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「おもちゃ界の働き方改革」あるいは「おもちゃ版:夏目漱石『こゝろ』」としての「トイストーリー4」[後編]~あるいは、こんなタイトル②~

おはようございます。僕は映画館のキャラメルポップコーンが普段も食べたいんです。でも、市販のキャラメルポップコーンはどれもしっかりキャラメルがかかりすぎていて、あの微妙にちゃんとかかっていないキャラメル感のあるポップコーンがなかなか見つからないので、それっぽい商品を見つけた方ご一報ください。あらいです。

今日は「あるいは、こんなタイトル」の第二回、「トイストーリー4」についての後編です。前後編にするつもりはなかったんですが、ピクサーの本気度に感化されて僕の文章も止まらず、思ったより長くなってしまったので分けようとなったのでした。あ、今回は最初からすでにご覧になっていることを想定しておりますので、未見の方はお気をつけください!!今回は主に、お話ししていないもう一つの改題、


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について書いていこうと思います。

突然ですが「こゝろ」の話をします。

僕はこの記事を書くに当たって2回映画館で鑑賞してきたんですが、最初は帰省した際に妹と母と一緒に見てきました。その時見終わって僕の第一声は、「こゝろだったね...」でした。

「夏目漱石のこゝろ」と言われても、ぴんとこない方も多いと思いますので、端的に要旨をつかむのにぴったりの動画をご紹介いたします。最近オリエンタルラジオのあっちゃんが、Youtubeチャンネルをやっているのを皆さんご存じでしょうか。「しくじり先生」でやっていたような凄腕面白プレゼンが毎日投稿されて、見応えもわかりやすさも満点なので、最近僕自身がはまっています。そのチャンネル内に「エクストリーム文学」という名作文学のあらすじと、作品の読み解き方を講義形式で紹介するシリーズがあり、そちらにこゝろが紹介されていますので、そちらをぜひ見てみてください。

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「こゝろ」、というと、高校の授業等で学んだ方がおそらく多く、「先生とKとお嬢さんの三角関係の話でしょー?」みたいなイメージかと思います。ですが、紹介した動画後編にて語られているのは、「こゝろ」という作品は、「明治天皇の崩御という絶対的な主従関係の崩壊を受けて、乃木希典が殉死したことへ思うことに関する明治、大正それぞれの文豪の考え方の対立」が、「先生」を巡る三角関係の恋愛の話に半ば隠されるような形で描かれることによって、他でもない「時代性の変化」を描いたものいうことだということです。明治天皇と自分の「主従関係」を重んじ殉死した希典を「なんと忠義な者だ!!」と立てる関係性を重んじる明治の人間と、「この時代になんと遅れたことをやっているんだ、そんなことをしても何もならない」という個人を切り離して考える大正の人間。

既視感のある構図

ここまで読んで勘のいい方ならこれから僕が書こうとしていることがなんとなくわかるかもしれませんが、このような対立構造と、ラブストーリーベースでそれが語られるという構成は、「トイストーリー4」の中にも見いだすことができます。全編を通してベースとなる、ボーへの憧れと恋愛感情(めいた者)を描くラブストーリー描写は言わずもがな共通点です。(ラストのシーンは、見方によってはボニーとボーとウッディの三角関係とも捉えられる気もします)また、前編でも話した「おもちゃと所有者」の関係性は「労働関係」ではなく「主従関係」とも捉えることもできます。ボニーに遊んでもらうこと、さらに本心を言うならばアンディに遊んでもらうことをずっとひたむきに「ただ一つの幸せ」として生きてきたウッディと、その主従関係から脱し、たった一人の個人「野良おもちゃ」として生きていくことで自分を変えたボー、これは「こゝろ」で描かれた明治、大正の移り変わりによって起きた世代間ギャップと重なるところがあります。

この映画を今日本で見るということがいかにエモいか

さて、今年は日本にとって元号が変わった時代の転換の年、令和元年です。あちこちで平成から令和へ、と特集が組まれ、数々の知識人が新たな時代について語っていましたが、このタイミングでみる「トイストーリー4」の「こゝろ」にも共通するメッセージは身に迫るものがあるように思います。

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ウッディが最初から素直にボーの元にに向かわなかったように、人は新たな価値観や生き方に触れた時、特にそれが今まで自分が追いかけていた幸せや価値観を否定するようなものであるとき、大きく揺れ動き、時に拒絶反応を示します。この新たな時代の始まりに、自分がどう行動するのか、たとえ腕が壊れても接着し、新たな仲間とピンボールの中で夜な夜なパーティーを楽しむのか、または、今日は遊んでもらえるかという切迫感に包まれながらクローゼットの中で出番を待つか、あなたは新時代どんな生き方をするのか、そんなことに思いをはせながら見る「子供向け」映画も、なかなかいいものですよ。

で、どうよ、ピクサーすごくない?

 このように、ピクサーの映画は、ちゃんと圧倒的なエンタメ性を保ちつつも、鬼クオリティーの脚本で、大人すらも胸を打つような強いメッセージ性を持った素敵な作品が多いです。「どうせ子供向けの映画でしょー?」となめてかかっていると痛い目見ますので、これまで避けてきた方は、夏休みにトイストーリー一気見、もいいかと思いますよ。

ということで、トイストーリー4に関しては今回で完結です。僕はこのまま二ノ国を見に行きます。少しでも今回の記事を面白いと思ってくださった方がいらっしゃいましたら、投げ銭していただけるとうれしいです。ではまた。

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