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論文まとめ173回目 SCIENCE 2023/12/1~

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなSCIENCEです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。


一口コメント

Visualizing the DNA repair process by a photolyase at atomic resolution
光リアーゼによるDNA修復プロセスの原子レベルでの可視化
「DNAに損傷を与える紫外線による効果を修復する酵素のプロセスを、細かい時間スケールで原子レベルで捉えた画期的な研究です。」

Two teosintes made modern maize
2種のテオシンテが現代のトウモロコシを作り出した
「トウモロコシの起源に新たな光を当てる研究で、約4000年前にメキシコ高地の野生種テオシンテとの交配がトウモロコシの多様性と特性を形成したことを明らかにしました。」

Meiotic DNA breaks drive multifaceted mutagenesis in the human germ line
減数分裂中のDNA断裂が人間の生殖細胞における多面的な突然変異を引き起こす
「精子と卵子の形成において、DNAの断裂と修復が行われる過程で、新たな突然変異が多く発生しており、これが人間の遺伝的多様性に大きく影響していることがわかりました。」

Time-resolved crystallography captures light-driven DNA repair
時間解像度のある結晶構造解析により、光によるDNA修復プロセスが捉えられる
「紫外線によって傷ついたDNAを修復する酵素の働きを、光を使ってピコ秒からマイクロ秒の範囲で詳細に観察しました。この進歩により、DNA修復の精密なプロセスが初めて明らかになりました。」

Colossal electrocaloric effect in an interface-augmented ferroelectric polymer
界面強化フェロエレクトリックポリマーにおける巨大な電気カロリック効果
「電気カロリック効果を利用して熱を移動させる新しいタイプの材料が発見されました。これは、電場に応答して熱をポンプすることができる、多孔質なフェロエレクトリックポリマーです。」

Nesting chinstrap penguins accrue large quantities of sleep through seconds-long microsleeps
繁殖中のヒゲペンギンは数秒間のマイクロスリープを通じて大量の睡眠を蓄積している
「ヒゲペンギンは、目を閉じる数秒間のマイクロスリープを何千回も繰り返すことで、必要な睡眠を取っています。これにより、短時間の睡眠でも十分な休息を得ていることがわかります。」


要約

DNA修復プロセスを原子レベルで可視化

https://www.science.org/doi/10.1126/science.add7795

この研究は、光リアーゼという酵素が紫外線によって引き起こされるDNAの損傷を修復する過程を、ピコ秒からマイクロ秒の時間スケールで可視化しました。

事前情報
以前の研究では、DNAの修復メカニズムについての理論的な枠組みが提案されていました。

行ったこと
研究者たちは、時間分解されたシリアルフェムト秒結晶学(TR-SFX)を用いて、この触媒プロセスを視覚化しました。

検証方法
TR-SFX技術を利用して、DNA修復の化学的ステップと後続のイベントを捉えるための18のスナップショットを取得しました。

分かったこと
光リアーゼがDNA修復を行う際の原子レベルでのメカニズムを明らかにし、その化学的および酵素的触媒作用を広範な時間スケールで捉えました。

この研究の面白く独創的なところ
この研究は、光リアーゼがどのようにしてDNAを修復するかをリアルタイムで詳細に描き出し、その過程で生じる中間体を特定しました。

この研究のアプリケーション
DNA修復の詳細な理解は、生物学、構造生物学、酵素学の分野で新たな進歩をもたらす可能性があります。


現代のトウモロコシは2種のテオシンテから生まれた

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adg8940

この研究は、トウモロコシとその野生の親戚である2種のテオシンテ(Zea mays ssp. parviglumis と Zea mays ssp. mexicana)の間の遺伝的なデータを分析し、トウモロコシがこれら2種の野生種との交配によって進化したことを明らかにしました。

事前情報
以前の研究では、トウモロコシの起源に関しては複数のモデルが提案されていましたが、これらはすべてのデータを完全には説明していませんでした。

行ったこと
研究者たちは1000以上の野生および栽培されたトウモロコシのゲノムを分析しました。

検証方法
遺伝子解析と人口遺伝学的手法を用いて、トウモロコシの起源と進化に関する新しいモデルを提案しました。

分かったこと
現代のトウモロコシは、初期の栽培から約4000年後、メキシコ高地でテオシンテとの交配を経て進化したことが明らかになりました。

この研究の面白く独創的なところ
テオシンテの遺伝的要素がトウモロコシの多様性と農業上の重要な特性に大きく寄与していることが判明しました。

この研究のアプリケーション
トウモロコシの起源と進化の理解を深め、今後のトウモロコシの品種改良や遺伝的研究に影響を与える可能性があります。


人間の生殖細胞における染色体の組み換え過程が、予想以上に多くの突然変異を引き起こしている

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adh2531

この研究は、減数分裂中に発生するDNAの断裂が、修復過程で突然変異を引き起こすことを明らかにしました。特に、1つの卵子に対して4つの精子が突然変異を持つ割合が高く、これが人間の遺伝的多様性の源泉となっています。

事前情報
従来、減数分裂中のDNAの断裂と修復が新たな遺伝的組み換えをもたらすことは知られていましたが、その突然変異への影響の程度は不明でした。

行ったこと
研究者たちは、人間の多様な遺伝データを収集し、減数分裂中のDNAの断裂と修復に関連する突然変異の高解像度マッピングを行いました。

検証方法
遺伝子解析を用いて、DNA断裂と修復による突然変異の特徴と分布を詳細に調査しました。

分かったこと
減数分裂中のDNAの断裂と修復は、従来考えられていたよりもはるかに突然変異を引き起こす可能性が高いことが判明しました。

この研究の面白く独創的なところ
通常は非減数分裂細胞やがん細胞で関連しているとされる修復メカニズムが、実は減数分裂中にも活性化していることが示されました。

この研究のアプリケーション
この発見は、人間の遺伝的多様性と突然変異の起源を理解する上で重要な意味を持ち、将来の遺伝学や医学研究に影響を与える可能性があります。


光を利用したDNA修復過程が時間経過と共に可視化され、その微細な構造変化が明らかに

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adj4270

研究者たちは、X線自由電子レーザーを用いた時間解像度のある結晶構造解析で、光駆動型DNA修復酵素の働きを捉え、その一連の反応中間体を可視化しました。

事前情報
紫外線によってDNAに生じる損傷は、隣接する塩基が共有結合で結合されることにより生じますが、その修復プロセスは十分に理解されていませんでした。

行ったこと
この研究では、光駆動型のDNA修復酵素「フォトリアーゼ」の触媒サイクルに関わる反応中間体を捉えるために、時間解像度のある結晶構造解析を行いました。

検証方法
酵素の活性補因子であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の励起状態を捉え、それが損傷したDNAに電子を移動させるプロセスを観察しました。

分かったこと
修復反応は、2つの共有結合が1つずつ切断される過程で進行し、基質から生成物への変換によって活性部位が混雑し、酵素との水素結合が崩れ、生成物が段階的に放出されます。

この研究の面白く独創的なところ
DNA修復過程の微細な構造変化を時間的に捉えることで、修復酵素の機能とその調節メカニズムが新たに明らかになりました。

この研究のアプリケーション
DNA修復の過程を詳細に理解することは、紫外線によるDNA損傷の修復メカニズムを解明し、将来的には放射線や紫外線に関連する疾患の治療に寄与する可能性があります。


革新的な多孔質フェロエレクトリックポリマーにより、驚異的な電気カロリック効果を実現

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adi7812

研究者たちは、低沸点の有機結晶を使って多孔質を導入したフェロエレクトリックポリマーで、非常に大きな電気カロリック効果を発見しました。

事前情報
電気カロリック材料は、変化する電場に応答して熱をポンプする能力があり、固体冷却アプリケーションに有用です。

行ったこと
ジメチルヘキシンジオール(DMHD)という有機結晶を使い、ポリビニリデンフッ化物ベースのテルポリマーの異種界面で極性配向を組み立てました。

検証方法
DMHDを蒸発させ、エピタキシーのようなプロセスによって、極性配向の極めて細かく分布した多様な界面を誘導しました。

分かったこと
低電場での界面強化テルポリマーは、100 J/(kg・K)の高いエントロピー変化を示しました。

この研究の面白く独創的なところ
この研究では、多孔質フェロエレクトリックポリマーを使って、従来のフェロエレクトリック材料では限界に達していた極性ドメインの自由度とエネルギー障壁を最適化しました。

この研究のアプリケーション
この界面極性戦略は、誘電体コンデンサーやスーパーキャパシター、その他関連するアプリケーションに一般的に適用可能です。


繁殖中のヒゲペンギンは、短いマイクロスリープを通じて十分な睡眠を確保している

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adh0771

研究者は、南極で巣作りをしているヒゲペンギンの睡眠を電気脳波計で監視し、短いマイクロスリープを何千回も繰り返していることを発見しました。

事前情報
マイクロスリープは通常、運転中などに危険な状態とされますが、連続した警戒が必要な動物にとっては、睡眠の恩恵をもたらすことがあるかもしれません。

行ったこと
繁殖中のヒゲペンギンの睡眠を遠隔地からの電気脳波計測によりテストしました。

検証方法
ヒゲペンギンの睡眠行動を電気脳波計で監視し、睡眠の質と量を評価しました。

分かったこと
ヒゲペンギンは、一日に10,000回以上、平均して4秒間のマイクロスリープを行い、合計で11時間以上の睡眠を蓄積しています。

この研究の面白く独創的なところ
繁殖中のヒゲペンギンが、短いマイクロスリープを通じて必要な睡眠を確保し、成功した繁殖を行っていることが明らかになりました。

この研究のアプリケーション
この研究は、野生動物の睡眠行動とその生態系における意義を理解する上で重要な知見を提供します。

最後に
本まとめは、フリーで公開されている範囲の情報のみで作成しております。また、理解が不十分な為、内容に不備がある場合もあります。その際は、リンクより本文をご確認することをお勧めいたします。