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古事記由来の新土産「なごや菓八菓」お目見え~ラジオで人気の銘菓も

 三題噺です。和菓子と古事記とラジオでまとめてみます。
 名古屋商工会議所がプロデュースして、「あたらしい名古屋の和菓子土産コンテスト」を開き、八つのお菓子が選ばれました。3月3日にジェイアール名古屋タカシマヤ地下1階の売り場「銘菓百選」の改装に合わせて、「なごや菓八菓」(なごやかやか)としてお披露目されます。
 なごや菓八菓の名前の由来は、古事記の記述がヒントになっているそうです。時の天皇が不老不死の言い伝えのある「ときじくのかくのこのみ」を探させたとあります。この果実がお菓子のルーツといわれているようです。
 「古事記 現代語訳」(角川文庫)を開くと、「時じくの香(かく)の木の實」の章がありました。持ち帰ったものは「蔓の形になっているもの八本、矛の形になっているもの八本」でした。果実が紐につながれた状態のものが「縵八縵」(かげやかげ)、果実が枝についたものが「矛八矛」(ほこやほこ)という表記もあります。会議所の担当者は、「どちらにも名古屋の市章の八の字が使われていて、末広がりで縁起が良い」と、語感を生かしたネーミングにしたそうです。


 先日、なごや菓八菓のひとつ、名古屋市南区の一朶(いちだ)の「木の実のおこし」を試食しました。木の実とお米でつくる伝統のおこしとが組み合わされ、キャラメルでコーティングしてあります。コーヒーにも合う味でした。
 名古屋商工会議所は当初、出張で名古屋を訪れたビジネス客のお土産を考えていました。ところが、コロナ禍で出張が減り、まずは地元の人に和菓子の魅力を知ってもらうことにしたそうです。
 名古屋は江戸時代の尾張徳川家の時代から茶の湯を好み、町人の間にも茶道が流行し、茶席用の菓子などの和菓子文化が育まれてきた土地柄です。市内には300年を超える老舗菓子舗が多いのもうなづけます。
 駆け出し記者だった頃の苦くて美味しい思い出があります。熱田神宮近くの店に取材に入ったら、「一服して」と抹茶を点ててくれたのです。作法も知らず、冷や汗をかきました。思えば抹茶や上用のお菓子のおもてなしは、尾張名古屋の文化のひとつだったのです。

 先日、地元の東海ラジオから名古屋の銘菓「生なごやん」(写真は、敷島製パン提供)を番組のパーソナリティのタクマさんが紹介したところ、リスナーからの反響がすごいとお知らせがありました。「近所のコンビニで発見!美味しい」「仕事の帰りに妻から買ってきてと言われた」など、メールなで反響が続々と寄せられているというのです。
 もともと、60年を超える敷島製パンのロングセラー「なごやん」があり、同社の創業100周年を記念して昨年6月に新しい製法で売り出したものです。東海ラジオ編成部の徳丸敦也さんは、「高いポテンシャルを持った商品ですが、ラジオのパワーが後押しして、ボディーブローのようにジワジワと効いているのでは」と分析していました。

 なごや菓八菓も、潜在力のある和菓子店の職人さんが、それぞれ工夫を凝らして新しさを出しています。これから、名古屋商工会議所が販路拡大の知恵を絞り、百貨店が和菓子の顧客を呼び込んでいけば、地元の人や出張客の口コミで評判が広がっていくのではないでしょうか。
 「知っとりゃーすか。なごや菓八菓の名前は古事記からきとるって」
 「当たり前だぎゃ。古事記の最古の写本は名古屋の大須観音(北野山真福寺)にある国宝だでよ」
 ラジオの番組で、こんな名古屋自慢が聞こえてきそうです。
(2021年2月24日)


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