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プロレス英文読解教室:コウモリ吊り和訳落とし編

こんにちは、札幌で英語講師をしているアラと言います。

楽しかった東京オリンピックが終わっちゃいました。札幌は競歩とマラソンが行われたとたんに気温がさがり、いきなり秋の気配です。

さて今日のプロレス英文読解教室は、スターダムの林下詩美選手に関する文を取り上げたいと思います。

林下詩美選手とは

林下詩美選手は今、ワールドオブスターダム、通称赤いベルトの13代目のチャンピオンであり、現在6度の防衛を果たしている文句なしの最強レスラーです。デビュー当時はビッグダディこと林下清さんの三女ということで注目されていましたが、今はそのパワーとスピリットでスターダムに君臨していると言っていいでしょう。

あの試合がすごかった

僕が個人的に印象に残っている試合は、2020年の一月、星輝ありさ選手が当時保持していたワンダーオブスターダム(白いベルト)に林下選手が挑戦し、星輝選手が防衛を果たした試合です。この頃の林下選手は今のようなパワーでおしていくファイトスタイルではなかったのですが、身軽で華麗な足技を次々繰り出す格上の星輝選手を相手に精神力だけで立ち向かっていく林下選手の姿は、現在の豪快な技で観客を魅了するチャンピオンの片鱗だったのかもしれません。試合中リング外での戦いとなり、リングで一番硬い部分でお馴染みのエプロンに顔面を叩きつけられた林下選手。顔を上げると額から流血していました。今のプロレスでは、デスマッチでない限り流血シーンは珍しくなっています。そういう中で、白い肌に鮮血がつたって強烈な印象を残す光景でした。そして、血を滴らせながらもまったく怯むことなく、ある種淡々と戦う林下選手に、僕はプロレスラーとしてのデカさを感じました。

流血といえば

最近もジュリア選手が同じチームの舞華選手と同門対決をした際に額から流血するシーンがありました。このシーンもジュリア選手のプロレスラーとしてのプライドが見えるようでしたが、一方でよくできたシーンでもありました。ジュリア選手は自分からどんどん話題を作っていく選手です。これは今の女子プロレスでは本当に素晴らしいことだと思います。さまざまなエンターテインメントが溢れる世の中で、女子プロレスを見てもらおうと必死の努力をしている。こういうことって言うのは簡単ですが、実行するのは難しいものですよね。あの流血シーンは、その努力の一つの形だったろうと思います。

プロレスラーは強いんです

一方、林下選手の流血シーンは、なんというか、プロレスラー林下詩美には当然こういう日もある、という風に見えたのです。プロレスラーなんだから、頭から血ぐらいでるさ、という風に。強いなあ、これがプロレスラーなんだよなあ、と思わされました。林下選手はここ一年で体もデカくなったけど、まず気持ちがデカい。そこがカッコいいところです。

今日の英文

さて長くなりました。今日の英文も英語版Wikipediaからです。文中の番号はもちろん僕がふったものです。

①On August 18, Hayashishita entered the 5★Star GP tournament. ②Hayashishita managed to win her way ③to the finals where she lost to Mayu Iwatani.(Utami Hayashishita - Wikipedia)

2018年のファイブスターグランプリについての文です。ファイブスターグランプリはスターダムの夏の名物大会ですね。今年も開催中です。

①の文はまったく問題ないでしょう。「8月18日、林下選手はファイブスターグランプリトーナメントに出場した。

理屈をこねる前に

今回の文はまったく難しいところがありません。それでも取り上げたのは、英語の感覚とか文法とか、そういういっちょまえなことを言うまえに、覚えると便利なものは覚えるべきだ、と言いたいからです。

日々、中高生と一緒に英文を読んでいますが、覚えるべきことを覚えていない子は、同じ英文でも読むたびに違う訳になってしまいます。そうなると、自分が何がわかって何がわからないのかもわからない状態です。これは辛い。意味が取りづらいなーと思って読み直したらさっきとは違う訳になってしまうのですから、当然「読めた」という実感はありません。

翻って、苦労しながら丸暗記をコツコツがんばっている子は、覚えた単語の訳がアンカーの役割を果たして、品詞、文法、文脈の検討にスムーズに入れます。考えた訳がおかしくても、単語の意味はわかるのでおかしい部分を絞り込めるのです。だから単語の紛らわしい用法や、各文法事項が表しているニュアンスを意識的に学んでいくことができます。

②の文を再掲しましょう。

②Hayashishita managed to win her way ③to the finals where she lost to Mayu Iwatani.

この文では、manage to V「なんとかVする」と、win「勝ち取る」は丸暗記しておくべきです。とくにwinという単語の「勝つ」という意味は誰でも知っているからこそ、一度辞書や単語帳で確認しておくべき単語です。カタカナになっている英単語や、馴染みのある英単語は必ず一度はその正確な意味を確認しておきましょう。これを怠ると大事な本番で足を掬われます。

で、「林下選手は、なんとか彼女の道を勝ち取った」と直訳できますね。

③to the finals where she lost to Mayu Iwatani.

ここは、「どこへ」の道なのかを表しています。前置詞toは到着地点を表すのが基本の使い方です。I go to school.のtoです。だからto the finalsで、「決勝戦への」道だったことがわかります。決勝戦は当然1試合しかないんですが、なぜかfinalにはsをつけます。習慣的なもののようですね。

その直後、関係副詞whereが現れます。関係詞の理屈を学習するのは楽しいですし役にも立ちますが、理屈と実際の読み方の間には開きがあることも多いです。今回も理屈は飛ばしましょう。whereだから場所のことを言っているのはわかるわけです。なので「そこで、そこでは」と訳してしまいましょう。「そこで彼女は岩谷麻優選手に負けた。」となりました。「そこ」というのは当然「決勝戦」のことですね。

ではまとめましょう。

On August 18, Hayashishita entered the 5★Star GP tournament. Hayashishita managed to win her way to the finals where she lost to Mayu Iwatani.

8月18日、林下選手はファイブスターグランプリトーナメントに出場した。林下選手は、なんとか彼女の決勝戦への道を勝ち取った。決勝戦で彼女は岩谷麻優選手に負けた。

ここまで直訳できたら、事実関係を取り違えることはありません。日本語としてはぎこちないですし、受験でも和訳問題をこのレベルの日本語で答えたらガッツリ減点でしょう。でも、スピードと正確さを両立させて読むのには十分です。そのためには、覚えるべきことを覚え、迷いを減らすことが第一歩です。難しい文法はそのあとからでも問題ありません。

受験は暗記?

受験科目には丸暗記するべきものが多いですよね。英単語、古文単語はもちろん、社会科目全般、化学、生物も覚えるものはたくさんあります。数学も暗記だ、という人もいます。どうしてこれほど暗記を課されるのかというと、誰でも時間さえかければできる、と思われているからでしょう。人によってかかる時間は違うけれども、まったくできないということはない。努力すればなんとなるはずだ、と多くの大学が考えているのだと思います。そして、大学に行きたい、と思う人の全員にこのことは当てはまっていると、僕も思います。

1回15分、1日3回から

暗記なんて意味はない、と言いたがる大人が多いですが、じゃあその無意味な暗記から離れて、超絶有意義な勉強を当の大人たちがしているかというと、そんな様子もみられません。もちろん暗記だけでどうなるわけでもないけれど、やっといて損はない暗記もあるんです。英単語帳なんてその筆頭でしょう。とりあえず15分の暗記タイムを1日3回からやってみませんか?

では、また。

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