ヲタクよ、好きを曲げること無からんや~アニメ「ゲーマーズ!」を見て~
最近、多くのアニメがYou Tubeなどで無料公開されてますよね。引きこもることで日々世界を救っているオタクとしては嬉しい限りです。
それもあって、最近は気になっていたけど手が出ていなかったタイトルを見まくっているのですが、今日は最近その中でも特に良かったアニメ「ゲーマーズ!!」の話をしたいと思います。
好きを貫くこと、好きと共存すること
一言で言うならば「ゲーマーズ」は盛大な「ヲタク賛歌」とも呼ぶべき作品です。
もっと言えば「好き」を貫くことと、他人の「好き」と付き合っていくことを非常に切実に描写した青春群像ラブコメです。
これから僕が魅力を語っていくわけですが、何はともあれ第一話を見てほしいというのが正直な気持ちです。
↑登場人物まとめです、ご参考までに(引用元:https://fantasiabunko.jp/sp/201503gamers/)
展開としては、
カースト下位ボッチヲタク主人公が、突然カースト超上位学内アイドルヒロインに話しかけれて、突然親密度バク上がり!?(なんで私が東大に!?)
という最近のラブコメ超王道ではあります。
でも、既に一話からぐっと来てしまうのが、その親密度バク上がりの理由。
主人公の雨野は、大のゲーム好き。ヒロインの一人、天道さんに前述の通り話しかけられるのもGEOと思わしき店のゲームソフト売り場での出来事なんです。
そこで雨野はヒロイン:天道さんもゲームが好きだということを知り、舞い上がって自分のゲーム愛をぶちまけてしまいます。(俗に言う「早口ヲタク」というやつですね)
ひとしきり語り尽くしたあとで、ふと我に返って「完全に引かれた」と後悔するんですが、天童さんもゲーマーですから、ちゃんと分かってくれるわけです。
ここでまずうるっとくる。周りに「わかりて」がそんなにいないとき、細かいたとえ話や、込み入った趣味趣向の話が通じる空間ほど楽しいものはない。
そしてこの第一話、ある意味テレビアニメでしか許されない「そんなのずるじゃん」という演出がなされています。
その演出というのは、主人公も含めた登場人物の言動にいちいち
「とか言っていますがこのあと二人は密会を繰り返すことになります」
というような、その後の展開を示唆するテロップが入っているのです。こんなの映画でやろうものなら各界のご意見番から批判待ったなしですが、TVアニメならぎりぎり許容できるあたりでしょうか。
とにかく、「そんなの気になるに決まってるじゃん!!」って感じなんです。
そういうイロモノな演出もありつつ、伏線オタクもちゃんと満足するような構成の妙もしっかりあります。
”そっと”好きでいること
安易な展開と見せかけてしっかり引きのある第一話ラスト。
そのゲームソフト売り場での出会いをきっかけに、雨野は天道に「ゲーム部」に入らないか、と勧誘され見学することになります。
そこでは新たな同級生の友達もでき、キャラの濃くて面白い先輩たちもいるし、学園一のヒロインとも一緒にいられる。ここまで見てきたオタクくんたちなら入りたくなって当然の空間です。
ですが雨野は、その勧誘を断ります。ゲーム部で行われているゲーム、ひいてはその活動は
「格闘ゲームやFPSなど、プレイヤーの技量に依存した競技性の高い」
ものであり、
「それらを先輩や同期と交流しながら、切磋琢磨してスキルを磨く」というものでした。
ギャルゲーからソシャゲ、RPGまで興味の持った作品は何でも「楽しみたい」雨野にとって、それはすんなり受け入れることのできない空間だったんですね。
勝敗と楽しさ、上達と楽しさ、そして、好みとやりたいことの違い。そんなものが凝縮された1話。
そしてその裏切り的展開の行動動機が、作品全体の強いメッセージと完全にリンクしている。いろんな意味で必見の第一話です、
リア充の逆襲
そして第二話以降物語に大きく関与してくることになる、主人公の友達ポジションキャラ,上原。
彼との交友を通して描かれるのは、好きを貫く事とそれを理解してもらうこと、それに付随して見えてくる、なりたいものとなれるものの違いです。
上原は、かつてガリ勉で内気だった自分を変えようと、いわゆる「高校デビュー」をしたキャラです。今ではすっかりクラスの真ん中で、カースト上位メンバーとつるんでいます。
その中に馴染んでいるように見えて、じつはモヤモヤとした思いを抱えている上原。
カースト上位グループ特有の同調圧力と、顔色を伺いあう”点数稼ぎのような”交友関係に嫌気が指していることも自分で気づいていました。
そんな“なりきれなかった”カースト上位男子である上原が吹っ切れるきっかけとなるのが、雨野との出会いです。
顔色を伺い合うことに疲れている上原は、実は人一倍顔色を伺える人間でもあります。
だからこそ、考えていることは透けて見えるものの、はっきりしない雨野の言動にイライラしつつ、昔の自分とその姿を重ねます。
ウジウジと教室の隅でどうしたらいいかわからず、悶々としていたガリ勉の頃の自分を。
そんなかつての自分のような雨野に上原は変えられ、雨野は上原に変えられていくこの構造の素晴らしさ。
そして、この二人が出会うのはゲームセンター。
なんだかんだで二人でゲームをすることになるわけですが、雨野は純粋な興味でゲームを選んでいるので、特段ゲームが凄くうまいというわけではない。そして上原は、物事の構造や状況把握が早いので、どんなゲームでも比較的コツを掴むのが早い。
二人でゲームをする中で思い出すのは、上手い下手ももちろんあるけれど、終わった後に「楽しかったね、次は何で遊ぼっか」と言える、
顔色を伺い合う余地のない、純に楽しいコミュニケーションの存在なわけです。
ですがその後、二人は衝突することになります。
上原は友達とゲームセンターに来ていたところを抜け出して雨野と遊んでいたため、二人はそのイケイケグループと出くわします。
するとその瞬間、雨野は気まずそうな表情を見せ、その場を抜け出してしまうのです。
あっけに取られる上原でしたが、仲間に適当な言い訳をつけ、上原は雨野の跡を追います。
そこで「なぜ逃げた?」と上原は問い詰めます。
それに対して逃げるつもりはなかったと言いつつ、雨野は「だって上原くん、『リア充』じゃないか」と締めくくります。
これに対して上原は激昂します。
今自分が充実しているように見えるのは、他でもない自分の努力のおかげである、と。
努力して己を変えようとせず、人をいろいろな言葉でくくって(ゲームが下手な自分を隠す意味でも)自己保身に走っているようなお前に、心のどこかで蔑んだように「リア充」と呼ばれるのはゴメンだと。
人をくくると見えなくなるもの
このシーンからすごく切実で、かつ、ありきたりでない強いメッセージ性を感じたんです。
ふさぎ込んでいるあなただって、「いつの日かリア充の仲間入り」できる。
そういったメッセージ性を孕む作品は少なくないですが(相当意地悪な言い方をするなら、ですがね)、そういった「リア充至上主義」的なものへのカウンターパンチのように感じました。
人をくくると、自分も相手もしっかり見えなくなる。
だからこそ、何かにひたむきに頑張る人、なりたい自分を貫く人、好きを貫く人はかっこいい。はっきりと「その人」が見える。
そして雨野もまた、自分の好きを貫いた結果そこにいる人間なので、これには反抗します。
確かに自分のスタンスを曲げない、と自分の実力の無さや自分の意気地なしな部分に言い訳を重ねてきた節はある、それでも自分はやっぱりゲームの楽しさを一番に考えたい、そして自分が好きだと思う人を悪く言うのは許せない、と。
この意見衝突を経て,二人は芯の意味で友だちになります。
好きを貫くというのは、そしてそれを貫くのは難しい。それ以上に「好きな自分」をなりたい自分にすることも難しい。
誰しもが一度は抱える悩みだからこそ、この作品は心に刺さるのかなと思います。
”だらっと”好きでいること
最後に語りたいのは、「ソシャゲ」に関する描写です。
ソシャゲというのは、僕は比較的なめられがちだと思います。確かにものによりますが、ことスマホRPGというのは、「作業感が強くて単純なもの」と(実際そういうところも多分にあるとわかった上ですが)なめられがちです。
雨野も作中で(グラブルに非常に酷似した)ソシャゲをプレイしており、天道さんからは「雨宮くんってそういうのもやるんだ」と含みのあるいい方をされています。
でも、僕はソシャゲが好きです。だらっと、ゆるっと楽しめるのが好き。
小さいことPSPやWiiなどを買い与えられなかったのもあって、一番ゲームが身近になったのはスマホを持ってからなので。余計思い入れがあるからかもしれません。
劇中にソシャゲを表現する言葉で「ゆるっと楽しいの大事ですよね」というのがあって、不覚にもうるっと来てしまいました。
もしサブカル力検定、なんてものがあったら「ゲーム」の科目は3割も取れなそうな僕でもよく分かるゲームの話題だし、ソシャゲが好きな自分も認めてあげられるような、そんな気がして。
あとは、ソシャゲ独特の、顔も見えないしハンドルネーム同士で呼び合うけど(ゲーム内での)関わり合いは多いという、
「SNS以上リアル未満」なあの距離感へのワクワクみたいなものも描写されていて、そこもぐっと来ました(しかもその顔の見えないフレンドの正体も物語の展開に大きく関与していたり)。
そして、何もソシャゲだけではなく、「だらっとゆるっと何かを好きでいること」を肯定してくれる作品でもあるなと思います。
思い入れや、大義名分は、あったほうが好きは伝わる。そのゲームで実績があれば、より伝わる。
でも世の中に漂う多くの「好き」という気持ちは、もっとラフで、もっと曖昧なもののほうが多い。でもそれを表明する場は、意外と少ない、
でも「ゲーマーズ!」を見ていると、そんな感情のことを大事にしたくなる。人の「好き」をもっと見てみたくなる。
オタク心をあらゆる角度からくすぐって来る作品に出会えてよかったです。
まだまだプレゼンしようと思えばいくらでもできます、
勝ち負け、とゲームの関係性をこれ以上ない形で表したシーンが素晴らしいことだったり、
変化していく作家性の存在を認めつつも好きを貫くことって大事だなぁと思わされる話だったり、
第6話までの構成が本当に素晴らしいことだったり。
豊永利行の天然ジゴロっぷりが「デュララジ」を彷彿とさせるところが最高だったり、
魅力を挙げればきりがないです。
でも、あまりに長くなってしまうので、それらは見て確かめていただけると。
とにかく、
自分のいろんな感情と、自分の外にあるいろいろな人の感情や趣味趣向に揉まれながらも、恋愛だって趣味だってゲームだって
「好きなものは好きなんだもん」
と高らかに謳うことを全肯定してくれる本当に素晴らしい作品です。皆様ぜひとも「ゲーマーズ!」を見てみてくださいな~
今日はこのへんで。
それでは。
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