見出し画像

論文まとめ84回目 NATURE Communications(科学) 2023/9/1

「腸内細菌と食べる脂肪がコンビを組んで肝臓に影響を与える可能性!」

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなNATURE Communicationsです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。


一口コメント

Removal of false positives in metagenomics-based taxonomy profiling via targeting Type IIB restriction sites
IIB型制限部位を標的としたメタゲノミクスに基づく分類プロファイリングにおける偽陽性の除去
「イメージしてみてください、微生物の世界が巨大なパーティーです。でも、今までの入場リスト(ツール)はダメダメ。誰でも入ってくるし(誤陽性)、本当に来た人が誰なのかもよくわからない。MAP2Bは超スマートなセキュリティガードです。ちゃんと招待された人だけが入れる。それで、パーティーはもっと楽しく、安全になるんです。このセキュリティガード(MAP2B)は、病気の原因を見つけたり、環境を守る仕事もできますよ。」

Decorated bacteria-cellulose ultrasonic metasurface
装飾されたバクテリア・セルロース超音波メタサーフェス
「これは「水に弱いセルロースを水のスーパーヒーローに変身させる魔法のプロジェクト」です。しかも、それが超音波で未来の医療やテクノロジーを変える可能性を秘めています。」

Addressing mechanism bias in model-based impact forecasts of new tuberculosis vaccines
新規結核ワクチンの影響予測モデルにおけるメカニズム・バイアスへの対処
「大結核(TB)ワクチンの臨床試験は超難解!なんてったって、効果が出るまで遅いし、ちゃんと効いてるのかも分からない。でも、この研究で使われたベイジアンモデルっていう数学のテクニックで、よくわからないデータからも「このワクチンはこう効いてるよ!」っていう新しい洞察が手に入るんです。結果、どんなワクチンが本当に効果がある」

Metallo-sideromycin as a dual functional complex for combating antimicrobial resistance
抗菌剤耐性菌対策のためのメタロシデロマイシン二重機能性複合体
「抗生物質と金属がタッグを組んで、頑固な耐性菌に「これでもくらえ!」って感じで効果を上げちゃいました。想像してみてください、抗生物質がプロレスラー、金属がそのマネージャー。プロレスラー単体では強いけど、マネージャーがテクニックと工夫を加えることで、もっと強く、もっと賢く戦えるんです!特に金属(CBS)をちょっと多めに(16μM)、抗生物質(CEF)を普通に(0.5μM)使うと、最強タッグが完成します!この新しいコンボで、病院の大敵、耐性菌もひざまずくかもしれませんよ。」

Transcranial focused ultrasound-mediated neurochemical and functional connectivity changes in deep cortical regions in humans
経頭蓋集束超音波を介したヒトの大脳皮質深部領域における神経化学的および機能的結合性の変化
「この研究って、ちょうど脳に「リモコン」を持ってきて、特定の「チャンネル」(脳の領域)に合わせて「音量」(GABAレベルや脳のつながり)を調整するようなものですよ。特に興味深いのは、この「リモコン」が「チャンネル」によっては効くけど、別の「チャンネル」ではあまり効かないってこと。これがわかれば、将来的には脳の「バグ」(例えばうつ症状や神経障害)を治療する新しい方法が開発できるかもしれませんね!」

The interplay between dietary fatty acids and gut microbiota influences host metabolism and hepatic steatosis
食事性脂肪酸と腸内細菌叢の相互作用は宿主の代謝と肝脂肪症に影響する
「腸の中の小さな仲間たちが、お腹の中でどんな脂肪を食べているかをちゃんと見ているんだよ。そして、それによって肝臓がどれだけ太るかを決めているんだ!でも安心して、正しい脂肪を食べれば、腸の小さな仲間たちは肝臓を守ってくれるよ。まるで、内臓版スーパーヒーローみたいにね!」


要約

IIB型制限部位を標的としたメタゲノミクスに基づく分類プロファイリングにおける偽陽性の除去

MAP2Bは、特定種のType IIB制限エンドヌクレアーゼの消化部位を参照マーカーとして使い、種の識別精度を飛躍的に向上させる新しいメタゲノムプロファイラーです。

①事前情報 :
メタゲノム研究は微生物学に革命をもたらしていますが、既存のツールは全ゲノムシーケンシング(WMS)において誤陽性の問題がありました。

②行ったこと :
独自のType IIB制限酵素の部位を参照マーカーとする新しいメタゲノムプロファイラー、MAP2Bを開発。

③検証方法 :
シミュレーションデータ(CAMI2)と実世界データ(ATCCモックコミュニティ)で性能を評価。また、IBD患者群のWMSデータに適用して疾患状態の識別とメタボローム予測の精度を確認。

④分かったこと :
MAP2Bは誤陽性を大幅に削減し、疾患状態の識別やメタボローム予測に優れた性能を示しました。

⑤この研究の面白く独創的なところ :
従来のユニバーサルマーカーを避け、種特有のType IIB制限酵素の部位を使うことで誤陽性を大幅に削減。

応用先
MAP2Bは、臨床診断、環境微生物学、複雑な微生物群集の研究に使えます。特に、抗生物質耐性や疾患予測などの分野での精度が高いため有用です。



装飾されたバクテリア・セルロース超音波メタサーフェス

セルロースは水に弱いが、シリカナノ粒子で装飾することで水中でも安定。これを利用して、高度に精密な音響メタマテリアル(メタスキン)を作成。

①事前情報 :
セルロースは水に弱く、これまでの水中での利用は制限されていた。しかし、その生分解性と柔軟性は魅力的。

②行ったこと :
バクテリアセルロースにシリカ(SiO2)ナノ粒子を付着させて水に対する安定性を向上させ、さらにレーザーカットで高精度な模様を切り出した。

③検証方法 :
実際にこのメタスキンを水中でテストし、200日以上もその性質が維持されること、また超音波で高度な3Dイメージングや音響ホログラムが可能であることを確認。

④分かったこと :
この新しいメタスキンは水中で高い安定性と優れた音響特性を有する。

⑤独創的なところ :
シリカナノ粒子を使ってセルロースの「水弱点」を克服。しかも、模様切り(ペーパーカット)で約10μmの精度でデザインが可能。

応用
生分解性の高い超音波イメージング装置や水中ロボット、さらには高度な医療診断装置に使用可能。


新規結核ワクチンの影響予測モデルにおけるメカニズム・バイアスへの対処

世界中で結核(TB)を減らす努力にもかかわらず、減少率は遅く、新しい介入が必要です。この研究は、ベイジアンモデルを適用してTBワクチンの複雑な臨床試験結果を理解し、ワクチンの異なる可能性のある作用機序を理解することを目的としています。

事前情報
結核(TB)は今でも重要な世界的な健康問題であり、COVID-19パンデミックによって最近再燃しています。現在のワクチン(BCGなど)は非常に効果的ではなく、新しいワクチンが臨床試験中です。しかし、これらの試験を解釈するのは、いくつかの要因(遅い感染動態、明確なエンドポイントの欠如など)によって厄介です。

行ったこと
研究者は、ケニア、ザンビア、南アフリカのIGRA+の個体を対象としたM72/AS01Eワクチンの試験データにベイジアンモデルを適用しました。

検証方法
ベイジアンモデルは、ワクチンの複数の仮説的な作用機序を考慮し、各々が臨床試験データを説明する可能性がどれだけあるかを計算します。その後、これらの可能性を用いて各モデルの「事後確率」を推定します。

分かったこと
M72/AS01Eワクチンについて最もありそうなモデルは、一次TB、潜在TBの再活性化、再感染によるTBの3つの一般的な進行ルートのうち、少なくとも2つに対する保護を含む必要がありました。

この研究の面白く独創的なところ
研究はベイジアンモデルと臨床試験を組み合わせて、ワクチンの有効性に新しい視点を提供します。これは、複雑な臨床結果を行動可能な洞察に「翻訳する」新しい方法です。

応用
この研究の方法論は、臨床試験が複雑または高価な他のワクチンや治療法の評価に使用でき、資源をより効率的に割り当て、ワクチンの開発を促進する可能性があります。


抗菌剤耐性菌対策のためのメタロシデロマイシン二重機能性複合体

耐性菌が問題となっている中、cefiderocol(CEF)という抗生物質と金属化合物(Bi3+/Ga3+)を組み合わせて、効果を上げる研究が行われました。

①事前情報:
CEFは既に使用されている抗生物質で、特に耐性がつきやすいPseudomonas aeruginosaなどの菌に有効ですが、耐性も出始めています。

②行ったこと:
CEFと金属化合物(Bi3+/Ga3+、特にcolloidal bismuth citrate(CBS))を組み合わせて、その効果と耐性の発生を調査しました。

③検証方法:
マウスの急性肺炎モデルと、実験室内でのバクテリア株を用いて、CEFとCBSの単独及び組み合わせの効果を調査。

④分かったこと:
CEFとCBSを組み合わせると、菌の生存率が大幅に低下し、耐性も出にくくなる。特に、CBSの濃度が16μM、CEFの濃度が0.5μMのとき効果が顕著。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
既存の抗生物質(CEF)の寿命を延ばす新しい方法を見つけ、それが"金属"であるという点。

応用
耐性菌に対する新たな治療法として、特に重症感染症や病院での感染症対策に利用可能。


経頭蓋集束超音波を介したヒトの大脳皮質深部領域における神経化学的および機能的結合性の変化

この研究は、低強度の集中型頭蓋超音波刺激(TUS)が神経伝達物質のレベルと脳のつながりにどのように影響するかを、深い脳領域に焦点を当てて調査しています。

①事前情報:
この研究は、低強度の集中型頭蓋超音波刺激(TUS)が神経伝達物質のレベルと脳のつながりにどのように影響するかを、深い脳領域に焦点を当てて調査しています。

②行ったこと:
24人の健康な被験者に対して特定の深層皮質領域にゼータバーストTUSを適用し、その後、MRSとfMRIを用いてGABAレベルと機能的なつながりの変化を測定しました。

③検証方法:
背側前帯状皮質(dACC)と後帯状皮質(PCC)が別々に刺激されました。効果は、シャム刺激(対照群)と比較されました。刺激後のさまざまな時間帯で脳のスキャンとGABAレベルが測定されました。

④分かったこと:
TUSは、PCCにおいてのみGABAレベルを選択的に減少させました。また、刺激後の両領域で機能的なつながりが増加し、少なくとも50分間は持続しました。

⑤この研究の面白さと独創的なところ:
この研究は、TUSによる生体内でのGABAレベルの変化を示し、その効果が領域特有または状態依存的である可能性を指摘しています。

応用
この研究は、対象となる脳領域での異常な活動を持つ神経学的および精神医学的障害の治療において、TUSの可能な治療応用に対する貴重な洞察を提供しています。


食事性脂肪酸と腸内細菌叢の相互作用は宿主の代謝と肝脂肪症に影響する

この研究は、食事中の脂肪が腸内細菌にどのように影響するか、そしてこの関係が肝臓に脂肪が蓄積する「ステアトーシス」という状態にどう影響するかを調査しています。

事前情報
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、腸内細菌と新陳代謝に関連する一般的な肝臓の問題です。ただし、食事中の脂肪がどのように影響するかは以前は不明でした。

行ったこと
研究者は、特にステアリン酸のような飽和脂肪酸(SFA)と多価不飽和脂肪酸が人間とマウスの腸内細菌、肝臓の脂肪蓄積に与える影響を調査しました。

検証方法
人間の食事データとマウス実験の両方を使用して影響を理解しました。細菌の変化は、微生物移動と胆汁酸プロファイルのシフトを用いて監視されました。

分かったこと
低いSFA摂取量が人間で微生物の多様性を高めることが分かりました。マウスでは、吸収されにくい長鎖SFAが新陳代謝と肝臓の健康を改善する効果がありました。

この研究の面白く独創的なところ
低いSFA摂取量が人間で微生物の多様性を高めることが分かりました。マウスでは、吸収されにくい長鎖SFAが新陳代謝と肝臓の健康を改善する効果がありました。

応用
肝臓の疾患を持つ患者の食事指導に影響を与える可能性があり、脂肪肝疾患に対する腸内細菌に焦点を当てた治療法の道を開く可能性があります。


最後に
本まとめは、フリーで公開されている範囲の情報のみで作成しております。また、理解が不十分な為、内容に不備がある場合もあります。その際は、リンクより本文をご確認することをお勧めいたします。