読書感想文(334)太宰治『晩年』(新潮文庫)


はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回はまた太宰治です。
先日、青森にある太宰治の生家を訪れました。
めちゃめちゃデカかったです。

本当は訪れる前に読み終える予定だったのですが、意外と読み進める時間がなくて、結局帰途に読み終えました。

感想

今回、太宰治の故郷を訪れるにあたって色々と読んだのですが、正直自分はやっぱりあまり合わないなぁと思いました。
初めて高校生の時に『人間失格』を読んだ時もピンとこなかったのですが、大学生の頃に読んだ『斜陽』はかなり好きでした。『新ハムレット』と『ヴィヨンの妻』は作品によっては面白かった気がします。
それ以外の作品は最近まで読んでいなかったのですが、何となく合わないなぁと感じました。

世間的に評価が高い作品を楽しめないのは、自分のリテラシーが足りないようで悔しいのですが、なぜなのか考えてみると、作者が度々顔を出してくること、それも保身のような形で出てくるのが気に障るのだろうと思いました。
『人間失格』で書かれるように、他人に調子を合わせるための作為を度々感じるのですが、私は現実でそういう媚の売り方をする人があまり得意ではありません。
太宰の作品はそういう太宰自身の影が作品に色濃く出てくるので、親しむことができないのかもしれません。
文学的な価値は高いのかもしれませんが、現時点ではやはり私には合わないのだろうと思います。

今回読んだ『晩年』は短編集ですが、一番楽しめたのは『ロマネスク』でした。
仙術太郎、喧嘩次郎兵衛、嘘の三郎、それぞれ面白かったです。
これは小説として単に楽しめる上に、比喩の部分もわかりやすく感じられて、変な言い方ですが、程良い難易度だと感じました。

人間を見物していると思っていたら、実は自分たちが人間に見物されている動物園の猿だった、という「猿ヶ島」も面白かったです。
これは解説に文壇の風刺と書かれており、なるほどと思いました。

最後に、この本とは関係ないのですが、旅先で太宰の故郷に向かう際に乗った「太宰治号」の中で見かけた言葉を紹介して終わります。

昨年度に正規雇用の仕事を辞め、非正規雇用の身となって旅をしている自分にぴったりの言葉でした。
「苦しい」というのは少し違う気もするのですが、何かから逃れたいような気持ちはある気がします。

おわりに

太宰の作品は今の自分には合わないと感じました。
けれども、いざという時、何かとんでもなく苦しくなった時、大宰の作品を読んでいたことが救いになることもありそうな気がしました。
それが良いことなのかどうか、今はわかりませんが、ともかく人生の糧にはなっているように感じました。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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