『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト』

※そんなにネタバレしてないと思います。

13日にこんな本が出ると知り、脊髄反射でこれは読まなければならないと思った。アマゾンでポチっておけば14日発売日の夜には家に届いていて、金曜の夜ビールを飲みながら読めると思っていた。

「この本は2月26日~27日頃発送予定です」

なんでやねん。。と思い基本的にちゃんとジャンプが月曜日に発売する経済圏に住んでいるのだからどっか本屋で買えばいいやと思いキャンセル。

そして14日発売日。出先でちょっと大きめの本屋に立ち寄る。

「15日発売予定になってますね」

なんでやねん。。二軒目。

「ないですね」

なんでやねん。。これは取次が卸先を大幅に集中させたやつかとちょっと不安に。さすがに新宿の本屋ならあるだろうと気持ちを切り替え、退社。時間を考慮して南口のブックファーストへ。ない。。

思い返せばもうこの時点でみずほの罠にはまっていた気がする。Twitterを見てみると東京駅周辺にあったようで、さすが金融本、丸の内、大手町は強い。最終最後地元の本屋がまだ開いている時間だったので寄ってみる。

「入荷予定はないですね」もうその日は飯も食わずビールだけ飲んで不貞寝。

次の日地元もう一軒の本屋へ。

ない。。ない。。と思っていたら一応新刊コーナーの棚に2冊だけあった。
あった!あった!もう絶対平積みだと思ってた俺の気持ち返せ!

結局昨日、移動しながら買い物しながら合間の休憩を長めに取り読み切った。なんかもうずっとソワソワしたというか、腹の中がモゾモゾした。別に金融業界出身でもないし、IT業界従事者でもない。でも横の連携が取れない、意志決定者に意思決定能力がない、ゴール設定がなされない、共通認識がない、そしてその状態でプロジェクトが進めばどうなるか、分かり切った結果が淡々と記述されており、まとめると「人が育った」だ?まじでたいがいにしろよと。

個人的には「舟を編む」的な章があったら生々してぜひぜひ読みたいと思ったのだけど、そういった章はなく残念。

今の産業は成熟社会に突入し、既存産業の伸び代って頭打ちなんだと思う。そういう時代の中で、新たな価値を創造して、マーケットを作り出す。そういうビジネスが多くなってきた。旧来の仕事であっても、今まで通りじゃいけないと、何かを変えようと躍起になっている。生産性だの多様性だのなんだのと。

そういった「やったことがないことを仕事にする」ことが多くなり、それってプロジェクトだよねってどっかの本で読んだ。別にコンペに勝つとかそういう華々しい仕事だけがプロジェクトじゃない。やったことない、決まったワークフローがない、結果が見えない仕事は全部プロジェクトという発想。

そう考えると、三行のシステムを統合する、しかも新しくゼロからシステムを作り上げることを掲げ、達成させたみずほ銀行の、この本にはたくさんのヒントがある。主に失敗を糧に的な他山の石のようなものだけど。2000年前後なんで「IT」って言っとけばそれっぽい感じがしてた時代に、頭の固そうな当時のトップ経営陣が「ITを駆使し~」とか言っちゃってる時点でアウトだよね。もうそっから我が振りなおせ。

上流下流どの工程で関わったかによって感じ方はいろいろだろうけど、一応は完了したプロジェクトで、少なからず関われれてよかったと思える人が多いのであればうれしいなと思う。またやりたいかと言われたら知らないけど。立上げ時に関わった人、間で少しの人、最後だけの人、最初から最後までの人、全部関われば19年。現役40年としてほぼ半分。人生そのものみたいに思う人もいるかもしれないと胸があつい。

確か延べ換算すると日本のIT従事者の1割が動員された計算になるらしいです。かかった費用はスカイツリー7本分。

どうかとは思うけど、東京タワーを指して「父ちゃんあれ作ったんだぜ」と子どもに自慢した父がいたとしたら、みずほのATMを指して「父ちゃんあれまとめたんだぜ」って同じように自慢する父がいて、それがどんなことなのか理解できるのが基礎教養くらいになる世の中になったらけっこううれしい。


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