風呂に「ザッブーン」と飛び込んでいく様子を想像してしまい、ツボにはまりました。
多分面白さの中心は「ザッブーン」という言葉にあるような気がします。
「ザッブーン」と子供が無邪気にふざけて言っているところがポイントで、ちょっと高めの子供の声で「ザッブーン」と言いながら飛び込んでいく様が滑稽であり、またその先の「アッツ!!」と言うところまで想像できて面白いです。

"身内だから"とか"血がつながっているから"という事だけで愛情まで自動的に成立するかというと、全くそんな事はない。かえって血のつながりというものが、わずらわしい事である方が多いとすら思う。

今度は少し真面目な話です。
さくらももこさんの祖父についてのお話でした。
『ちびまる子ちゃん』の祖父・トモゾウは良いおじいちゃんのイメージがあったので意外でした。これは自分の理想の祖父を描いたとのことでした。
さて、家族の問題は私もよく考えることですが、まさにこの通りだなぁと思います。
最近、「クラスメイトなんてたまたま近所に住んでた同い年の子供が一箇所に集められただけなんだから全員と仲良くしろって方が無茶」という話を見かけました。同じように、家族だって選べないという点ももっと認知されたらいいなと思います。
ちなみに私は家族と仲が良くありませんが、極悪人の家族だとは思っていません。ただどうしても合わないので、できるだけ距離を置いた方がお互いの為なんじゃないかなぁと昔から思っています。
これは自分が家庭を持った時にもそうですし、それ以外の関係でもお互いが人間であることを忘れないようにしたいです。

最後に、お茶の水女子大学教授の土屋賢二さんとさくらももこさんの対談があるのですが、これも面白かったです。
特に印象深かったのは、さくらももこさんが昔から何故怒られるのかわからなかったという話です。
例えば授業中に居眠りしようとも、誰にも迷惑をかけていないのだから怒られる筋合いはない、というものです。
同じようなことを私も昔から思っていましたが、さくらももこさんほどキッパリと自分を信じることができていなかったように思います。
悪いと思っていなくても、誰かに「悪い」と言われてしまうと多少気にしてしまいます。それを物ともせずに飄々と生きていけるのはすごいなぁと思うと同時に羨ましくもあります。
逆に、私は人を叱るのがとても苦手です。だって自分が悪いと思っていないのに、叱るなんて的外れです。授業中に居眠りをしている生徒は自己責任だなぁと思ってしまいます。そう考えると、やっぱり叱る人って親切なんですよね。そっちの方が相手の為になると信じて嫌われ役をするんですから。まあ親切の押し付けとの境界が曖昧なので少し難しい問題ではありますが。

おわりに

とても読みやすいので、あっという間に読み終えてしまいました。
また他のエッセイも読んでみたいです。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。

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