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復興五輪と再生メダル~都市鉱山を開拓した愛知の企業

 復興五輪が開幕し、各国の選手の健闘が光っています。表彰式で授与される金、銀、銅メダルは、これからの五輪の遺産となるかもしれません。なぜなら、ゴミとして処分されることが多かった小型家電や携帯電話など「都市鉱山」から産み出されたメダルだからです。
 「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は、2017年4月から2019年3月まで実施されました。全国の参加自治体による小型家電の回収ルートと、NTTドコモによる携帯電話の回収ルートの二本立てです。
 回収された量は、自治体分が約7万8985トン、NTTドコモ分が621万台でした。小型家電や携帯電話は専門業者の工場で破砕されます。細かくなった部品を特別な機械で鉄や非鉄、プラスチックなどに選別します。
 その結果、金32㌔・㌘、銀3500㌔・㌘、銅2200㌔・㌘が確保できました。大会で使う約5000個のメダルができるといいます。まさに宝の山です。
 参加自治体数は、スタートした当初624自治体でしたが、プロジェクト終盤には国内の自治体の9割にあたる1621自治体に広がっていました。
 参加自治体の事務局を務めた企業が、東証マザーズに上場しているリネットジャパングループ(名古屋市)でした。環境省・経済産業省の認定事業者として、全国の自治体と連携したパソコン、小型家電の宅配便回収とリサイクル事業に取り組んでいました。
 2016年10月には本社のあった愛知県大府市、同市内の至学館大学と産官学の連携をして、「都市鉱山メダル連携促進委員会」を発足させています。発足式で黒田武志社長は、東京オリンピックで「都市鉱山メダル」が正式に採用されることを目指すとして、自治体による小型家電リサイクルのイベントや住民への普及・啓発、署名活動を産官学で取り組む決意を示していました。発足式には、至学館大レスリング部の五輪メダリストたちも参加しています。
 黒田社長の取材をしたのは2015年でした。黒田社長は1989年にトヨタ自動車に入社。早くから起業を志し、1998年に退社しました。2000年にネット中古書店を設立して、「1年間で最も中古本をオンラインで販売した」としてギネス世界記録に認定されています。
 当時から都市鉱山に関心を持っていました。家庭やオフィスで破棄に困って眠っているパソコンや携帯電話。そこに含まれる希少金属の回収方法に知恵を絞り、インターネットや宅配便で回収するビジネスモデルを確立しました。資源のないと思われていた日本で新たな都市鉱山の鉱脈を見つけ出し、活用していく。これが今回の五輪メダルへとつながってきたのです。
 当時49歳だった黒田社長は、「独自のリサイクルの仕組みをつくり、世界を変える会社になる」と決意していたことを思い出します。
 「都市鉱山メダル」が連日、表彰台で輝いています。新たな鉱脈の発見と、MOTTAINAI(もったいない)という精神が一緒になって、日本の復興五輪の遺産になっていくと確信しています。
(2021年8月2日)

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