見出し画像

調味料ボトルで初の水平リサイクル~ミツカンが創業の地・半田市と協定

 日本のペットボトルのリサイクル率は、9割近いと思っていました。ところが、海外からは「ボトルtoボトル」でないとカウントされず、2割とみなされているそうです。
 ペットボトルを粉砕した樹脂の多くは、シートや繊維に再利用され、使用後に焼却処分されてしまいます。「ボトルtoボトル」の水平リサイクル、特に成分が多岐にわたる調味料業界の取り組みが急がれていました。

協定書を手に半田市の久世市長(右)とミツカンの吉永社長兼CEO(6月28日、半田市役所で)

 調味料大手のMizkan(ミツカン、本社:愛知県半田市)と創業地の半田市は6月28日、「資源循環型社会の実現に向けたペットボトルの水平リサイクルに関する協定書」に調印しました。
 協定の主な内容です。半田市は家庭から排出されたペットボトルを収集、ミツカンの指定リサイクル業者に引き渡します。ミツカンは指定リサイクル業者にて適正に水平リサイクルを行い新しく生まれ変わったペットボトルを一部商品に再利用していきます。これによって両者は市民、消費者のゴミ分別の意識醸成を期待するというものです。
 調印後の記者会見で半田市の久世孝宏市長は「半田市は環境計画のなかで資源循環型社会実現を掲げている。地元企業と取り組めることに意義があると感じている」と力を込めました。
 ミツカンの吉永智征社長兼CEOは「最初の協定を創業の地の半田市と結べたことを大変うれしく思っています」と述べています。
 ミツカンは2018年に「ミツカン未来ビジョン宣言」を打ち出し、人と社会と地球の健康を掲げてきました。その一つとして、プラスチック資源の有効活用として、ペットボトルのリサイクルの取り組みを進めています。
 2019年にキッコーマン、キューピー、日清オイリオグループとミツカンの4社で安全性評価を実施。2022年4月に成果を論文で発表したことで、調味料・食用油の「ボトルtoボトル」へのリサイクル体制が整いました。
 論文は2022年4月にミツカンパートナーズ品質環境部の近藤康一さんを責任著者として発表。2023年6月に富山市で開かれた日本食品化学学会で第18回論文賞を授与されました。

日本食品化学学会で第18回論文賞を授与された近藤さん

 近藤さんは飲料と調味料との違いを記者会見で説明しました。飲料水が中性に対して、調味料は酸性。ペットボトルへの充填温度は常温に対して、調味料は常温より高く、不純物が溶け出しやすいとのこと。
 安全性評価の研究では、1000倍汚れたペットボトルを準備し、実際にリサイクル工程を通過させてリサイクルペットボトルを生成。その後、疑似溶媒を入れて保存し、疑似溶媒中に溶け出した化学物質の量を分析したところ、厚生労働省が定める基準値を下回ったことがわかりました。
 ミツカンは自社商品の8割が家庭用で、半田市で年間400トンを回収する見通しです。今後、どれだけ回収率を高めて再生材の原料を確保できるかが課題といいます。すでに今春、水平リサイクルによるペットボトルを使用した「黒酢飲料500ml」シリーズ(希釈タイプ)で採用。10月には半田市との協定による「ボトルtoボトル」での製品化を目指したいとのことでした。
 久世市長は「ミツカンさんのことを多くの市民が特別の企業だと思っているので、リサイクル品が商品になっていくことで確実に意識は上がっていく」と期待します。
 半田市はユネスコ無形文化遺産に登録された「亀崎潮干祭山車行事」や5年に一度31輌の山車が勢ぞろいする「はんだ山車まつり」(https://note.com/aratamakimihide/n/ne44e81e3f605)で有名です。今度は、調味料の「ボトルtoボトル」の産官学連携の先進地として、海外からも評価を得たいものです。
(2023年6月29日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?