黒字倒産?【倒産しないベンチャー企業を造る!】フリーキャッシュフローとは?
「黒字倒産」は聞いたことがありますでしょうか。
黒字なのに倒産!?
驚いた方もいらっしゃるかもしれません。
実は景気が上向いた時期はこの黒字倒産が増えてくるのも事実なのです。
急成長するベンチャー企業も実際に黒字倒産することもあります。
今回は倒産しないためにも重要な、キャッシュフローについてお伝えします。
倒産回避では利益よりも大切!?キャッシュフローとは?
ご存知の通り、キャッシュフローとは、会社のキャッシュ(現金および現金同等物)の増減を1年間(一会計期間)で表したものです。
つまり、会社にどのくらいのお金があるかを把握するためのものです。
このキャッシュ(現金および現金同等物)がなければ、いわゆる倒産となります。
例え、どんなに売上を計上しても、決算書上、利益を計上しても、このキャッシュがなければ倒産となります。
通常企業は、本社賃貸料や人件費など、毎月大きな経費がかかります。
しかし、BtoB事業の場合、売上=入金ではありません。
売上が計上されたのち、一定の回収期間があります。
その間、手元資金が少ない企業は、支払が先行し、この倒産が発生しやすくなります。
つまり、例え決算上黒字であっても、現金(キャッシュ)が手元にないために、倒産してしまう、これが黒字倒産といわれるものです。
どんなに売上が上がっても、利益が計上されても、支払い額が先行してしまい、現金不足で黒字倒産という、そのようなベンチャー会社も少なくありません。
事例!長い回収期間の建設業界!
例えば、回収期間が長い業界ですと、建設業界などがあげられます。
公共工事などが多い建設業界などは、売上が計上されてから実際に入金されるまで120日~150日ほどかかります。
大型工事などでは発注されてから完成するまで数年間入金がない、ということもあります。
そのため、中小下請建設会社は資金的にひっ迫することがあります。
ただ、この建設業界の場合、元受けの大手建設会社が支払いを先行しながら、下請会社の資金手当てをするケースが多いのも特徴です。
つまり、大手建設会社は下請け企業の「金融機能」として大きな存在感を示しているのです。
そうです、ゼネコンは金融会社!とも言えます。
実際、現場で工事をしているのは、「下請けの下請け」という構造があるのもこの建設業界の特徴と言えます。
また、最近は少なくなりましたが、以前は決済手段に「手形」が多く使用されていたのも、この建設業界でした。
手形の場合、半年以上現金化できないこともあり、「手形割引」と言われる、銀行による現金化の手法も多く使われていました。
割引手数料が高いのですが、現金が欲しい中小企業は銀行で手形割引するのが通常でした。
今ではほとんど聞かれなくなりました。
手形は「信用」で成り立っている商習慣であり、海外にはない日本独自の決済手段とも言われてました。
このように建設業界は一般的に回収期間が長いため、資金体力が小さい会社が倒産する、ということが頻繁に発生する業界も言えます。
3つのキャッシュフロー
さて、話を戻します。
お伝えしました通り、キャッシュフローは会社のキャッシュ(現金および現金同等物)の増減を1年間(一会計期間)で表したものです。
このキャッシュフローは3つに分けられます。
【3つのキャッシュフロー】
■営業キャッシュフロー
■投資キャッシュフロー
■財務キャッシュフロー
一つ一つ再確認してみましょう。
■営業キャッシュフローとは?
営業キャッシュフローは商品やサービスなどを提供し、会社が日常の営業活動から得たキャッシュ量を表しています。
つまり、会社が1年間でどのくらいキャッシュ(現金及ぶ現金同等物)を生み出せるか、という指標で、3つのキャッシュフローの中で最も重要なキャッシュフローです。
通常、営業キャッシュフローがプラスであることが基本ですが、マイナスとなる企業も時折見受けられます。
この営業キャッシュフローがマイナスが続く場合、本業自体の構造を見直す必要もあります。
この営業キャッシュフローを改善する施策は大きく4つあります。
【営業キャッシュフロー改善策】
①利益増加
②回収条件の改善
③支払条件の改善
④在庫を減らす
①利益増加
まずは「利益」。
「利益」は営業キャッシュフローを改善する一番有効な施策です。
特に経常利益を増加させることで、営業キャッシュフローをプラスにできます。
でも、この利益は企業運営の屋台骨、一番難しい部分でもあります。
そう簡単には増やせませんよね。
利益を増加するためには、以下の施策などが考えられます。
【利益を増加するための施策】
・「売上増加」
・「粗利率の高い商品やサービスの強化」
・「経費削減」
などです。
②回収条件の改善
また、取引条件の「回収条件」も営業キャッシュフローを改善させます。
前項にもありましたが、BtoB事業の場合、入金まで時間がかかってしまいます。
このBtoB事業の場合、取引条件による営業キャッシュフロー改善策は以下です。
【取引条件による営業キャッシュフロー改善策】
・顧客に回収期間の短期化をお願いする
・回収期間の短い取引先との取引を増やす
・回収期間の短い商品やサービスに注力する
などです。
③支払条件の改善
さらに、自社の支払期間を短くする方法でキャッシュフローを改善する方法もあります。
つまり、支払期間の長期化です。
支払いが先行してキャッシュが少なくなってしまうため、仕入れ先や外注先などに支払期間の長期化をお願いするという方法です。
ただ、この支払期間の長期化に関しては、支払いが苦しくなっている?という信用不安にもつながるので、安易には実施できません。
そのため、支払い期間が長くても対応してくれる取引先の数や量を増やすという方法が一般的です。
④在庫を減らす
「在庫」を減らすことも営業キャッシュフローを改善できます。
業態にもよりますが、「在庫」に多くの資金が「固定化」されているケースがあります。
在庫を極力減らし、資金を流動化させることで、キャッシュフローも改善できます。
在庫を減らすためには、以下の方法が考えられます。
【在庫を減らす方法】
・顧客ターゲットを絞り、不要な在庫を保有しない
・社内効率を上げ、在庫期間を短縮する
・在庫を保有しないビジネスモデルへの注力
などです
以上、このような4つの施策を複数組み合わすことで営業キャッシュフロー全体を改善させることが可能となります。
いずれにしても、本業からの営業キャッシュフロープラスは基本中の基本であり、事業運営の肝となります。
一時的にマイナスとなったとしても継続的にプラスとなる経営を行うことが不可欠ではないでしょうか。
■投資キャッシュフローとは?
投資キャッシュフローは、投資活動によって得たキャッシュの増減を表します。
一般的には有形固定資産、無形固定資産の取得及び売却がここに入ります。
通常はこの投資キャッシュフローはマイナスとなることが多くなります。
例えば、車やパソコンを購入した場合、投資キャッシュフローはマイナスとなります。
その他、建物や土地、株式、工場、生産機械などを購入した場合も、その出費分がマイナスとなります。
プラスとなる場合は建物や土地、株式などを売却した場合などのレアケースとなります。
最近は企業投資売却などで投資キャッシュフローが突然大きくプラスとなる企業も見受けられますが、増減幅が大きいのも特徴です。
この投資キャッシュフローを改善する方法として考えられるのは、機械などをリースや中古で購入することです。
分かりやすく説明しますと、100万円の車両を購入する場合、通常投資キャッシュフローは100万円のマイナスとなります。
これをリースにすることで経費となり0円となりますし、中古にすることで50万円のマイナスにとどめることも可能となります。
以上、投資キャッシュフローは、大きな資産を購入した年と何も購入しない年ではプラスとマイナスの幅が大きく変動します。
そのため、投資キャッシュフローをみる場合、単年度で単純に評価するのではなく、3期分または5期分など一定期間のキャッシュフローを総合的に把握することが重要となります。
■財務キャッシュフローとは?
財務キャッシュフローは、どの程度の資金が調達され、返済されたかを表します。
つまり、借入金の増減が重要なポイントとなります。
通常、企業運営は銀行などから借入金があると思います。
借入を実施すると資金が増えるので、財務キャッシュフローは増加します。
一方、借入金を返済することで財務キャッシュフローは減少します。
一般的に借入金が増加することはマイナスイメージが多いのですが、財務キャッシュフローだけをみると、借入金増加はキャッシュが増加するのでプラスとなるのです。
多くの場合、投資キャッシュフローで不動産や株式、工場や車両などの資産購入でマイナスとなった分を、借入金による財務キャッシュフロー増加で対応するケースが多くなります。
つまり、借金をして資産を購入するというケースです。
昨今は単純に銀行からの借入金による資金手当てよりも、社債の発行や増資などによる資金手当てなど資金調達の多様化も見受けられます。
この場合も財務キャッシュフローはプラスとなります。
重要!フリーキャッシュフローとは?
キャッシュフローの概念の中で最も重要だと言われるのが、フリーキャッシュフローだと言われています。
フリーキャッシュフローとは会社が自由に使えるキャッシュのことで、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足して表します。
前述のごとく、通常投資キャッシュフローはマイナスとなる場合が多いのですが、会社の本業である営業キャッシュフローでその投資キャッシュを賄い、その残額が重要となります。
これがフリーキャッシュフローです。
つまりフリーキャッシュフローが多ければ多いほど、経営状態は良好だと言えます。
フリーキャッシュフローが増加した場合、借入金返済も可能ですし、預金することも可能ですし、新たな事業分野への進出資金として活用することも可能となります。
手元に自由に使える現金があることで、安定性の確保、成長性への投資など企業運営の選択肢が増えるという意味では重要な指標と言えるでしょう。
最後に
倒産しないためにも、自社のキャッシュフローを理解、把握することは重要なポイントとなります。
特にアーリーベンチャー企業は留意が必要となります。
黒字倒産というリスク以外にも、新規取引先が「パクリ屋」「計画倒産」だった、というリスクもあります。
さらに主力得意先が突然倒産することで自社が「連鎖倒産」するというリスクもあります。
常に、自社のキャッシュフローを把握するのと同時に、取引先の状況を把握しておくことも、重要ではないでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?